ヨーロッパの競馬
お次は欧州。他地域と全然違うため、その都度細かく解説していきます。
まず最初に解説しておかないといけないのが騎手関係。
1着賞金が億を超えるGIが両手で数え切れるほどしかない欧州では、GIIIの1着賞金が日本のJRA新馬戦のそれより少ないため、騎手が全然稼げません。
そこで出来上がったシステムが「専属契約」。馬主や調教師が騎手と契約するというもの。契約内容にもよりますが、同じレースで2つ騎乗依頼が入っていた場合、専属契約をしている馬の騎乗を優先しなければなりません。欧州遠征した日本馬が1週間前とかに乗り替わり発表されるのは、乗ろうとしてた外国人騎手の優先騎乗馬が急遽出走決定したりするからです。
上位の騎手は契約料だけで莫大な金額が入ってくるので、無理してまで賞金大国日本に稼ぎに来ることは少ないです。例えばW・ビュイック騎手とM・バルザローナ騎手がゴドルフィン、S・パスキエ騎手が二アルコスファミリーと契約していますが、基本日本には来ないし、日本馬に乗ることも多くないですよね。(Cデムさんも契約はあるんですけどあの人は日本と日本にいるお兄ちゃんが大好きなので来ます)
あとはハンデ戦。
馬の強さを勘案して負担重量(斤量)が個別に調整され、誰が勝ってもおかしくないレースになるのがハンデ戦ですが、欧州は平地ハンデ戦を格付けしません。
アメリカやオーストラリアはハンデGIが人気ですし、日本でもGIこそ無いにせよ目黒記念など大きなレースは存在しますが、欧州はGI級のハンデ戦がある(イボアHとか)にも関わらず、GIにはしません。
こういう特殊な事情も気にしつつ、欧州競馬を見ていきましょう。
イギリス
【統括団体】BHA(British Horseracing Authority)
【レース形態】平地(芝・AW)・障害・アラブ種
【競馬場】アスコット・エプソム・ニューマーケット・サンダウン・ヨーク・チェルトナムなど60場
【三冠】牡馬…2000ギニー・ダービーステークス・セントレジャーステークス牝馬…1000ギニー・オークス・セントレジャーステークス
【名物イベント(平地)】ロイヤルアスコット、グロリアスグッドウッド、イボアフェスティバル、ブリティッシュチャンピオンズデー
◆ロイヤルアスコット開催…
アスコットゴールドC G1
プリンスオブウェールズS G1
キングズスタンドS G1
コロネーションS G1
クイーンアンS G1
セントジェームズパレスS G1
プラチナジュビリーS G1
コモンウェルスカップ G1
◇グロリアスグッドウッド開催…
サセックスS G1
ナッソーS G1
グッドウッドカップ G1
◇イボアフェスティバル開催…
イボアH(ハンデ戦)
インターナショナルS G1
ヨークシャーオークス G1
ナンソープS G1
◇ブリティッシュチャンピオンズデー開催…
英チャンピオンS G1
クイーンエリザベス2世S G1
英チャンピオンズフィリーズ&メアズS G1
英チャンピオンズスプリントS G1
英チャンピオンズロングディスタンスC G2
【その他主なGI】キングジョージ6世&クイーンエリザベスS、エクリプスS、コロネーションS、ジュライカップ、ロッキンジS、ファルマスS、スプリントCなど
【名物イベント(障害)】チェルトナムフェスティバル、グランドナショナルミーティング
◆チェルトナムフェスティバル開催…チェルトナムゴールドカップ、ステイヤーズハードル、クイーンマザーチャンピオンチェイス、チャンピオンハードルチャレンジトロフィーなど
◆グランドナショナルミーティング開催…グランドナショナルハンデキャップチェイス、マッシュチェイス、エイントリーハードルなど
イギリスは競馬発祥の地。エプソム競馬場のダービーステークス(エプソムダービー)は全てのホースマンの憧れとなっています。
動画はデビュー戦以外無敗、1年でGIを6勝し引退したアイルランドの名馬シーザスターズのダービー。
海外(特にヨーロッパ)は他国のダービーやオークスにも普通に出ますし、スノーフォール(ディープの子)は3ヶ国のオークスを制覇してます。
今回紹介する中で原点にして最も異質な地域がヨーロッパです。芝がとにかくガラパゴス馬場なんです。
日本含め一般的な競馬場は整地された地面のうえに芝コースを作ってるんですが、欧州の一部の競馬場は自然をそのまんまコースにしてるので、起伏(アンジュレーション)は激しいし水はけが悪い。道中の馬群を追ってる車の揺れ具合でそれが分かって頂けるかと思います。
コースもカオスな形をしてる所が多いため、初体験の日本馬は苦戦を強いられがちです。
簡単に言えば、日本やその他地域の競馬はスピード、欧州はスタミナとパワーが最も重要です。
ちなみにエプソム競馬場のコースはこちら。
常識ごと壊していくのが欧州の競馬場です。
イギリスはなんと5日間に渡って重賞を開催しまくる「ロイヤルアスコット」なる夏の大イベントを開催しています。
その中の3日目の目玉が「ゴールドカップ」。距離にして約4014m。
動画は名馬ストラディヴァリウスの圧勝。ちなみにこれでGC3勝目。生粋のステイヤーです。
欧州は長距離軽視の流れに入っていると言われており、英以外は三冠の最終戦セントレジャー(菊花賞)の出走権を古馬に解放するなど、GIのレートを保つのに必死の状態です。
ですが、超長距離路線においてはある種“棲み分け”がなされているという感じで、軽視とは少し違うのかなと思ったりもします。
欧州4国を行ったり来たりすれば1600mのGIだけ、2000mのGIだけ出て生涯を終えられるほど数が揃っているので、必然的に2800m↑のGIは出なくても良くなり、純粋なステイヤーしか出なくなった結果が今なわけで。
ストラディヴァリウスが去った後も良質なステイヤーは続々と登場しているし、そういう馬は障害用種牡馬になれたりもするので、さほど悲観はしなくてもよさそう。
…それもこれも長距離GIの賞金を上げたら終わる話なんですけど、厳しいですね。
日本は全体的に、アジアやオーストラリアはGIの賞金面がめちゃんこ高いので騎手も儲かりますが、ヨーロッパはとにかく賞金が渋いです。日本円計算で1着賞金2000万円とかのGIもちらほら。ドイツに至っては1400万とかも。
日本は馬券の売上がそのまま胴元に入るのですが、欧州はブックメーカー(外部サイト)が9割以上持ってくので、運営は毎年資金難のはず。
そんなロイヤルアスコットのレースをステップにして1ヶ月後に開催される英国最高峰古馬GIが、その名もキングジョージ6世&クイーンエリザベスステークス(長い)です。
上のキングジョージは世界最強の名牝エネイブルが今は障害競走用種牡馬になってるクリスタルオーシャンとの叩き合いを制した回です。6着は日本のシュヴァルグラン。
エネイブルは後にGI11勝かつ凱旋門賞を2勝、キングジョージを3勝する怪物。よく見ると↑も鞭を1発しか入れず勝利してます。強い。
欧州競馬は斤量(負担重量)も狂ってて、日本やアメリカ、アジア競馬がだいたい55〜58kgくらいのところを、欧州だけは58〜62kg背負わせてきます。ただ60kg背負うだけじゃなく馬場も特殊なので、初遠征では苦戦を強いられます。
ちなみに↑のキングジョージは牡馬が60kg、エネイブルは59kg背負ってますし、なぜか22年から牡馬は61kg背負わされる事になりました。他地域の馬勝たせる気ないでしょこれ。
レース開催地アスコット競馬場の形はこちら。
同じくイギリスのグッドウッド、ニューマーケット競馬場の形も狂ってるので興味ある方は調べてみてください。
イギリスは馬産が盛んなため名馬が大量にいます。中でも21世紀最強馬と呼ばれているのが14戦無敗のフランケルです。動画はロイヤルアスコット1日目のクイーンアンS。
2着のエクセレブレーションがGIを3勝してて、重賞で負けたのが6回のみ、うち5回フランケルに負けてるって言えば強さが伝わるかと思います。
そしてこれがフランケルの再来とされたバーイード。イボアフェスティバル開催の英インターナショナルS。
力関係を整理しましょう。UAE競馬の紹介でドバイシーマの動画を見たと思います。ラヴズオンリーユー、クロノジェネシスの日本馬2頭をかわして勝利したのがミシュリフという馬でした。
で、今回そのミシュリフを簡単に突き放したのがバーイード。さっき紹介したダービー馬シーザスターズの子って聞くと納得もできますが、同じくさっき紹介したストラディヴァリウスもシーザスターズ産駒なんですよね。産駒の傾向がわけ分からなすぎる。
バーイードは重い馬場に弱かったらしく、最後の一戦のみ4着に敗れたものの、10戦無敗で連勝を続けた強さは消えません。今なお最強馬の名をほしいままにしています。
(ちなみにバーイードの馬主シャドウェルファームのオーナーもUAEの王族兼政治家でした。どこまでもオイルマネー。)
他にもだいたいの欧州馬の父になった大種牡馬ガリレオやキングジョージを11馬身差で勝ったハービンジャーなどがいますが長くなるので割愛。
ヨーロッパはダートレースは行われないですが、障害競走が盛んです。特にアイルランドとイギリスは独自に障害用の委員会作るくらいの規模があります。
もちろん人気も相応なものがあります。日本の競馬ファンが8:2で平地ファンだったとしたら、英国は2:8で障害ファンです。
(世界の)合田直弘さんのnetkeibaコラム「世界の競馬」の『英国一般ファンの人気が高いレースとは!?』の回では、2018年の英国馬券売上のベスト20レースのうち16レースが障害競走だったとされており、日本との文化(?)の違いを実感します。
有名なレースはグランドナショナル。
ほぼ全ての国の障害GIがこれを基に作られてます。
約6900mに及ぶ死闘。落馬、競走中止が相次ぎます。
大人気レースながら英国は「障害競走においてGIは定量戦、GIIはハンデの幅を抑えたリミテッドハンデ、普通のハンデ戦はGIII」という決まりを設けたため、GI並のレートを有しながらもGIIIとして開催されてます。世界一ハイレベルなGIIIです。
日本の障害競走がトライアスロンなら、こっちはマラソンを見てる感覚ですね。
もう1つの目玉がチェルトナムフェスティバル。少なくともイギリスにおいては凱旋門賞くらいネームバリューのある競馬の祭典です。
↑は無敗16連勝を達成した名牝ハニーサックルのチャンピオンハードル。これが15勝目。ハードルの最高峰GI。チェイスとは障害の種類が違いますね。
むしろこれは日本が特殊なんですが、海外の障害競走は「ハードル」と「(スティープル)チェイス」の2種類に分かれています。日本でやってるのはチェイスです。
そしてこれがメインレース、チェルトナムゴールドカップ。最後の圧勝っぷりは必見です。
ここまで3レース取り上げましたが、鞍上は全て女性のレイチェルブラックモア騎手。女性騎手として初めてグランドナショナルを制覇した人物であり、私が知る中で世界で最も上手い女性騎手の一人です。(なんか海外っぽい言い回しになってしまった)
アイルランド
【統括団体】HRI(Horse Racing Ireland)
【レース形態】平地(芝・AW)・障害
【競馬場】カラ・レパーズタウン・パンチェスタウンなど36場
【三冠】牡…愛2000ギニー、愛ダービー、愛セントレジャー
牝…愛1000ギニー、愛オークス、愛セントレジャー
【名物イベント】アイリッシュチャンピオンズウィークエンド、パンチェスタウンフェスティバル
◆アイリッシュチャンピオンズウィークエンド開催…アイリッシュチャンピオンステークス、愛メイトロンS、モイグレアスタッドS、ヴィンセントオブライエンS、愛セントレジャー、フライングファイブS
◆パンチェスタウンフェスティバル開催…パンチェスタウンチャンピオンノービスハードル
パンチェスタウンチャンピオンチェイス
パンチェスタウンチャンピオンノービスチェイス
パンチェスタウンゴールドカップ
ワールドシリーズハードル
ライアンエアーノービスチェイス
パンチェスタウンチャンピオンハードル アイルランドチャンピオンノービスハードル
チャンピオン4歳ハードル
アイリッシュデイリーミラーノービスハードル
メアズチャンピオンハードル
基本はイギリスと同じですが、先述の大手オーナーブリーダー達がここに拠点を構えているため、馬産地としてはイギリスより影響力が大きいです。
凱旋門賞馬モンジューをはじめ、ハリケーンランやゴルディコヴァなど、時代を作った名馬の3頭に1頭はアイルランド産です。(個人の主観)
欧州の名馬をだいたい管理してるクールモアのお抱え調教師、エイダン・オブライエンがここ所属なこともあり、欧州競馬の中心地的な立ち位置になっています。
1番格の高い古馬GIは夏の終わりにヨーク競馬場で行われるアイリッシュチャンピオンS。
海外はレース直前に馬場が悪いからスクラッチ(出走取消)とか、強い馬が出たら回避とかがザラにあります。
21年年度代表馬セントマークスバシリカと名牝タルナワ、日本で種牡馬入りしたポエティックフレアの叩き合い。この3頭の実力が抜けすぎてて回避馬多数のGIとなりました。
この国のレースは欧州の中で仏英に次いでレベルが高く、ダービーやオークスにも後の名馬達が集います。
ダービー&オークス開催地のカラ競馬場のコースがこちらです。
障害競走がとにかく多いです。障害発祥の地と言われるだけあり、アイリッシュグランドナショナルなど大レースが多数開催されています。
土地の割に競馬場がかなり多く、その競馬場の9割が障害コースを備えてます。障害大国です。
フランス
【統括団体】フランスギャロ(France Galop)/シュヴァルフランセ(Cheval Français)
【レース形態】平地(芝)・障害・アラブ種・速歩競走(繋駕・騎乗)
【競馬場】ロンシャン・シャンティイサンクルー・ヴァンセンヌなど240場
【三冠】牡…仏2000ギニー、仏ダービー、ロワイヤルオーク賞(2005年からはパリ大賞典)
牝…仏1000ギニー、仏オークス(ディアヌ賞)、ヴェルメイユ賞
【名物イベント】凱旋門賞ウィークエンド
◆凱旋門賞ウィークエンド開催…ロワイヤリュー賞、カドラン賞、フォレ賞、アベイドロンシャン賞、オペラ賞、マルセルブサック賞、ジャンリュックラガルデール賞、凱旋門賞
【その他主なGI】ジャックルマロワ賞、サンクルー大賞、イスパーン賞、モーリスドゲスト賞、ガネー賞
【主な障害GI】パリ大障害、ラエ・ジュスラン賞
アメリカと並び、世界の競馬の中心地です。色んな種類のレースやりすぎて情報が渋滞してます。
まずフランスといえば凱旋門賞。
2日に分けて8つのGIが開催される「凱旋門賞ウィークエンド」のメインレースです。
世界の中で最も有名なレースの1つで、各国を代表するレベルのGI馬だけが集まって世界一を競います。
最後の直線でのんびり外を走ってる白いのがゴルシ、頑張って伸びてる馬がハープスターです。勝てないの分かってて手を抜いてますねこれは…
勝ち馬は前年に日本の三冠馬オルフェーヴルを破り、この年に連覇を達成した名牝、トレヴ。
前述のエネイブルと並び、3歳時は最強牝馬と呼ばれていた馬です。
欧州は凱旋門賞だけ抜けて賞金が高いです。GI6勝の凱旋門賞馬アルピニスタは生涯獲得賞金が5億ちょっとなのですが、うち4億が凱旋門賞によるものです。あまりにも歪。
凱旋門賞は“Prix de l’Arc de Triomphe”と書くのですが、YouTubeで検索すると公式動画は必ず前に“Quatar”が付きます。これは以前からカタールの競馬機関がスポンサーとなって賞金を拠出してるからです。ここでもオイルマネー。
ちなみにブックメーカーを除いたフランス国内の凱旋門賞売上より日本での方が10億円以上多く売れてるので、欧州競馬のヤバさが伝わります。
ここまで賞金を引き上げ、世界各国から強い馬を集めた上で、晴れてたらレース前めっちゃ水撒きます。地元馬以外に勝たせる気無いです。最初から挑む気のないアメリカのホースマンは賢明かもしれない。
日本馬が凱旋門賞を勝つのも時間の問題と言われて四半世紀。1度も勝ててません。果たして勝てる日は来るのでしょうか。
フランス競馬では、ディアヌ賞(オークス)が特殊です。国内では凱旋門賞の次に盛り上がるレースらしく、シャネルがスポンサーになってファッションショーが開かれたり、とにかく特別な日になるんだとか。
動画の勝ち馬は無敗のままディアヌ賞を制覇し、後に無敗のまま凱旋門賞を制し引退するザルカヴァ。これも中東やアジア由来の馬名。馬主は政治家です。
障害競走もパリ大障害とかがあって熱いんですが、フランスの特色は他にもあります。
繋駕速歩競走です。ご覧下さい。
G1アメリカ賞の映像です。こんなレースがあるんです。ちなみに馬の品種はサラブレッドじゃなくてスタンダードブレッドやトロッターという、速歩が上手い種が使われるそうです。人間の速歩と同じで、いずれかの脚が地面に付いてないと反則になります。
現地においては凱旋門賞と同じくらい人気を博している大レースなんだとか。
そしてこちらが騎乗速歩競走。
G1コルニュリエ賞。要するに競歩です。
バティー!!にしか聞こえませんがpartie(勝負)って言ってるみたいです。盛り上がってますね。スタート前の謎BGMもいい味出してます。
実はこの形態のレースは日本でも開催されていたことがあり、最後の開催は1972年の益田競馬場(島根県)だったらしいです。YouTubeで「繋駕速歩競走 日本」で調べると中央でやってた時の映像が出てきます。
ドイツ
【統括団体】Deutscher Galopp
【レース形態】平地(芝)・障害・速歩
【競馬場】ケルン、ハンブルク、バーデンバーデン、デュッセルドルフ、ホッペガルテンなど
【三冠】牡…独2000ギニー(GII)、独ダービー、独セントレジャー(GIII)
牝…独1000ギニー(GII)、独オークス、独セントレジャー
【その他GI】バーデン大賞、ベルリン大賞、ダルマイヤー大賞、バイエルン大賞、オイロパ賞
ドイツは欧州の中でも特殊な国です。「ドイツ血統」という特殊な血統地図を作っているからです。
血統には流行り廃りがあり、例えば日本ならサンデーサイレンスやディープインパクト、欧州ならサドラーズウェルズやガリレオの血が重宝されていました。でも流行りすぎるとその馬の血が濃い牝馬しか残らず、やがて飽和します。(難しい話ですまない)
その点ドイツは世界のトレンドに流されない全く別のラインで馬を作ってるので、飽和の心配もなく、ドイツ国内だけで競馬が完結してます。ドイツ血統の馬は父がケーニヒスシュトゥールやモンズーン、アドラーフルークなど、普通に競馬見てたらまず聞かないような馬ばかりです。
日本はサンデーサイレンス旋風が起こりすぎててやばかったので、血が偏らないよう定期的にドイツ含む国外の血が入った馬を輸入してます。
その中の一つがエイシンフラッシュの母ムーンレディやシュネルマイスターなんですけど…
こちら、フラッシュの血統表です。確かに母親が(独)って書いてますね。
そこから一番下の母方のラインをじーっと見て頂きたいんですが…みんな馬名が頭文字Mで始まってませんか?
これもドイツ血統の特徴。「牝系の頭文字に則って馬名を付ける」という謎ルールが先祖代々残ってるんですね。独自性があって面白いです。
シュネルマイスターに関しては「S」の家系だったから馬名もこうなりました。
日本で例えるなら、フロリースカップ(我らがシラオキ様のご先祖)の子孫が全部Fから始まる名前になる、みたいなことですね。ウオッカもフオッカ、レイパパレもフェイパパレってことですね(?)
ドイツはレースレベルの方は仏英愛には負けるものの、欧州4番手として5年に1度くらいのペースで歴史的名馬が生まれる国という印象です。
動画はドイツの名牝デインドリームが制覇した古馬GIバーデン大賞。この後に凱旋門賞を5馬身差圧勝してます。(でもデインドリームの母はアイルランドの馬なのでDの意志はさほど受け継がれてません)
翌年のバーデン大賞を連覇して引退するのですが、その時の4着馬が後にキングジョージを5馬身差レコード勝ちするノヴェリスト。こっちは先祖を辿ればしっかりNです。
最近の凱旋門賞は馬場がかなり重く、重厚なドイツ血統の入った馬、ドイツにゆかりのある馬が大活躍しています。22年もドイツでGIを連勝したアルピニスタが勝ち、3着にはドイツ馬トルカータータッソが入着。より勢力を増してきています。
チェコ
チェコはパートIII国で唯一障害競走を開催しており、むしろ障害に力を入れている国です。
ヴェルカパルドゥビツカは世界一ハードな障害競走として知られ、クロスカントリー形式のレースとなってます。例年完走できる馬の方が少ないとか。
(興味持って色々調べようとすると無限に予後不良映像が出てくるのでグロ注意)
スイス
永世中立国の印象が強いスイスですが、競馬においてはかなり前衛的なことをやってます。
その名もホワイトターフ。
開催地はサンモリッツ競馬場とされてるんですが、サンモリッツって湖なんですよね。
つまりどういうことかというと、「凍結したサンモリッツ湖畔の氷上に圧縮雪を敷き詰めて無理やりコースを作ってる」んです。なんで思い付くんだそんなの。
そして、開催されてるレースがこちらです。
何でもありなのか…?
2700mで、キタサンの天皇賞(春)の走破タイムと約1秒差です。すごいのかすごくないのかわからん。
もちろん普通のレースや繋駕速歩競走も行われてるんですが、これのインパクトが大きすぎてもう…
当たり前ですがホワイトターフは国際グレード付きませんし、スイスもパートIII国です。
でもパートIIIとしては破格の1ヶ月で来場者3万人を毎年記録してます。見に行きたい人は多そうですよね。
めちゃくちゃ寒いだろうけど。
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