ウマ娘で学ぶ競馬史 #13 変革の旗手 (1995〜1996)

※本記事は2021年8月27日〜9月4日にnoteに投稿した記事の一部を再構成したものです

みなさん、ウマ娘やってます?
突然ですが、ミスターシービー(ウマ娘)かわいすぎないですか?

すばらCB
抜群のルックスから放たれる魅惑の投げキッス。“完璧”という言葉は彼女の為に生まれたのだろう。

(この記事の第一版(版?)を投稿するタイミングで、今まで喋ってすらなかったシービー娘さんが唐突に育成シナリオで投げキッスしてきやがったんですよ。そら導入もシービー一色になるて。)

我慢できずに言っちゃいましたけど、これは反則だと思うんですよね。
こういう綺麗とかわいいの境界線にいるお姉さん、すごくタイプです。

ミスターシービー(本家)もめちゃくちゃイケメンだったんで、それをいい感じに落とし込んだだけなんでしょうけど、初めて見た時あやうく恋に落ちそうになりましたよね。
同じこと思った方は今すぐこの記事を拡散していただけると助かりま(以下略)

今回でようやく96年が終わりますが、予定よりやや遅れております。
これ書き始めた当初の僕は、#26でコントレイルを紹介できると思ってやがったんですよね。エピファネイアも怪しいくらいですよ#26て。(追記:#26はディープインパクト回になる予定です。なんたるザル計算)

追記:アニメ3期も終わってしもた!待ってろジャンポケ!

てことで、今回も爆速ダブルジェットで参ります。

今回はクラシック’96世代の話がメイン。
相も変わらずサンデーサイレンス旋風です。

時代の変わり目、勝利は誰に微笑むのか。

この時代のウマ娘作品

・漫画『ウマ娘 プリティーダービー スターブロッサム』

前回までのあらすじ

1995
  • 1月
    阪神淡路大震災

    大地震の影響により、阪神競馬開催の大半は京都で代替開催となった。

  • 5月
    ナリタブライアン故障

    京都開催の阪神大賞典を圧勝した後、股関節炎を発症。長期離脱となった。

  • サンデー初年度産駒のクラシック

    皐月賞、オークス、ダービーをサンデーサイレンス初年度産駒がかっさらっていき、空前のサンデー旋風が巻き起こる。

  • 6月
    ライスシャワー、天国へ

    天皇賞を制覇したライスシャワーは京都開催の宝塚記念へ出走したが、故障を発生。予後不良となった。

  • 10月
    早すぎる復帰

    天皇賞(秋)で復帰したナリタブライアンだったが、秋は大敗が続いた。復活にはまだ時間がかかる。

  • 10月
    サクラチトセオー念願の秋の盾

    善戦続きだったトニービン産駒サクラチトセオーが天皇賞(秋)で堂々戴冠。2着はサンデー産駒ジェニュインで種牡馬の世代交代が顕著となった。

  • 10月
    現れた新星

    菊花賞を制したのはサンデーサイレンス産駒…ではなく、ブライアンズタイム産駒マヤノトップガン。夏を越え突如として本格化した。

  • 12月
    有馬もマヤノトップガン

    菊を制したマヤノトップガンはその勢いで有馬も逃げ切り。上位人気を蹴散らし、この年の年度代表馬に輝いた。

開かれる門戸

1996年、レース体系の大改革が執り行われた。

中でも大きなトピックがNHKマイルカップ秋華賞、GI2鞍の創設と、高松宮杯のGI昇格。


GI増えたヤッターで終わりじゃなく、増えた理由も確認しておこう。

90年代、オグリキャップに起因する第2次競馬ブームによって、日本競馬への関心が世界的に高まった。
ホーリックスのジャパンカップでは世界レコードが飛び出すし、日本に進出しようとするホースマンも間違いなくいただろう。

特に、これを黙って見ていなかったのが世界。
開国を迫られた江戸幕府が如く、様々な国から“国際化”を迫られた。🇮🇪や🇺🇸、🇳🇿など。どれも優秀な馬産国であり、「国際化してうちの馬活躍させたってえな〜」という、利権絡みの要請でもあった。
そんなこともあり、外国産馬が出られるレースを段階的に増やし、輸入の障壁を無くすことが約束されたのだ。

結果、92年に84頭だけだった輸入競走馬は、95年には355頭に増加。90年代前半に輸入されたリンドシェーバーやシンコウラブリイが活躍しまくったこともあり、空前の外国産馬ブームとなった。
当時の馬主は「とりあえず外国産馬持てば勝てる」くらいの認識があったらしい。

オグリが与えた影響はそれだけではない。
オグリはクラシック登録をしてなかったせいで三冠に出走できなかった。なので、皐月賞やダービー、オークスを歩む表街道と違い、地味なGIIGIIIを勝ち進む「裏街道」を歩んだ。

しかし、これに猛抗議が集まると、JRAはルール改正に乗り出す。
1992年より、2歳時までにクラシック登録をしてなくても、直前で追加登録料を払うことで出走が可能になった。
賞金さえ稼げていればクラシックに出られるのだ。

その結果、1〜3月の3歳重賞がめちゃくちゃレベルが高くなり、4月以降が手薄になった。



で、その過疎った枠を取り合ったのが外国産馬たち。
クラシックに元より出走できない彼らは、内国産馬が三冠トライアルに挑む表の布陣を横目に、毎日杯やニュージーランドトロフィーといった小粒重賞に挑む。
元はオグリが確立させたローテーションだ。

しかし、ここにもちょっとした問題があった。

クラシックを目指す馬たちが

3月4月前半4月後半5月
弥生賞NHK杯
スプリングS皐月賞青葉賞東京優駿
若葉S京都4歳特別
フィリーズレビューフローラS
フラワーC桜花賞スイートピーS優駿牝馬
アネモネS

と連戦で実力を試すのに対し、
外国産馬は

3〜4月5〜6月7月
毎日杯ニュージーランドTラジオたんぱ賞
アーリントンC京都4歳特別中日スポーツ賞4歳S
クリスタルC高松宮杯(VS古馬)

出るレースほとんど無いのに間隔ガラ空きローテを強いられていた。

出るレースが無いので、あるレースにはどの馬も出たがる。
95年のニュージーランドTに至っては12頭中10頭が外国産馬という「マル外ダービー」の立ち位置に。

GIIしか勝ってない外国産馬が秋になって古馬戦線をボコボコに荒らす。
さすがにこのままじゃ良くないけど、クラシックを解放したら内国産馬が蹂躙されてしまうかもしれない。ならばマル外のための日本ダービーを正式に作ろう。

そうして作られたのがGI・NHKマイルカップだった。
(ニュージーランドTはNHKマイルのトライアルレースとなった)


加えてもう一つ。
エリザベス女王杯は古馬戦へ

これにも理由がある。
ノースフライトやニシノフラワーのように、短距離路線では徐々に牝馬が幅を利かせられるようになってきた。でも、中距離路線はさすがに層が厚すぎる。

勝てそうな馬でも勝てないのが天皇賞(秋)だし、当時は日本馬が勝てなかったのがジャパンカップ。有馬記念もなかなか厳しいし、天皇賞(春)は牝馬には距離が長すぎる。あのベガですら古馬GIは勝ててない。

牝馬の地位を上げる為に作られたのが、古馬牝馬GIとしてのエリザベス女王杯だったのだ。

そうなると牝馬三冠目が無くなるので、代わりとしてつくられたのが秋華賞。文字面的に馴染み過ぎてるからピンと来ないが、まだ生まれて30年も経ってないレースなのだ。(東京優駿は90年経った)


距離の話をすると、三冠時代のエリ女が2400mだったのに対し、秋華賞は2000mになった。
牡馬三冠が2000→2400→3000と異なる距離で1位を競っていたのに対し、牝馬は1600→2400→2400で違和感が半端なかったからであろう。

3つの距離で勝ててこそ世代最強を名乗れる方がしっくりくる。似たような内容のGI勝って三冠は確かに違和感。(メジロラモーヌはその他の戦績が異常すぎるから違和感ないけど)

そして新エリ女は2200m。
いかに異なる距離で結果を出せたかが競走馬としての価値なので、牝馬限定でも三冠獲ってなおかつ2200という非根幹距離で勝てた馬は強いと評価させたかったんじゃなかろうか。知らんけど。
実際、ヴィクトリアマイル創設までのエリ女勝ち馬は超一線級しかいない。


そして高松宮杯のGI昇格
2000mとしてではなく、1200mのスプリントGIとして開催されることに。
これはもうひとえにバクシンオーさんの努力。あんな強い馬がいるのに一年に一回しか実力を発揮する場所がないのはおかしいだろ、ということ。
宮杯(後の宮記念)のおかげで、スプリンターが日の目を浴びることになる。

(ちなみにGII高松宮杯無き後は、GIII金鯱賞が距離変更してGIIになり、旧高松宮杯と全く同じ条件のレースとして6月に開催されることになった。ややこしい)

以降、短距離路線と王道の関わりが密接になっていく。NHKマイルに出走した馬たちが、様々な距離のGIで活躍を見せた影響も大きい。
短距離=裏路線という認識は徐々に薄れ、今の競馬の価値観に少しずつ近付いていく。

そんなわけで、弊シリーズでも短距離を分けて紹介していたが、今回から併せて展開していく。


地方競馬では中央との交流が本格化したことも大きなトピックだが、このシリーズでは芝を中心に取り上げるため割愛(一部後述)。

躍動

ということでまずは95年の短距離路線から。

ヤマニンゼファーが引退し、サクラバクシンオー、ノースフライトらもターフを去った。

ここからのマイル路線はウマ娘ではメディア化されることのない、やや下火な時代が少しだけ続く。

1995 安田記念

JCだけが国際交流競走だったわけじゃない。
海外のGI馬はここにも殴り込みに来ていた。

93年から外国馬も出走可能になった安田記念。
早速やってきた馬もいたが、当時はノースフライトら歴史的名マイラーが名を連ねていたので、日本馬優勢の時代だった。

95年は古豪が一気に引退し、層が薄くなったマイル。
本来ならヒシアマゾンが本命視されていたのだが、あいにくアマゾンは🇺🇸遠征…の途中で脚部不安のため何も出来ずに帰国。不憫だ。(復帰は7月の高松宮杯(GII)だったし、らしくなく完敗した)

ということで1番人気はサクラチトセオー
2番人気は94年秋天勝ち馬ネーハイシーザー
3番人気はスランプ中のホクトベガ

どうもパッとしない。

ビコーペガサス、ネーハイシーザー、ホクトベガが争う前にGIII2着3回の実績をもつタイキブリザードが飛び出すが、先頭には届かない。
ハートレイクが粘る中で外から競りかけるサクラチトセオー。
あと少しで届くかというところでゴールイン。

外国馬が安田記念初勝利の快挙。

日本でも有名なゴドルフィンブルー。内ラチ沿いを粘り切った、🇦🇪アラブ首長国連邦所属のヌレイエフ産駒ハートレイクが安田記念を制した。
すごい馬が現れたと思ったら鞍上は武豊だった。外国馬でも勝てちゃう男。まだ20代です。怖いよ…

上位人気が不振の中で頑張ったのはタイキブリザード。ここから怒涛のタイキ旋風が始まる。
そしてホクトベガは芝で勝てなくなったのでダートへ。伝説のエンプレス杯についてはまた取り上げたい。

マイルチャンピオンシップ

一方、未だ日本馬限定GIのマイルCS。
バクシンオーとノースフライトの2強が抜けてもなおメンツが豪華だった。

1番人気はビコーペガサス。ヒシアマゾンやバクシンオーのライバルになれたほどの実力馬。
2番人気はヒシアケボノ。夏に本格化したスワンS勝ち馬。バクシンオーを超えるレコードで走り切った。デカい。
3番人気はドージマムテキ。毎日王冠の2着馬。この馬については後に語る。
4番人気はトロットサンダー。地方から来た怪物。
5番人気スターバレリーナ。GI3勝ロゴタイプの祖母。ローズS勝ち馬。

そしてなぜかレガシーワールドとマーベラスクラウンのJC勝ち騙馬コンビも出走していた。

そんな中で勝利を手にしたのは…

地方から来た遅咲きの怪物だった。

雷帝

トロットサンダー

表彰JRA年度代表馬(1996)
世代1993
血統父 ダイナコスモス(ネアルコ系) 母父 テスコボーイ(ナスルーラ系)
成績22戦15勝[15-2-2-3]
主な勝ち鞍春秋マイルGI連覇 東京新聞杯
主な産駒ウツミジョーダン(川崎・報知オールスターC/川崎記念3着)
トロットヒーロー(園田・摂津盃) トロットテイオー(高崎・二歳優駿)
主な子孫マーサマイディア(門別・フルールC)

地方競馬の中でもややマイナー寄りな浦和競馬場で育ち、連戦連勝を重ねていたサンダー。
しかし、かなりきつめの骨折をしてしまい、競走馬的には生死の境をさまよう。

なんとか走れるようになったので、ポテンシャルの高さを買われ中央に移籍。
が、やっぱり芝とダートでは勝手が違うのか、思うように戦果を挙げられない。条件戦は勝てるものの、重賞になると途端にダメだった。
むしろオグリとかイナリみたいに芝走ってすぐGI勝てる馬の方がおかしいのだが、期待されてたより微妙な感じの成績に。
しかし、これには明確な原因があった。


迎えた6歳秋、毎日王冠を3着と善戦すると、マイルオープン戦のアイルランドTを楽勝で通過。
そしてマイルCSでも鋭く伸びて1着。

マイル戦生涯無敗の強さは伊達ではなかった。

そう、陣営は今まで中山記念とか札幌記念とか、ちょっと長い距離を使わせてしまっていた。まだ無理してでも中距離を勝たせた方が後の種牡馬生活的にも印象が良かった時代なので、陣営の選択は妥当だ。しかし、この馬のスタミナとか脚の切れ味とかを総合的に加味すると、マイルがベストな距離だったのだろう。

ようやく努力が実った陣営はサンダーを放牧。翌年の安田記念に備えた。

スプリンターズS

そして、ナリタブライアンが不調の中マヤノトップガンがなんやかんやする数週間前のこと。
同じく中山競馬場で行われた短距離頂上決戦。

マイルCSと打って変わってメンツが薄めだったため、人気は固まっていた。

1番人気はフジキセキ主戦角田騎手のヒシアケボノ。デカい。
2番人気は武豊から横山典弘へと乗り替わりとなったビコーペガサス
3番人気は絶好調の外国人騎手オリビエ・ペリエが駆る外国馬ソーファクチュアルと続いた。

サクラバクシンオーがスワンステークスで見せたレコードを破った(色んな意味で)規格外の3歳馬か、負けられないビコーペガサスか。

人気通りの結果。豪快に大外から差し切り勝ち。
まさに「横綱相撲」だった。

大 横 綱

ヒシアケボノ

ヒシアケボノ(ウマ娘)
引用:https://umamusume.jp/character/detail/?name=hishiakebono
世代1995
生国🇺🇸アメリカ
血統父 ウッドマン(ミスタープロスペクター系) 母父 シアトルスルー(ボールドルーラー系) 
半弟 🇺🇸アグネスワールド(🇬🇧ジュライカップ)
成績30戦6勝[6-1-6-17]
主な勝ち鞍スプリンターズS スワンS
母父としての産駒クラウンロゼ(フェアリーS)
主な記録国内GI最重量勝利

(比較対象さえ見えなければデカさも気付くまい…!)

力士の曙から名付けられたその名前に見合うバカデカい馬体。2歳のデビュー戦から550kgあった。

陣営は数戦を経てなんとか516kgまで減量させたが全く勝てず。慌てて馬体重を増やしてみたら勝てるようになったので、減量はさせないことにした。
スワンSを勝つ頃には556kgになっていた。

そして迎えたスプリンターズSを560kgで差し切り勝ち。

2着ビコーペガサスは432kg。128kg差である。
これ以降、560kg以上で日本のGIを勝てた馬は存在しない。

古馬になり、ますますの活躍が期待されたアケボノだったが、成長からか体重調整が上手くいかなくなってしまった。要するにめっちゃ太った

4歳春は560kg前後のまま善戦を続けられていたのだが、秋になって体重が20kg増加。以降減量しても全く走らなくなってしまった。悲しい。

でもまあ、560kgでGI、それもスプリント戦を勝てたという衝撃は100年経っても消えないだろう。大きいことはいいことだよね。(適当)

(追記:2023年になって594kgでGIIIを勝つ怪物が現れたため、若干衝撃が薄れつつあったりする)

疾風勁草

さて、ここからは96年の短距離路線。いよいよ例のあのレース。

1996 高松宮杯

第1回GI高松宮杯。
今回は三冠馬は無視して短距離馬目線で見ていきたい。

レースは改修前の中京らしい展開に。直線も短く坂も無いため前々決着。

すごいスピードで先頭を走り切ったのはこの馬。

電撃の女帝

フラワーパーク

世代1995
血統父 ニホンピロウイナー(サーゲイロード系) 母父 ノーザンテースト
成績18戦7勝[7-2-1-8]
主な勝ち鞍春秋スプリントGI連覇 シルクロードS
主な産駒ヴァンセンヌ(東京新聞杯/安田記念2着)
主な子孫イロゴトシ(中山グランドジャンプ連覇)
トゥルスウィー(九州三冠) ハルノインパクト(高知優駿)

他馬を置き去りにするその鋭い末脚は、父から受け継いだものだった。


マイルを駆け抜け伝説を作ったニホンピロウイナー。
春秋マイルGIを制覇したその末脚。時代を越え、父が果たせなかった天皇賞制覇を成し遂げたヤマニンゼファー。それに対し、より短距離で真価を発揮したのがフラワーパークだった。

骨折の影響でクラシックを諦めたフラワーは3歳10月とかなり遅めのデビューを果たした。
こうなると普通の馬は勝てない。未勝利戦とはいえ他の馬はレースの勝手を分かっているし、筋肉も締まっている。経験差が格差となる。

フラワーも初戦は10着と大敗。だが…

雨の中行われた重馬場の2戦目。他の馬がバテる中、最後までスピードを維持したまま1着。
以降、覚醒したように連戦連勝を繰り返しオープン入り。4歳にしてようやく本格化を迎えた。

そんな中、春のオープン戦で敗北を喫する。
この時彼女を負かしたのが後のライバル、エイシンワシントンだった。

敗北をもとに陣営は騎手をチェンジ。
マヤノトップガンで絶賛大暴れ中の田原成貴が鞍上となった。
フラワー調教師の松元氏はトウカイテイオーの調教師でもあった。あの有馬記念以来の伝説のコンビだ。

乗り替わり初戦は96年から創設となったスプリントGIII、第1回シルクロードS
エイシンワシントンはもちろん、ヒシアケボノやドージマムテキ、ライデンリーダーといった豪華メンバーで発走となったが、これを快勝。

ワシントンは前走が59kgという重ハンデを背負ってのものだったので、疲れを引きずり最下位に。
レースは別定重量といって、重賞を勝ってたら斤量がプラスされるタイプのレースだったので、重賞未勝利のフラワーパークは有利に。

フラワー自身の強さと相まって、重賞初勝利を果たした。

そして更に調子が上向いた本番の高松宮杯では、ヒシアケボノ、ビコーペガサス、ナリタブライアンら強豪ひしめく中3番人気に支持されると、2着以下に影すら踏ませぬレコード勝ち。
勝ちタイム、1:07:04
レコードはなんと12年間も破られなかった

スプリントGIでのレコードはロードカナロアとビッグアーサーの1:06:07。そして良馬場で行われた2019年高松宮記念の勝ちタイムが1:07:03なので、普通に今でも通用する走りだったことが分かる。
これに挑むことになったナリタブライアンは相当不憫だったのかもしれない。

そして、そんな名牝に肉薄したのがこの俊足。

小さなヒーロー

ビコーペガサス

ビコーペガサス(ウマ娘)
引用:https://umamusume.jp/character/bikopegasus
世代1994
生国🇺🇸アメリカ
血統父 ダンジグ(ノーザンダンサー系) 母父 コンドルセ(トウルビヨン系)
成績27戦4勝[4-6-2-15]
主な戦績スプリンターズS2年連続2着 高松宮杯2着
セントウルS(GIII)1着

ウマ娘では初期実装組ながら3年間も実装されなかった不憫なキャラ。

このタイミングで紹介することになったということはそういうこと。彼はこれで全盛期を終え、GI未勝利のままターフを去る。

元来の小柄な身体と、短距離の追い込み馬というピーキーな脚質だったことが災いし、あと一歩届かないレースが大かった。

何より大きかったのが全盛期を史上最強の驀進王とマイルの女王に邪魔されたこと。
ようやく居なくなったと思ったら骨折で休養。
なんとか復活したと思ったら自分より数倍でかいやつにスプリントで負かされるという屈辱。
今度こそはと挑んだGIで新たな女王に完敗。

とにかく生まれた時代を呪うしかない名馬だった。

GI成績は14連敗。2着は3回。
一度はヒシアマゾンを負かした快足馬はしぶとく現役を続けるも、最後は大雨の中駆ける世界のマイル王の背を追いかけながら引退することとなった。

引退後は種牡馬になったものの、骨折したりとかであまり子供を作れず、なんやかんやで数年で種牡馬を引退することになってしまった。なんかどこまでも恵まれてない感じがする…。

安田記念

春のマイルGIはとんでもない豪華メンバーで幕を開けた。
GI馬8頭+タイキブリザード&ビコーペガサス。
短距離版有馬記念といっても過言ではない状況。

1番人気はトロットサンダー。昨年の伝説的な勝ち方でファンが増え、7歳馬ながら勝てると思われていた。しかしメンツが濃すぎるので単勝3.6倍。
2番人気は昨年の安田記念勝ち馬ハートレイク。また鞍上は武豊。トロットと戦ったらどうなるのか、マイル王対決が期待されていた。
差のない3番人気はタイキブリザード。昨年の安田記念は3着だった上に、宝塚と有馬で連続2着というポテンシャルの高さ。しかも前走の京王杯SCではトロットとハートを破って1着になっている。ここでトロットは3着になってるのに1番人気なあたり1600mでの信頼感がすごい。
4番人気はヒシアマゾン。昨年のジャパンCでの激走の反動か蹄の調子が悪く、産経大阪杯を回避してぶっつけで安田に挑まざるを得ないほどにガタが来ていたが、それでも夢を見たいファン。
5番人気はフラワーパーク。マイルではちょっと距離が長い気がするが、未知数。
6番人気は皐月賞馬ジェニュイン
7番人気はオークス馬ダンスパートナー
8番人気にビコーペガサス

超豪華メンバーの決戦。そんな中でも突き抜けてみせたのはこのコンビ。

中盤で先頭に立ち、そのまま驚異的な粘りで1着をもぎ取ろうとするのは12番人気の伏兵ヒシアケボノ。
その奥からタイキブリザードとトロットサンダーが熾烈なデッドヒートを繰り広げ前に飛び出してくる。

ジェニュインやダンスパートナーは4着争い。これだけの豪華メンバーをもってしても付け入る隙の無いほど強い走りだった。

わずかにハナ差でトロットサンダーが1着。ブリザードは2着。そしてクビ差でヒシアケボノが3着。
マイルだけは譲れない。そう感じさせる走りだった。

この後トロットは骨折してしまい、さらに馬主の不祥事がありそのまま引退を余儀なくされた。終わり方こそ不憫なものの、7歳でマイルGIを制したその走りは記録に残り続ける大きな遺産となった。

マイルCS

トロットなき後のマイルCS。
安田記念の豪華メンバーはだいたい中距離GIや海外遠征に本腰を入れてしまい、めちゃくちゃ層が薄くなってしまった。

1番人気がジェニュイン。2番人気がビコーペガサス。
GI馬はジェニュインとヒシアケボノの2頭だけ。お察し状態である。

なおさら負ける訳にはいかない。
単勝1番人気とはいえ4.9倍、本命不在の裏返し。
最後のGI勝利から1年半。正真正銘、本物の強さをもう一度。

ジェニュインは頑張った。
対抗馬のヒシアケボノは夏で20kg太っちゃって、安田記念と同じ戦法で行ったら脚がもたずに沈んだ。
ビコーペガサスも距離適性なのか今いち伸びない。
エイシンワシントンが驚異的なペースで粘り、その他先行馬が力尽きるのを外から見事に差し切ったジェニュイン。

これが“本物”の走り。

同期のフジキセキとタヤスツヨシは既に引退済み。後輩らも不振や離脱、引退が続く(後述)。
サンデーサイレンス産駒早熟早枯れ説が囁かれる中、ジェニュインは実力で黙らせた。
(1年と経たない内にSS産駒が古馬GI勝ちまくるようになるのはまた別の話)

これが最後のGI勝利となったが、引退までずっとコンスタントに馬券に絡み続ける善戦っぷりで強さをアピールしていた。もっと評価されていい。周りが強すぎたのもあるけど。

スプリンターズS

年の瀬のGIは打って変わって、歴史に残る名勝負となった。

1996年、スプリンターズステークス

「もしも」が禁句とされる勝負の世界で、それでも「もしも」の誘惑に駆られる瞬間がある。

その馬の鼻があと1センチ高かったら-

ハナ差1センチの決着。
僅かな差か、絶望の距離か。
勝者は必ず、敗者を作る。

ここ10年で競馬にハマった人ならまず通るであろうCM、THE LEGENDシリーズ。
知らない人がいるならぜひ見て欲しい。THE WINNERもいいぞ。

このレースは語るより見てもらった方が早い。
息も付かない熱戦だ。

開始2秒で大勢は決した。ゲートを上手く出たフラワーパークと、押して押してハナを主張したエイシンワシントン。

マイルGIで驚異の粘りを見せた挑戦者と、スプリントで未だ連対を外していない絶対女王。彼らが前を引っ張れば、後ろの馬達は何もできない。

エイシンワシントンとフラワーパーク、2頭の一騎打ち。序盤のペースが早すぎたからか、後ろの馬すら脚が残ってない状態で、前2頭だけがまだ伸びていた。
ゴール板までの距離を完璧に読んで差してくるフラワーパークと天才田原成貴。しかしエイシンワシントンは予想以上の粘りを見せた。

10分以上に及ぶ写真判定が終わる。

勝者、フラワーパーク

着差、わずか1cm

判定に使われた写真がネットに上がってるので調べたい方は調べてほしい。じっくり見ても全然分からないくらいの差だ。

疑惑の判定とされるほどのごくごく僅かな差。
泣いたのは他でもないエイシンワシントンだった。

不遇の天才

エイシンワシントン

世代1994
生国🇺🇸アメリカ
血統父 オジジアン(ダマスカス系) 母父 シャム(ファラリス系)
成績25戦8勝[8-4-3-10]
主な勝ち鞍CBC賞(GII) セントウルステークス(GIII)
主な産駒スーパーワシントン(盛岡・早池峰賞) メジャーガール(名古屋・駿蹄賞) サイバーモール(笠松・プリンセス特別)
母父としての産駒エイシンヒテン(秋華賞4着)
エーシンユリシーズ(園田ユースC) エーシンシャウラ(笠松・ライデンリーダー記念)

フラワーパーク主戦、田原成貴は語る。ゴール前は、馬を押したんじゃなくてあえて「引いた」んだと。
テニスボールはギュッと握り潰すと、手を離した時に反発して一瞬だけ大きくなる。その原理を手綱で使ったんだと。
なんかもう見えてる世界が違うような発言。一瞬の判断でこれをやれるのが凄い。
エイシンワシントンの熊沢騎手も必死に粘ったのだが、なんとも惜しい結果になった。

ワシントンはその後故障し引退、GIを勝つことは叶わなかった。

デビュー時からレコード勝ちを繰り返したものの、度重なる故障で真価を発揮することができず、ようやく歯車が噛み合った瞬間に飛び込んできたフラワーパーク。運の尽き。

しかし、彼も敗者とはいえCBC賞でフラワーパークを破ってレコードタイムで勝っていること、GIで1着と1cm差の好走を見せたことが評価され、GI未勝利馬としては珍しく種牡馬になることができた。

産駒からは1億円稼いだ馬が2頭も現れ、ビコーペガサスよりも断然安泰な老後を過ごした。
今でもエイシンワシントンの血が入っている馬は走っている。
地方競馬の馬券を買うために血統表を見て「おっ」となる瞬間も、もしかしたらあるかもしれない。

フラワーパークもフラワーパークで、高松宮杯(GI)初年度にして初の春秋スプリントGI制覇を達成し、歴史に名を残す名牝となった。

道中2番手で上がり最速をマークする訳の分からない大激走。ここで燃え尽きたのか、晩年は全盛期ほど活躍は出来なかったものの(それでもほぼ5着以内)、引退して繁殖牝馬になると、安田記念で年度代表馬モーリスのクビ差2着になったヴァンセンヌを輩出。
ヴァンセンヌも種牡馬になり、中山グランドジャンプ勝ち馬イロゴトシなど活躍馬を出して成功を収めている。
GI前の条件戦とかを見てるとヴァンセンヌ産駒を見かけることもあるはず。結構いい馬が多い。

沈黙の嵐

実力はそうでもないんだけど人気が凄い世代。
人気はそうでもないけど実力が飛び抜けてる世代。

BNW世代はどちらかと言えば前者だったと思う。(ビワハヤヒデは置いといて)

そして、これから紹介する1996世代は後者寄り。
実力に人気が伴う前に引退してしまったり、衰えが先に来ちゃったりでピンと来ない馬が多い。

ビワハヤヒデが朝日杯に敗れ、クラシックに向けて準備をしていた頃。次の名馬を探していたのは、ハヤヒデを管理していた浜田調教師。
ハヤヒデやナリタブライアンらが産まれた早田牧場で、浜田師は生後2週間くらいの牝馬に目を付けた。

思わず「ビワ」の馬主さんを呼び出して購入を依頼するほど、浜田師はこの馬に未来を見ていた。
ビワハイジ。そう名付けられた少女は、言わずもがなアルプスの頂上、GI制覇を目指して駆け抜けることになる。

阪神3歳牝馬S

95年。ハヤヒデが引退して一年も経たない内に、ハイジはデビューする。
新馬戦は6月上旬。めっちゃ早い。(平均は8〜10月)
成長が早く、今戦ってもしっかり勝てるくらいまで仕上がったということだ。
(ド偏見だけどこういう馬は3歳秋になると成長と全盛期終わって全然勝てなくなりがち)

武豊を鞍上に新馬戦は楽勝すると、7月末の札幌3歳ステークス(現札幌2歳ステークス)へ。
426kgとかなり軽めな馬体重を嫌われながらも3番人気になると、あの札幌の短い直線で3馬身以上も差をつけ1着。


ハヤヒデで育成のノウハウが貯まっていた浜田師は先を急がず、夏〜秋をまるまる放牧に当てて、ぶっつけ本番で阪神3歳牝馬S(阪神JF)に挑むことにした。

冬になり、一回り大きくなったハイジ。体重もそれなりに増えた。(とはいえ434kg)
このローテを嫌われたのか武豊には見捨てられたものの、彼女は結果で見返した。

アルプスの天才少女

ビワハイジ

世代1996
血統父 カーリアン(ニジンスキー系) 母父 ロードゲイル(サーゲイロード系)
成績10戦4勝[4-1-0-5]
主な勝ち鞍阪神3歳牝馬S 京都牝馬特別 札幌3歳S
主な産駒ブエナビスタ(牝馬二冠) ジョワドヴィーヴル(阪神JF)
アドマイヤオーラ(京都記念) サングレアル(フローラS) トーセンレーヴ(エプソムC) アドマイヤジャパン(京成杯)
主な子孫アルクトス(南部杯連覇) ノボバカラ(さきたま杯) クロスクリーガー(兵庫CS)
主な記録JRA重賞勝ち馬最多出産記録

フジキセキの角田騎手を背中に、海外の名手キネーンが御すエアグルーヴを退け1着。完璧なスロー逃げが刺さった。

騎手の名騎乗が冴えたため、角田騎手を主戦に迎えることになったクラシック。
フジキセキで挑めなかった一冠目に燃える角田騎手。
しかし、彼女の天下はそう長くは続かなかった…。

四天王と女王

1995年6月、武豊は結婚した。

どうした急にと思われるかもしれないが、少しだけ話を聞いて欲しい。

アイドルとの挙式を済ませた彼は、競馬村の方々に挨拶しに回っていた。その中で訪れた社台ファームで、代表の吉田照哉氏に薦められた2歳馬がいた。

前評判からは想像もつかない程の大成功を収めていたサンデーサイレンス産駒。2年目の世代ももちろん数多くおり、社台Fは関東と関西に1頭ずつ、大将格クラスの素質馬を送り込む予定でいた。
「今のうちに唾つけといたら」と言われ目にした黒鹿毛の馬、言うなれば“西の大将”に、豊は目を奪われたのだった…。

ビワハイジがGIを制覇する数時間前、阪神4Rでその馬はデビューした。

道中はインで立ち回り、最後軽く外に出して伸ばす。京都での立ち回りが最高に上手い彼らしい騎乗だったが、気性の荒い馬の新馬戦は上手くいかない。直線で右に右に斜行しまくったのをなんとか矯正しながらギリギリで差し切った。

“西の大将”はそのまま年末の中距離王決定戦へ。他にもあった騎乗依頼を蹴って、武豊はこの馬とコンビを組んだ。


競馬はブラッドスポーツであり、ビジネスである。

種牡馬は人気が出なければ産駒数も先細りしていくし、後世に血は残らず早期引退となる。そのためには短期決戦。夏の新馬戦から結果を出して、セリで馬を買うオーナーに産駒の強みや勝ち上がり率の高さを訴求していかねばならない。

最近の話ならモーリス産駒なんかは明らかに晩成傾向なのに6月からバンバン新馬戦に駆り出されていたし、初期は晩成型とみられたハーツクライやモーリス産駒も、配合を工夫することによって2〜3歳から活躍できる馬が増えた。

背水の陣で迎えたサンデーサイレンス初年度産駒も例外ではなく、夏のうちから結果を出すため早期入厩が進んだ。その結果、えげつい勝ち上がり率とフジキセキらの台頭により、翌年の種付け数が一気に上昇した。

繋養している社台としてはこの上ない好機。初年度の勝ち上がり率が異常なので、何もしなくても人気は集まる。急いでデビューさせる必要もない。時間をかけられるようになった。そういった追い風もあってか、“西の大将”は12月デビューとなった。

一方、シンコウラブリイで初めてGIを制し、後にレジェンドトレーナーと称されることになる東の名伯楽、藤沢和雄調教師は、あるサンデーサイレンス産駒に大きな期待を抱いていた。
藤沢厩舎は負荷のかかるトレーニングはほとんどせず、集団でじっくり長時間かけて乗り込む。気性難の馬には耐え難い苦行である。だが、その馬はサンデー産駒とは思えないほど大人しく、厩舎の風土に合っていた。

8月末に入厩。藤沢厩舎のテンプレ通りいくならじっくり育成して冬前のデビューとなるところを、仕上がりきらずとも走れると10月7日にデビュー。彼の素質はデビュー前から話題になっており、一部ではその能力はフジキセキにも勝るとすら言われていたため、単勝1.3倍の大人気。しかしそこは緩め仕上げなので3着に飛んだ。単勝買った人は泣いていい。

朝日杯

新馬戦で叩いて状態が上向き、2連勝で迎えた朝日杯。

デビュー時は474kgでやや細く映った馬体は、この日までに490kgと増加。不安のない状態で、“東の大将”の前評判に恥じない、危なげない走りをみせた。

青のシャドーロールが描くのは、1年前の2歳王者にも似た孤高の強さだった。

インで溜めてギリギリまで待って抜け出す。理想通りの競馬をして、強く追うことなく突き放す。ゴール前の騎手の手元で伝わる絶望感。彼はまだ本気を出していない

「凱旋門賞か、ブリーダーズカップか」

ファンも関係者も大真面目にそんなことを考えるほど、伝説的な馬になる。そんな期待すら抱かせた。

天才少年

バブルガムフェロー

世代1996
血統父 サンデーサイレンス(ターントゥ系) 母父 リファール(ノーザンダンサー系)
成績13戦7勝[7-2-3-1]
主な勝ち鞍天皇賞(秋) 朝日杯 毎日王冠 鳴尾記念 スプリングS
主な産駒🇦🇺Rockabubble(🇳🇿ブリーダーズS)
アッパレアッパレ(名古屋グランプリ)
母父としての産駒ダンシングプリンス(JBCスプリント)  マジンプロスパー(CBC賞連覇)
ジャングルスマイル(金沢・百万石賞5勝) ラブバレット(水沢・栗駒賞4連覇) ギガキング(盛岡・ダービーGP)
主な子孫オマツリオトコ(兵庫ジュニアグランプリ)

最強の2歳王者が現れた。デビュー前から大将格と評されたその素質を、早くも開花させたのだった。

東のサンデー産駒筆頭はGIを制覇。西の調子を見ていこう。

ラジオたんぱ杯3歳S

年の瀬の中距離王決定戦。馬券的には1勝馬より経験豊富な2勝馬が人気になる。

1番人気は後の重賞馬が3頭も集ったハイレベル1勝クラス(黄菊賞)を勝ち抜いたイシノサンデー、3番人気は葉牡丹賞を勝ち上がったタイキフォーチュンが支持されたが、2番人気にはまだ1戦しかしていない、西のサンデー総大将。相当な期待を受けていた。1つ上の全姉がオークスを制していたことも大きかったのだろう。

血は争えない。彼は姉に負けない能力を秘めていたが、同時に姉に負けない気性の悪さも秘めていた。

前走でヨレまくった彼は、馬群の中で鞭を使うと危険が伴う。結果として追い出しが遅れ、3着と敗れてしまった。

鞍上の武豊は悔しかっただろう。よりにもよって1着馬が、自身が逃した魚だったのだから。

夢をもう一度

ロイヤルタッチ

表彰JRA年度代表馬(1996)
世代1996
血統父 サンデーサイレンス(ターントゥ系) 母父 マルゼンスキー(ニジンスキー系)
半兄 ウイニングチケット(日本ダービー)
成績15戦3勝[3-4-2-6]
主な戦績1着:ラジオたんぱ杯3歳S(GIII) きさらぎ賞
2着:皐月賞 菊花賞 京都記念
主な産駒アサヒライジング(GI2着3回)
カキツバタロイヤル(大井・サンタアニタトロフィー連覇)

兄のダービー馬、チケゾーことウイニングチケットを彷彿とさせるその強さ。
このレース見れば96クラシックが全部分かるような豪華メンツでめちゃくちゃ強い勝ち方をした。

後に有馬記念を3連覇するレジェンド外国人、オリビエ・ペリエの大まくり。西の社台ファーム大将格は敗れ、勝利したのは日高産のサンデー産駒。2着イシノサンデーも同様。サンデー時代の到来となった。

ロイヤルタッチはビワハイジの阪神3歳牝馬デーに、阪神5Rで武豊を乗せてデビューしている。もちろん調教師に継続騎乗を依頼されたが、25分前の阪神4Rで先約が生まれてしまったため、そちらを選んだ。悔しい結果。

しかし、彼らは春のクラシックを見据えて戦っていた。本番はここから。

1996 皐月賞

ラジオたんぱ杯を3着に敗れた西の総大将・橋口厩舎陣営は、在厩調整の後にきさらぎ賞、弥生賞に参戦。きさらぎでは再びペリエ騎乗ロイヤルタッチにクビ差敗れるも、弥生賞では中団から外に出してまくるように差し切り、1番人気のイシノサンデーを蹴散らし1着。

クラシック本命が分からなくなってきた。楽しみの多い春だったが…。


丁度ナリタブライアンがサクラローレルに敗れた頃。皐月賞直前に、2つの悲報が流れる。

東の大将ことバブルガムフェローがスプリングS勝利後に骨折。半年の休養を余儀なくされ、ラジたん3着の西の大将も熱発で皐月賞を回避。社台ファームが手塩にかけたサンデーサイレンス産駒のスターが2頭とも不在。

圧倒的な本命がいないまま始まる一戦。結末は至って順当だった。

サンデー産駒が消えようが、やっぱり勝つのはサンデー産駒。

二刀流二冠馬

イシノサンデー

表彰JRA年度代表馬(1996)
世代1996
血統父 サンデーサイレンス 母父 アリダー(ネイティヴダンサー系)
成績22戦6勝[6-2-4-10]
主な勝ち鞍皐月賞 ダービーグランプリ(交流重賞) 京都金杯
主な産駒イシノファミリー(報知グランプリC)

ロイヤルタッチは前走の若葉ステークスを取りこぼして2着。名手ペリエが帰国したため乗り替わりもあった。失礼な話ではあるが、ペリエクラスの名手からの乗り替わりは誰が乗っても鞍上弱体化。腕で補ってた弱点が顕在化するのは仕方がない。以降、どうも詰めの甘い馬になってしまう。

馬群の中から外に出す際に追い出しが遅れたロイヤルタッチは猛然と追い込んだものの、手応え良く先に抜け出したイシノサンデーを差しきれなかった。

イシノサンデー主戦の四位騎手は初GI制覇。これをきっかけに名馬や迷馬に騎乗することになる。

イシノサンデー自身は皐月を制したが、ダービーを勝てなかった。母方の血が完全にアメリカダート血統なこともあって、菊を回避し地方交流の道へ。大井のスーパーダートダービー3着を経て盛岡のダービーグランプリを制し、曲がりなりにもダービー馬になった…のだが、肝心のダービーGPの格が高くなく、パッとしない印象を受ける(後にフェブラリーSをボロ負けしたのも大きい)。

でもGI馬の中では屈指の長生きホース。未だご存命。無事是名馬の象徴だ。

桜花賞

96年は何かと不運の多いクラシックだった。GI制覇が期待されたエアグルーヴも、デイリー杯勝ち馬ロゼカラー熱発で桜花賞を回避。除外覚悟で出走登録していた収得賞金900万組、要するに2勝馬すら全頭出られるほどに有力馬が抜けた。

だが、“有力馬”とは何か。人気と実力は違うということを、誰もが思い知ることになる。

スタート後に即コーナーの改修前阪神1600mコースは、外から内に馬が殺到しハイペースになりやすい。そんなレース傾向を逆手に取ったのが天才・田原成貴だった。

馬のリズムを優先し、序盤はゆっくり、中盤にやや前に進出。インを進みながら、4角で外に出す。理想的なレースメイキングで馬場の真ん中に躍り出る。

そして最後は猛然と迫って差し切りからの投げキッス。鞍上は桜花賞連覇。華のある勝ち方に桜が映える。

ファイトガリバー

世代1996
血統父 ダイナガリバー(ノーザンテースト系) 母父 トライバルチーフ(プリンスリーギフト系)
全兄 ナリタタイセイ(NHK杯)
成績12戦3勝[3-2-1-6]
主な勝ち鞍桜花賞

兄はナリタタイセイ。皐月賞でミホノブルボンの2着となった馬。
父はダイナガリバー。社台グループの中長距離最強馬として長らく君臨していたダービー馬。
良血が仁川で開花した。

デビューから短距離を中心に走ってきたこともあり、マイルGIのペースでも楽に追走することができたのも勝因だろう。

それにしても、社台が求めていた至宝の最高傑作、ダイナガリバー産駒唯一のGI馬が非社台系の牧場から出たというのはなんとも皮肉だ。20年後も社台グループの至宝の最高傑作は非社台から出てるあたり、これはもう運命とでも言うべきなのかもしれない。

オークス

続けてオークスも紹介しよう。桜花賞で華々しい勝利を飾ったファイトガリバーだが、距離不安と相手関係により当日は4番人気。

単勝2倍台に支持された1番人気は、中10週以上のブランクを感じさせない強さで駆け抜けた。

明らかに長い距離を保たせるべく、イン後方で脚を溜め続け、終いに外からキレの違う豪脚で突き抜けようとするファイトガリバー。しかし、最後の1頭が抜かせない。痛恨の2着。

それでもこの大激走は彼女の評価を決定づけるには十分すぎる材料だった。1着馬の後の戦績を考えれば尚のこと。東京コースでは全連対かつ、海外GI勝ち馬以外には無敗の、府中の“女帝”に食い下がっただけでも。

女帝

エアグルーヴ

エアグルーヴ(ウマ娘)
表彰JRA年度代表馬(1997)
世代1996
血統父トニービン(ゼダーン系) 母ダイナカール 母父ノーザンテースト(ノーザンダンサー系)
成績19戦9勝[9-5-3-2]
主な勝ち鞍オークス 天皇賞(秋)
札幌記念連覇 産経大阪杯 マーメイドS チューリップ賞
主な産駒アドマイヤグルーヴ(エリ女連覇) ルーラーシップ(🇭🇰QE2世C)
フォゲッタブル(ステイヤーズS) グルヴェイグ(マーメイドS)
主な子孫牝系子孫:ドゥラメンテ(二冠) ジュンライトボルト(チャンピオンズC)
ローシャムパーク(オールカマー) レッドモンレーヴ(京王杯SC) アンドヴァラナウト(ローズS) グルーヴィット(中京記念) 他多数
その他子孫:キセキ(菊花賞) メールドグラース(🇦🇺コーフィールドC) ドルチェモア(朝日杯) マスクトディーヴァ(ローズS) ソウルラッシュ(マイラーズC) ダンビュライト(京都記念)
リバティアイランド(牝馬三冠) タイトルホルダー(宝塚記念) スターズオンアース(牝馬二冠) ドゥレッツァ(菊花賞) ドゥラエレーデ(ホープフルS) シャンパンカラー(NHKマイル) ヴァレーデラルナ(JBCレディス) アイコンテーラー(〃)
シュガークン(青葉賞) ドゥーラ(クイーンS) 他多数

(とんでもねえ数の子孫)

実は2歳の時点で一部のファンからはクラシック最有力候補と言われていたエアグルーヴ。

新馬戦(1200m)をクビ差で2着に甘んじたものの、同距離で2戦目に挑むと5馬身差で快勝し…3戦目のいちょうステークス化け物じみたレースを見せる。

11頭中7頭が牡馬。体格的には牝馬が不利なはずのレースで、最後の末脚の爆発っぷり。
1分55秒あたりから見てもらうとわかりやすい。
完全に進路を塞がれ、軽く立ち上がっちゃってるのに立て直して差し切る。
相当レベルが抜けてないと出来ない技。
これを見てるとオークスでの勝利も納得できる。

その次走がこれ。GI馬を軽くちぎる馬が人気にならないわけが無い。

ビワハイジ陣営としても、GIタイトルを手にした馬が、同コースでの再戦で、一度下した相手に子供扱いされるとは思ってもみなかっただろう。

母ダイナカールが第44回オークスを勝利してから13年。最強の愛娘が第57回オークスを制覇した。

親子2代でクラシック&同一GI制覇
恐らくトウカイテイオー以来のことだった。

その勝ちっぷりや母の現役時代の活躍から、世代最強牝馬の立ち位置になることが期待された彼女。
しかし、敵は思わぬ所にいたのだった…


エアグルーヴのいなかった桜花賞も牝馬特有のフケ(発情期)とかの影響でボロ負けしてしまっていたビワハイジ。彼女はあえてオークスには挑まず、ダービーに歩を進めた。女帝を相手取ることに見切りをつけたのだろうか。

結果は13着と大敗。以降、完全に調子を崩したビワハイジは全盛期の強さを見せることができず引退し、繁殖牝馬に。
そこで産んだ子が時代を変える名牝だったことは、まだ誰も知らない。

日本ダービー

ダービー上位人気は全部ラジオたんぱ組のサンデー馬だった。

皐月賞馬イシノサンデーに次いで、僅差の2番人気はラジたん3着だった“西の大将”。皐月は熱発で出られなかったが、ダービートライアルのプリンシパルS(OP)をノーステッキで楽勝からの臨戦。武豊の初ダービー制覇がかかっていた。

思案の結果、豊が出した答えは「好位での積極策」だった。

馬込みに包まれることに課題のある本馬。ましてダービーに向けてバチバチに仕上げてあるので、少しのことで掛かってジ・エンドだけは避けたい。ロイヤルタッチもイシノサンデーも自分の馬以上のキレる脚は無いと確信していたため、前方で折り合いを付け、直線で伸ばしてゴールを目指す。最も勝つ確率の高い騎乗はこれだった。

策は概ね成功した。ラスト200で完全に抜け出した。とはいえ馬はソラを使う。先頭に立つと気を抜く。されど後ろから彼を捕まえられる馬はいないと踏んでのこの作戦。騎乗は完璧だった。問題は、その打算が外れたことにあった。

府中の直線、豪脚一閃。外から炸裂するのは…

音速の末脚

フサイチコンコルド

表彰JRA年度代表馬(1996)
世代1996
血統父 カーリアン(ニジンスキー系) 母父 サドラーズウェルズ(ノーザンダンサー系) 母 バレークイーン
半弟 アンライバルド(皐月賞) ボーンキング(京成杯) ミラクルアドマイヤ(カンパニーの父)
半妹 グレースアドマイヤ(ヴィクトリー、リンカーンの母)
成績5戦3勝[3-2-1-0]
主な勝ち鞍日本ダービー
主な産駒ブルーコンコルド(南部杯3連覇) バランスオブゲーム(中央GII6勝)
オースミハルカ(クイーンS連覇) ディラクエ(北海道2歳優駿)
母父としての産駒ジョーカプチーノ(NHKマイル) オースミイチバン(ダイオライト記念)
主な子孫ジョーストリクトリ(ニュージーランドT)
マウンテンダイヤ(高知・黒潮スプリンターズC)

伝えたいことはだいたい三宅アナが実況で言ってくれてるが、この馬は僅か3戦目でダービーを制覇した。

1年前、僅か2戦目でイギリスダービーを制したラムタラという馬がいた。それになぞらえて「和製ラムタラ」と評されたこの馬。菊花賞での活躍も期待された。

音速の末脚と評されたが、馬名のコンコルドは音速の旅客機ではなく、ロンシャン競馬場の近くにある「コンコルド広場」から来ている(凱旋門賞に挑めるような名馬になるように)。でも実況が良すぎるのであまり槍玉には上げられない。

本当はプリンシパルSを挟む予定だったが、輸送による熱発で回避していたコンコルド。そこで実力を計れていれば、武豊はもう少し追い出しを遅らせただろう。悔やまれる2着だが、相手がダービー馬に相応しい走りをしただけだ。

道中5番手から上がり最速。順調ではない道のりだったが、それを感じさせない堂々たる走りで戴冠。馬主の関口氏は初めての重賞制覇がダービーという豪運だったが…その後紆余曲折あって…この馬は恐らくウマ娘化はできないだろう…。藤田Jは24歳でダービージョッキーになった。この後も輝かしい経歴を残す名手だ。どうしてあんなことに…

第1回 NHKマイルカップ

秋の一冠の前に、ついにやってきた初回のNHKマイル。JRAの思惑通り、1着は外国産馬。14/18が外国産馬だった。

そんな中で内国産馬バンブーピノがとんでもねえ逃げをかましたことにより、1番人気の馬が消し飛び、中団にいた馬が上位を占める結果に。第1回とは思えないクレイジーなレースになった。

勝ち馬はこちら。

幸運急行

タイキフォーチュン

世代1996
生国🇺🇸アメリカ
血統父 シアトルダンサー(ニジンスキー系) 母父 ミスワキ(ミスタープロスペクター系)
成績15戦4勝[4-0-0-11]
主な勝ち鞍NHKマイルカップ 毎日杯

初代王者タイキフォーチュンは1600mを1:32:6で駆け抜けた。
当時の東京芝1600のレコードはオグリキャップが5歳の時に記録した1:32:4。
3歳馬なのに全盛期オグリと0.2秒しか違わない。爆速。

とんでもない奴が現れた…と思ったらなぜか以降は連敗続き。そのまま引退となってしまった。
レコードはあのキングカメハメハが更新するまで、クロフネやエルコンをもってしても破られなかった。限界を超えた代償は重い。

第1回秋華賞

ここからは秋のGI。

こちらも記念すべき第1回秋華賞
本命はもちろんエアグルーヴ。
母ダイナカールが回避した三冠目。
ここで勝てば明確に親を超え、世代トップの名牝として君臨できる。

だが、彼女は本調子ではなかった。
調整ミスか夏負けか、体調を崩してしまい、トライアルには出ずにぶっつけ本番となってしまった。

その上で襲いかかった悲劇が「エアグルーヴフラッシュ事件」。
レース当日、いつも通り出走馬はパドックを周回していたのだが、エアグルーヴに向かってフラッシュを焚きながら撮影する輩が現れたのだ。

人間ですら集中力が切れかねないこの行為。
サラブレッドは極めて繊細な動物なので、光や音にかなり敏感に反応する。
結果、エアグルーヴはめちゃくちゃイレ込んでしまった。落ち着きのないまま馬場入場。

そんな事は露知らず、ファンはエアグルーヴの単勝を買いまくり1.7倍。
波乱のレースが幕を開けた。

レース後の馬券の飛び散り方が荒れ具合を伝えてくれる。
上位馬は5、3、7番人気というまさかの展開。
先頭で駆け抜けたのはこの馬。

出色の女貂

ファビラスラフイン

世代1996
生国🇫🇷フランス
血統父 ファビュラスダンサー(ノーザンダンサー系) 母父 カルドゥン(フォルティノ系)
成績7戦4勝[4-1-0-2]
主な勝ち鞍秋華賞 ニュージーランドトロフィー
主な産駒ギュスターヴクライ(阪神大賞典)
主な子孫ラッキープリンス(東京ダービー) トレド(プラタナス賞)

すんごい覚えにくい名前。ファビュラスじゃなくてファビラス、ラフィンじゃなくてラフイン。
ラフインはla fouine。fouineは貂(テン)というイタチの仲間のフランス語。でもfabulousは英語。ややこしいな。

そしてこの馬、ややこしいのは馬名だけではなく毛色も。こう見えて芦毛なのである。

ゴルシみたいに白くはなくとも、芦毛馬はクロノジェネシスやヒシミラクルみたいに灰色であることが多い。でもこの馬はどう考えても芦毛には見えない。(引退後はちゃんと白くなってる)

似たような例でエイシンヒカリという馬がいて、ここで紹介することになるほど並外れた成績を残した名馬なのだが、その馬も引退後に脚先から徐々に徐々に灰色になっていった。
だからなんだって話だが、そういう馬もいるよ、というお話である。
(どうでもいいけど引退後のタマモめちゃくちゃ純白でかっこいいから見てほしい)

女帝さんは3コーナーで早々に手応えを無くし、10着と大敗した。後に骨折も判明して長期離脱となる。

初の京都2000mでのGI。オークスと全く異なる強さが求められるコース形態。17番枠発走。完調でも勝ちまでは難しかったかもしれない。

菊花賞

一方、菊は大外17番枠から栄光が輝いた。今まで散々苦渋を飲まされ続けてきたあの馬が火を噴いた。

ダービー馬フサイチコンコルドはまたも調整が上手くいかず、トライアルを回避しオープン戦でまさかの2着からの臨戦。2番人気に落ち着いた。

豊の駆る相棒は京都新聞杯を楽勝しているため、17番枠でも抜けた1番人気となっていた。


スタートはやや出遅れたが、序盤から積極的にインを取りに行き、最初のゴール前の直線でもう内ラチから2番手の位置にいる。こうなるとコーナリングのロスが無くなるし、スタミナを温存させやすい。17番発走でこれは奇跡の位置取り。全力で取りに行った位置だ。

その後も掛かることなく進出し、内から促してラストスパート。思ったよりバラけなかったため外に進路を切り替えているが、その後の伸び脚が爆発的。

一瞬で他馬を置き去りにしたその末脚はまるで──

闇に舞う閃光

ダンスインザダーク

世代1996
血統父 サンデーサイレンス 母 ダンシングキイ 母父 ニジンスキー
半兄 エアダブリン 全姉 ダンスパートナー 全妹 ダンスインザムード
成績8戦5勝[5-2-1-0]
主な勝ち鞍菊花賞 京都新聞杯 弥生賞
主な産駒デルタブルース(🇦🇺メルボルンC) ツルマルボーイ(安田記念) ザッツザプレンティ(菊花賞) スリーロールス(菊花賞)
ダイタクバートラム(阪神大賞典) クラレント(デイリー杯2歳S) ファストタテヤマ(京都新聞杯) マルカフェニックス(阪神カップ) 他多数
母父としての産駒ラブリーデイ(天皇賞秋) ユーキャンスマイル(阪神大賞典) アルバート(ステイヤーズS) ボッケリーニ(目黒記念) ショウリュウムーン(チューリップ賞)
スペルマロン(高知重賞9勝)
主な子孫ステレンボッシュ(桜花賞) レガレイラ(ホープフルS) シャマル(かしわ記念)
ファインルージュ(VM2着) ガイアフォース(セントライト記念)

ロイヤルタッチ、フサイチコンコルドら実力上位2頭との接戦。それを上がり最速で差し切ったのだから強い。
最も強い馬が勝つと言われる菊花賞。もちろんダンスはこれからに期待がかかっていたのだが…

レース翌日に屈腱炎が判明、そのまま引退となった。

当時の馬場であれだけ強烈な上がりで追い上げた負荷は大きかった。だが実力は証明できた。

この世代が空気な理由の5割はダンスが消えたせいだと思う。残りの5割はフサイチコンコルドも脚部不安で消えたこと。
クラシックで1番目立たなかったロイヤルタッチだけが古馬になって善戦できてたという皮肉な展開。

でも未だにダンスは人気が高い。
理由は子供がめっちゃ走ったから。
プロフの通り親族が全て名馬なダンスは即決で種牡馬入り。
当初の期待を裏切らず、🇦🇺最高峰GIメルボルンカップ勝ち馬デルタブルースから、ファンに愛されたツルマルボーイやファストタテヤマ(で家をタテヤマ)まで、幅広く活躍馬を輩出した。
初期サンデーサイレンス直系種牡馬といえばダンスインザダークである。

修羅

ここからは古馬王道路線を見ていこう。
天皇賞(春)でナリタブライアン復活かと思われた矢先に飛び込んできたサクラローレル。
ブライアンは高松宮杯出走後に引退し、勢力図が徐々に変わり始めていた。

宝塚記念

クラシック世代を積極的に出走させるため、この年から一週繰り下げて7月開催となったが、これが失敗でますます有力馬が回避を選択しつつあった春のグランプリ。
この年もサクラローレルが回避。出走した3歳馬もヒシナタリー1頭のみ。それもNHKマイルからのローテなので1週繰下げはほとんど影響がなかった。

そんなわけでマヤノトップガンが1番人気だったのだが、期待の新星がいた。

稲妻三世

カネツクロス

世代1996
血統父 タマモクロス(フォルティノ系) 母父 ラッキーソブリン(ニジンスキー系)
成績28戦9勝[ 9-4-0-15 ]
主な勝ち鞍鳴尾記念(GII) AJCC エプソムC

白い稲妻と呼ばれたシービークロスの末脚を引き継ぐどころか伝説となったタマモクロス。
その後継者がカネツクロスだった。

タマモ同様身体が丈夫でなく、脚がちょっとよろしくなかったためダートで走らせていたカネツクロス。
ようやく芝で走らせられるようになり、初めて挑んだ重賞、エプソムカップ。

稲妻の差し脚とはいかなかったものの、抜け出してきっちり勝利。鞍上は当時ライスシャワーを失い、馬に乗りたくなくなるほど傷心していた的場均騎手。この馬に出会ったことでもう一度競馬を頑張ろうと思えたという。


次走の毎日王冠で思うような走りができず、賞金が足らず天皇賞除外。オープン戦で勝ちの感覚を覚えさせようと出走した大原ステークス。
たまたま的場騎手がおらず、横山典弘が鞍上を務めたのだが、これが転機だった。

元々カネツクロスはよく掛かる馬で、それを抑えながら「差しの競馬」を的場騎手が1年ほどかけて覚えさせてきて、それがようやく実を結び始めた。
しかし柔軟なレーススタイルに定評のある横山は、ここで思い切って前に行かせ、大逃げの形を取らせてた。

レースは勝ったものの、カネツクロスは掛かり癖が再発してしまったのだった。

しかしそこからはGII2連勝、日経賞を2着のあと蹄を痛めたため天皇賞は回避したものの、宝塚も射程圏内だった。

GIで勝負になるのか。正念場の一戦だった。

このレース最大の難点が、相手に「田原成貴とマヤノトップガンがいたこと」だった。

マヤノトップガンの強みはその器用さ。どんなポジションからでも競馬ができる。
操縦の難しい馬ではあるが、才能のある騎手が手綱を取れば、馬の強さは何倍にも増幅する。

マヤノトップガンは「先行策」でレースを進行させた。
道中3番手に位置し、いつでもカネツクロスを潰せる位置取りを取った。
そしてレース終盤、逃げ馬のスタミナが切れかかるころに馬体を併せにいき、完全に潰し切った。

カネツクロスが崩れればあとはマヤノの天下。ダンスパートナーが飛んでこようと、マヤノの末脚の前では差は縮まらない。

勝つべくして勝った。明暗の分かれたレースだった。

これ以降、カネツクロスは一切日の目を見なくなる。

こういう事は今でもよくある。継続騎乗を続けていた馬に突然外国人騎手が乗り、かかり癖が悪化したりとか、乗り替わって逃げ切り勝ちしたらそれ以降全く走らなくなったりとか。特に連勝からの完敗で馬が走る気を失くすケースはかなり多い。馬って難しい。

エリザベス女王杯

96年のエリ女はもう、始まる前から勝者の決まったレースだった。

実は秋華賞でエアグルーヴは骨折し、休養に入っていた。そしてファビラスラフインはジャパンカップへ。本命、ダンスパートナーの対抗馬がいなかった。

95年、エリザベス女王杯が古馬に解放されると知り「だったら来年獲ればいい」とオークス後に海外遠征を断行した白井調教師。このタイトルは落とせない。

馬体を絞って挑んだ女王決定戦。その勝ち方は、弟の菊花賞を彷彿とさせるものだった。

着差だけ見れば辛勝。しかし、中身を見れば圧勝とも言える走り。

ヒシアマゾンを見ながら好位追走。3コーナーあたりから内に進路を切り替え、直線を向いた時にはインの2番手。イン突きを試みるも10番フェアダンス福永がラチ沿いで左ムチを打っているため、進路が無い。仕方なく体勢を立て直し、外からじわりと伸びたところがゴール。

一度勢いを殺されてからの再加速でこれだ。ロスなく運べていれば突き放していただろう。

一方、2着だったはずのヒシアマゾンだったが、直線で後続の進路を妨害してしまい、斜行とみなされ降着処分。
主戦の中舘騎手は次戦から降板に。

女王の座にも、少しずつ世代交代の波が来ていた。

天皇賞(秋)

一方その頃。
秋の盾は四強体制の1戦となった。

宝塚を楽々勝ち切ったマヤノトップガン
オールカマーでマヤノに快勝したサクラローレル
骨折から復活気配のバブルガムフェロー

そしてもう1頭、天才とすら呼ばれた馬がいた。

金色の軌跡

マーベラスサンデー

世代1995
血統父 サンデーサイレンス 母父 ヴァイスリーガル(ノーザンダンサー系)
成績15戦10勝[10-2-1-2]
主な勝ち鞍宝塚記念 京都大賞典 産経大阪杯 チャレンジC 札幌記念(GIII) エプソムC
主な産駒キングジョイ(中山大障害連覇) マーベラスカイザー(中山グランドジャンプ)
シルクフェイマス(GII3勝) ケンホファヴァルト(J・GI2着2回)
ロックハンドスター(岩手三冠)
母父としての産駒レッツゴードンキ(桜花賞)
主な子孫ゴールドハイヤー(現役/総武S)

ウマ娘を見た感じマーベラスが口癖の不思議巨乳という印象しか持てないが、何を隠そう史実は放尿癖とんでもなく強い馬だった。

ビワハイジやハヤヒデ、ナリタブライアンなどが生まれた早田牧場で生を受けたマベさん。
体つきが良くなかったため買われなかったのだが、牧場関係者がJC勝ち馬マーベラスクラウンの馬主を説得し交渉成立。調教師もクラウンを管理していた大沢師に決まる。

2歳の夏、調教で併せ馬をさせると、武邦彦厩舎のオースミタイクーン(後のGII2勝馬)相手に10馬身突き放すとんでもない脚色を見せ、本人の前にいる時以外は子煩悩な武邦パパは「豊に乗せてやってくれ」と大沢師に頼み込んだ。

しかしデビュー前に右膝骨折した上に放牧先で疝痛(腹痛を伴う病気の総称。ストレスからなる。サラブレッドはストレスに弱いためこうなりやすい)をこじらせてしまう。480kgあった体重が390kgにまで激減し、関係者曰く「骨と皮だけだった」と言われるほどげっそりしてしまう。
懸命な治療の甲斐もあって命を取り留めたが、デビューはもちろん大幅に遅れた。

そこからなんとか軌道に乗せ、めでたくデビュー…したと思ったらクラシック直前にまた右膝を骨折した上に左後脚まで骨折し、3歳をまるごと骨折で棒に振った。もう復帰できるのかすら怪しい状況である。

しかしここからがすごかった。
4歳春、復帰2戦目で勝利を挙げると、以降は無敗。ずっと無敗
単勝2倍を切るような人気を毎回背負いながらも、常に僅差で圧勝。 

エプソムカップ、札幌記念、チャレンジカップ、京都大賞典と連勝街道をひた走る。

常に僅差で勝ち続けるその姿をシンザンに重ねる者すらいた。まあ、実際は先頭に立っちゃうと気を抜いて走らなくなるから僅差で勝たせてただけらしいが。

そんな古馬たちと3歳のエースが相見えた天皇賞。
すっかり古株になったナイスネイチャやジェニュイン、カネツクロスも出走し、グランプリさながらの盛り上がりを見せた天皇賞。

少々波乱のスタートでレースは開幕。

サクラローレルは出遅れ後方待機。無理に前には行かせなかった。
逃げ馬はマイペースで逃げ、先行有利の状況。バブルガムフェローが3番手、その斜め後ろでマヤノトップガンが完全マーク。少し離れてマーベラスサンデー、後方にサクラローレルで直線。

最後の直線、あろうことかローレルは外のマーベラスサンデーに進路をブロックされていた。
トップガンもちょっと掛かり気味で苦しいところ。
マーベラスも早めの仕掛けとローレルの外を回したことが災いしてか切れ味で負ける。
唯一ベストな位置取りをし、直線でトップガンに馬体を併せに行ったバブルガムフェロー蛯名正義が勝利。

3歳馬の天皇賞制覇は史上2頭目、58年振りの快挙。

バブル主戦の岡部騎手がタイキブリザードでアメリカ遠征しており、縁があって乗り替わりとなった蛯名正義騎手。21世紀に入りボコスカ勝ちまくるエビショーさんはなんとこれがGI初制覇。ライスシャワーに阻まれた涙(ステージチャンプの天皇賞春)をようやく晴らした。藤沢和雄厩舎もこれが初の八大競走制覇。時代が変わった。

一方、サクラローレル横山典弘は猛烈に叩かれていた。さすがにサクラ軍団調教師の境さんも大激怒。
「これなら俺が乗った方がマシだ!」とまで言われたという。
(元騎手だった境師は名手で、オグリキャップの5代母クインナルビーで天皇賞を制したりなどしている。とはいえまだ若手。息子の武史もジャスティンパレスで同じような事をしてるので、誰もが通る道なのだろう)

次走、有馬記念も引き続き横山典弘が主戦。しかしミスれば次は無い。気を引き締めて挑んだ。

ジャパンカップ

ローレル、マーベラス、トップガンはしばし休養。

天皇賞に猛者が集いすぎてマイルチャンピオンシップ同様スッカスカの布陣となったJC。

1番人気は凱旋門賞馬エリシオ
2番人気は我らがバブルガムフェロー
3番人気はキングジョージ勝ち馬ペンタイア
4番人気は10戦連続連対のシングスピール

5番人気にNHKマイル勝ち馬のタイキフォーチュンが来る時点で勝てそうな日本馬はバブルしかいないという状況がお分かり頂けるだろう。

しかし、このレースは微妙に荒れた。

人気上位がどうも伸びない。

シングスピール、ファビラスラフイン。
予想だにしなかったこの2頭の一騎打ち。

勝ちをもぎとったのは世界最強騎手、ランフランコ・デットーリの御する馬だった。

世界を揺るがす名演

Singspiel

生国/所属🇮🇪アイルランド / 🇬🇧イギリス
世代1995
血統父 インザウイングス(サドラーズウェルズ系) 母 グロリアスソング(ヘイルトゥリーズン系)
半兄 グランドオペラ(メイセイオペラ父) ラーイ(セレナーズソング、ファンタスティックライト父) など
成績20戦9勝[9-8-0-3]
主な勝ち鞍🇬🇧インターナショナルS 🇨🇦インターナショナルS
🇬🇧コロネーションカップ連覇 🇯🇵ジャパンカップ
🇦🇪ドバイワールドカップ
主な産駒🇬🇧ダーレミ(ドバイシーマクラシック) 🇬🇧ソロウ(ドバイターフ) 🇮🇪ムーンバラッド(ドバイワールドカップ)
アサクサデンエン(安田記念) ローエングリン(GII4勝)
他多数
母父としての産駒🇬🇧オールドペルシアン(ドバイシーマクラシック) 🇬🇧トゥーダーンホット(サセックスS)
シンハライト(オークス) ローブティサージュ(阪神JF) シャケトラ(GII3勝) 他多数
主な子孫ロゴタイプ(安田記念) ミトノオー(兵庫CS) エトヴプレ(フィリーズレビュー) ほか

サドラーズウェルズ系の馬はその名前からオペラや歌劇用語から拝借し命名される事が多いのだが、この馬もそう。シングスピールは中世の庶民向け歌劇の事である。(なお、産駒のローエングリンはシングスピールの演目の一種。ローエングリン産駒ロゴタイプはなんも歌劇に関係ないけど生き様にドラマのある名馬)

正直このプロフで一目瞭然だとは思うが、超良血で超万能、種牡馬としても超一流。非の打ち所が無い名馬だ。競馬史シリーズで詳しく紹介する海外馬としては最も成功しているといっても過言ではない馬だ。(兄妹関係で“など”と書かないといけないあたりがもうおかしい)

馬場の軽いジャパンカップを勝ち、激重コロネーションカップを連覇。 これの翌年にはダートのドバイワールドカップをぶっつけで勝っちゃう壊れっぷり。
海外版アグネスデジタル(中長距離専)的な感じだ。

オーナーがアラブの国王、ゴドルフィン経営者であるため、ゴドルフィンが競馬事業から撤退しない限りは血統表から消えない馬になっている。国王的にも思い入れの強い馬だっただろうから当然だ。もちろん引退後は日本に産駒も輸入され、未だに彼の血を引く馬が好走している。ダートでも走ってる。そして現役で日本でもサイアーラインが繋がっている。ロゴタイプ産駒を応援しよう。

レース自体もNHKマイルカップでバンブーピノに調子を狂わされボロ負けした秋華賞馬ファビラスラフインがジャパンカップで2着になる。訳が分からないことだった。

ルドルフやヒシアマゾンのように常識を壊した馬は多々いるが、ファビラスも間違いなくその一つだろう。名前のせいで忘れられがちだけど。

バブルガムフェローは謎の大敗。
故障かと記者が問うと、「壊れたのは馬の頭だよ!!」と岡部騎手は半ギレ。
有馬には出ずにしばらく休養させることになる。

天皇賞の疲れか、はたまた疲れを危惧した厩舎の緩めの仕上げが祟ったか、馬の気持ちの問題か…。凱旋門賞の夢は泡と消えたのだった。

有馬記念

ジャパンカップとマイルCSが薄めだったぶん、かなりの豪華メンバーになった有馬記念。

1番人気から順に
サクラローレル(天皇賞馬)
マヤノトップガン(昨年の有馬覇者)
マーベラスサンデー(天皇賞4着)
ファビラスラフイン(秋華賞馬)
ヒシアマゾン(昨年のジャパンカップ2着)
ロイヤルタッチ(菊花賞2着)
タイキフォーチュン(NHKマイル覇者)
マルカダイシス(GII鳴尾記念勝ち馬)
ホクトベガ(ダート重賞8連勝中)
ジェニュイン(マイルCS勝ち馬)
カネツクロス(GII2勝馬)
ダンスパートナー(エリ女勝ちから中1週でJC→有馬)
エルウェーウイン(朝日杯勝ち馬)
マイネルブリッジ(NHK杯勝ち馬)

全員最低でもGIIは勝ってる上に重賞を3勝以上している猛者が集い、GI馬は驚異の14頭中10頭。

当時の強い馬がバブルガムフェロー以外勢揃い。
ここで勝った馬が最強と言っても過言ではない。

大本命はローレル、トップガン、マーベラスの三頭。「古馬三強」。
負けられない横山典弘、連覇を狙う田原成貴、今度こそ勝ちたい武豊。

雌雄は決した。

勝者、サクラローレル

マヤノトップガンがひたすら掛かって失速する中、最後まで残ったマーベラスサンデーを悠々と交わす、天皇賞が嘘のような大勝利。

1987年、サクラスターオーが涙を飲んだこの舞台で、サクラ軍団初の有馬記念制覇
境調教師への最高の餞となった。

これだけの豪華メンバーで3着に飛んでくるのが最低人気のマイネルブリッジなのだから、競馬は本当にわからない。

ヒシアマゾンはこの5着を期に引退。
翌年も現役続行の予定だったが、屈腱炎を発症した。
ファビラスラフインも屈腱炎で引退。
万全のエアグルーヴとの再戦は叶わなかった。

ブライアンが去り、台頭した古馬三強。
しかし、その天下は予想以上に短かった。
最強たちの時代の足音が、刻一刻と近付いていた。

まとめ

ついにここまで来ました。
次回は1997。伝説のタイキシャトル世代です。いよいよって感じがしますね。

さあ〜て、これからの競馬史は〜?

バブルかエアか/どこまで行っても逃げてやる/外の方から最強の二頭/テイエムは来ないのか/新時代の咆哮/新たなる歴史の扉/くるくるヒシミラクル/大王降臨/日本近代競馬の結晶/間違いなく翔んだ/64年振りの夢/大接戦ドゴーン/夢への旅路/す〜んごい脚/こんな三冠馬は初めてです/つよ〜い!!!/高低差200mの坂/日本の女性は強い/これ程までに強いのか/競馬は時々難しいけど/漢の引き際/三冠すらも通過点/2歳女王が甦る/強く、逞しく、美しく/空の彼方に最後の軌跡/天才の一撃/世界最強の証明
の27本です。

次回もまた見てくださいね〜!

えい、えい、むん!

うふふふふ〜

いや先が長すぎるだろ

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