【競馬】海外競馬って日本とどう違うの?日本から見た世界の競馬

ウマ娘のおかげで、日本ではすごい競馬ブームが起こってます。
が、しかし「海外競馬は全然わからん!どの馬が強いとか知らん!凱旋門賞の何が凄いのかわからん!」って方も多いと思います。

海外競馬を知ることは、日本競馬の魅力を知ることにも繋がります。今よりもっと日本競馬を楽しむため、今回は皆様と「日本競馬と比べて世界はどうなのか」を学んでいきます。よろしくお願いします。

※読み終わるまでに1時間はかかることを覚悟して読み進めてください

競馬の基礎知識

まずは知ってるようで全然知らない基礎知識から。

基本的に競馬は芝とダートの平地競走障害競走が主流です。中でも、世界的に競争が激しいのが皆さんが普段見てる平地競走。

実は競馬って世界交流が盛んなスポーツで、色んな国の馬が一堂に会するレースとかもあります。凱旋門賞が一番有名ですけど、他にもブリーダーズカップドバイワールドカップサウジカップなどなど。

こういう事ができるのは、IFHA(国際競馬統括機関連盟)という組織を各国で連携して運営できてるから。
競馬もスポーツなのでレベルの高い国、低い国が生まれてきますが、そこらへんもうまく管理されてます。国ごとにTier分けして区分してるのです。

世界的にレベルが高い国をパートI、ハイレベルなレースだとギリIの国にも通用するかなって感じの国がパートII、それ以下がパートIII。そして障害競走をやる国を便宜上パートIVと区分しています。

せっかくなので競馬強豪国、パートI国の一覧を掲示します。こちらです。

【パート1国一覧】

  • イギリス
  • アイルランド
  • フランス
  • ドイツ
  • アメリカ
  • カナダ
  • アルゼンチン
  • チリ
  • ブラジル
  • ペルー
  • 日本
  • アラブ首長国連邦(UAE)
  • オーストラリア
  • ニュージーランド
  • 香港
  • 南アフリカ

(※ボタンをクリックで各地域の紹介ページに飛べます。色分けは超適当なので気にしないでください)

予想通りの国と意外な国が混ざってると思います。南アフリカや南米諸国が競馬大国なイメージないし、そもそも競馬やってたんだっていう感じですよね。

変な国の分け方をしているように思えるかもしれませんが、これは地域ごとに分けたのではなく「競馬の文化圏」で分けてます。後で順を追って解説しますね。


パートIの国は、開催する全ての重賞が国際評価の対象となります。(一部を除く)
つまり、日本のGI馬は海外でも向こうのGI馬と同等に評価されるってことです。

パートIIの国は、ごく一部のレベルの高いレースはGI〜GIIIになります
著名な国はサウジアラビアイタリアウルグアイインドなど。サウジはもうパートIと差がないレベルまできてるので、あと数年でIになりそうです。

意外なのはイタリアですが、実は最近降格しました
その昔は凱旋門賞馬トニービンなどがいたのですが、今世紀に入ってからあまりにもレベルの低下が著しく、他国へジョッキーが流出し続けています。
その中の1人が日本にやってきたミルコ・デムーロ。エイシンフラッシュで天皇賞を勝って陛下に最敬礼したあの人です。

パートIIIは格付けが付きません。オーストリア、メキシコ、チェコ、スペインとかがそうです。なんとなく納得。でもトリニダード・トバゴが入ってるのは驚き。

それ以外にも競馬開催国はあるんですが、パート付けできない国は国際競走を開催していないことが多いです。

世界の競馬

さて、ここからがようやく本題です!
まずは下の地図を見てください!

これが世界の競馬場一覧です!
…といっても、パートI〜IIIの国の国際平地重賞を行う競馬場を中心にピックアップしてます。全部じゃないです。
今から地域ごとに分けて世界の競馬を紹介していくので、「ヨーロッパは競馬場が多いんだな〜」とか考えつつ追いながら読むと楽しいかもです。

いきなり説明から入ってもいいんですが、より競馬を理解するために「よく見る勝負服」についてお話します。飛ばし読みOK。

馬産と競馬

エンタメとして競技や娯楽を楽しむなら「○○がすごい!!」で完結しますが、体系的に広い視野から見渡そうとすると、「裏側」が重要になってきます。

ゲーム業界が任天堂とソニーの二大巨頭であるように、マンガ業界がジャンプ系の一強であるように、いかなる業界にも“覇権を握る者”がいます。競馬にも馬産を握ってる有力ブリーダーがいます。

牧場の話をしてもしょうがないので、「この勝負服の馬さえ見ときゃその国の競馬がだいたいわかるっていう大手馬主をいつくか、サクッと紹介していきましょう。

社台グループ
社台RH
サンデーR
キャロットF
シルクR
G1R

(※グループ傘下のグリーンファームは社台系牧場以外から馬を仕入れる事が増えたため、ここでは取り上げません。勝負服はトキノミノルと同じデザインで、主な活躍馬はクィーンスプマンテなど。)

【設立】
1980年〜
【活動範囲】
日本など
【生産拠点】
日本
【代表者】
吉田照哉・吉田勝己・吉田晴哉
【生産牧場】
社台ファーム
ノーザンファーム
追分ファーム
白老ファーム

【活躍馬(社台レースホース)】
ハーツクライ
ステイゴールド
ネオユニヴァース
ゴールドアリュール
サッカーボーイ
ソウルスターリング
スターズオンアース
ダイナガリバー
ギャロップダイナ
タイムパラドックス
ジェニュイン
ダンスインザダーク
バブルガムフェロー

【活躍馬(サンデーレーシング)】
オルフェーヴル
ジェンティルドンナ
グランアレグリア
ブエナビスタ
クロノジェネシス
ヴァーミリアン
ドゥラメンテ
ラッキーライラック
フィエールマン
ドリームジャーニー
シャフリヤール
デルタブルース
ローズキングダム
ルーラーシップ

【活躍馬(キャロットファーム)】
リスグラシュー
シーザリオ
マルシュロレーヌ
エピファネイア
クリソベリル
マリアライト
エフフォーリア
サートゥルナーリア
ハットトリック
ハープスター

【活躍馬(シルクレーシング)】
アーモンドアイ
イクイノックス
インディチャンプ
グローリーヴェイズ
サリオス
ブラストワンピース
ピクシーナイト

【活躍馬(G1レーシング)】
ルヴァンスレーヴ
セリフォス
ペルシアンナイト

まずは社台。日本競馬といったら社台。それくらい密接な関わりがあります。
なので、ウマ娘が社台系馬主の馬を出せないまま2周年まで来た背景には想像を絶する苦難があったのだと思います。良かった…許可出て良かった…

詳しくは基本データの項に書きましたが、左から順にネオユニヴァース、オルフェーヴル、リスグラシュー、アーモンドアイ、セリフォスの馬主です。今の日本競馬を見てたらこの服を見ない日は無いはず。

社台グループには牧場が4つあり、生産馬は社台ファームが社台RH、ノーザンファームが真ん中の3つ、追分ファームがG1R、白老ファームは満遍なくそれぞれのクラブに分配されてます。

日本で馬券を賭ける時「とりあえずノーザンファーム産から」が成立するほどノーザンファームの馬の質は圧倒的です。ノーザンファーム天栄/しがらきという巨大な調教施設(外厩)を独自に構えているので、生産馬はそこで強力なバックアップを受けています。クラブ馬主は使える馬房の数も限られているので、臨戦過程が前哨戦無しぶっつけ本番になりがちです。

社台スタリオンステーションという巨大な種牡馬繋養施設があり、そこに入ると超優秀な繁殖牝馬の子を授かれるため、種牡馬は社台入りしたら安泰と言われています。

そんな社台を支えるのが吉田一族。この方々も個人で馬主をやってるので見ておきましょう。

勝己
照哉
和子
和美
千津

【吉田勝己(ノーザンファーム代表)】
ゴールドドリーム
フラワーパーク
ダンスパートナー
スカーレットブーケ
ポップロック
ジャングルポケット(名義変更)

【吉田照哉(社台ファーム代表)】
デュランダル
ロゴタイプ
スクリーンヒーロー
ギャラントダンサー
デインドリーム(共同所有)
ホワイトマズル
クラウンプライド
サウンズオブアース

【吉田和子(照哉氏の母)】
ベガ
ファビラスラフイン
キストゥヘヴン
ゴールドティアラ

【吉田和美(勝己氏の妻)】
モーリス
キンシャサノキセキ
ジャガーメイル
テスタマッタ
スーニ

【吉田千津(照哉氏の妻)】
イングランディーレ
クイーンズリング
ダンシングプリンス

(敬称略ですみません)

雑に説明すると、日本に初めてホルスタインの乳牛を輸入して北海道開拓に尽力した人の末裔の皆さんです。

テンポイントを生産した吉田牧場、海外でGI馬を生産されてるウィンチェスターファームの吉田直哉さんは親戚。社台ファーム自体は社台牧場から分裂して生まれたとかなんとか。

中央はもちろん、最近は地方競馬でも見かける勝負服です。

ゴドルフィン
世界
日本

【設立】
1994年
【活動範囲】
UAE・ヨーロッパ・アメリカ・オーストラリア・日本など
【生産拠点】
アイルランド・イギリス・フランス・アメリカ・オーストラリア・日本
【代表】
モハメド・ビン・ラシッド・アル・マクトゥーム(シェイク・モハメド)…ドバイの王族でUAE副大統領

【活躍馬(世界)】
ドバイミレニアム
ファンタスティックライト
エレクトロキューショニスト
ハートレイク
デイラミ
カイフタラ
サキー
ドバウィ
サッジャー
パイロ
ホークビル
ベンバトル
サンダースノー
ブルーポイント
ガイヤース
アダイヤー
ハリケーンレーン
ネイティヴトレイル
インスパイラル

【活躍馬(日本)】
フリオーソ
アドマイヤムーン(トレード)
ファインニードル
タワーオブロンドン
ファッショニスタ
ディサイファ
アフリカンゴールド
レモンポップ

欧州とUAEでよく見かける勝負服。
ざっくり言うと、ドバイの王族がとんでもない金賭けて馬主やってるのがゴドルフィンです。

広尾レース(パンサラッサ)の勝負服と似てますが、全くの無関係です。ドバイでバスラットレオンが勝った時にはもうゴドルフィンにしか見えなかった。

事業拡大にあたって、日本ではそれなりの数の牧場を買収してます。シンコーファームと西山牧場が買収されました。シンコウウインディは買収後もここの牧場で当て馬してますし、かつてニシノフラワーやセイウンスカイが生まれた場所でゴドルフィンの馬が育成されてたりします。

後述しますが、ゴドルフィンの活躍がUAE競馬の進退に関わってくるみたいなところがあるので、今後何かが起きない限りはこの勢いは止まらないはずです。

ゴドルフィンの馬は基本的にドバウィ産駒が多いです。関係者がドバウィの父、ドバイミレニアムという馬を溺愛しているからです。絶対にそう。

クールモア
Mrs.John Magnier
Michael Tabor
Derrick Smith

【設立】
1975年
【活動範囲】
ヨーロッパ・アメリカ・オーストラリア・UAEなど
【生産拠点】
アイルランド・アメリカ・オーストラリアなど
【代表】
ジョン・マグナー

【活躍馬】
ガリレオ
モンジュー
ハイシャパラル
ジャイアンツコーズウェイ
ロックオブジブラルタル
ハリケーンラン
ディラントーマス
ハイランドリール
ソーユーシンク
サンダーガルチ
セントマークスバシリカ
マインディング
キャメロット
オーストラリア
サクソンウォリアー
ラヴ
スノーフォール

ゴドルフィンと並ぶ超大手馬主、クールモア。欧州とアメリカでよく見かけます。
馬主としてはクールモア名義ではないため、固定の勝負服が無いのがややこしいですね。基本データに連ねた馬もそれぞれ勝負服が違います。

海外レースを何度か見た方はなんとなく覚えてるはず。早い話、真ん中がウマ娘にも出てきたモンジューの勝負服です。

黒の勝負服のスーザンさんの夫のジョンさんがクールモアの最高責任者で、テイバーさんとスミスさんはスーザンさんと一緒に馬主業やってるブックメーカーの人です。日本で例えるならオッズパークとかそういう会社の人。

で、基本的にこの3人が馬を共同所有するんですが、誰が筆頭馬主になるかによって勝負服が変わるみたいです。最近の欧州ではスミスさんの服の馬が強いイメージがあります。

ちなみに日本人でもクールモアの人達と馬を共同所有した人がおり、有名なのが22年日本ダービーで武豊と濃厚すぎる抱擁を交わしたキーファーズの松島オーナーです。22年凱旋門賞でタイトルホルダーに競りかけてったブルームはドウデュースと同じ勝負服でしたが、これは松島さんが筆頭馬主だったからだと思われます。

そんな感じでクールモアの人達と馬を共同所有してる人もそれなりにいます。特にウェスターバーグは最近クールモアと繋がりを強めています。22年凱旋門賞に出走したルクセンブルクなどが有名ですね。

クールモアは障害レースにも力を入れていて、平地で活躍した馬を容赦無く障害用種牡馬にして繋養しています。ここ最近の馬で有名どころだとインスウープやモーグル、クリスタルオーシャンなどなど。

ジャドモントファーム

【設立】
1977年
【代表】
ハーリド・ビン・アブドゥラ・アル=サウード…サウジの王族
【活動範囲】
ヨーロッパ・アメリカ・UAEなど
【生産拠点】
イギリス・アイルランド・アメリカ

【活躍馬(代表の個人所有馬を含む)】
フランケル
ダンシングブレーヴ
エネイブル
アロゲート
レインボウクエスト
デインヒル
ダンシリ
キングマン
ミッデイ
コマンダーインチーフ
トゥワイスオーヴァー
フリントシャー
サイトシーク
ウォーニング
レイルリンク
ワークフォース

ざっくり言うと、サウジ国王のいとこがとんでもない金賭けて馬主やってたのがジャドモントファームです。

活躍馬を見ると、「競馬にハマった日本人100人に聞いた!知ってる海外の馬ランキングベスト10」に入ってそうな馬が3頭もいますね。(フランケル、エネイブル、ダンシングブレーヴ。たぶん1位はサンデーサイレンス)

中東系の馬主さんはいかにも中東系な馬名を付けがちですが(古くはラムタラやデイラミ、現役馬ならヴァデニやアルハキーム)、ジャドモントの馬は英語馬名が多いです。

オーナーはつい最近亡くなられたのですが、経営は縮小せず継続する方針との事ですので、今後も期待ですね。


この他にも欧州はミエスク、キングマンボのニアルコスファミリー、バーイード、デイジュールのシャドウェルスタッド

アメリカならジャスティファイ、ライフイズグッドのウインスターファーム

日本はコントレイル、キズナのノースヒルズ(前田一族)
ウインマリリン、ウインバリアシオンのウインとマイネルラヴ、ユーバーレーベンのラフィアンとコスモバルクのビッグレッドファームとデアリングタクトのノルマンディーの「岡田一族

生産者以外では個人馬主で三冠馬と三冠牝馬持ちの天才金子真人オーナー

などがありますが、押さえておくのは上の4点くらいでOKです。これから出てくる馬も上の勝負服が多数なので大丈夫なはず。

ここからは各国の競馬の解説です。

【次ページ】日本・アジアの競馬

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