【ウマ娘】ウマ娘になった競走馬の先祖について解説してみた【競馬】

解説ッ!!!!!!

ということで早速タイトル詐欺(微)のお詫びから入ります。
この記事は競走馬の親を遡って、ウマ娘を交えつつ競馬の血統を解説する記事になってます。
純粋に「キングヘイローの父親はすごい強かったんだよ〜」って語るやつじゃないです。一応語るけど。

netkeibaで好きな馬の血統表を見た時に、「あの記事で見たやつだ!」ってなるための解説記事だと思っていただければOKです。

血統も深掘りすると奥が深いです。ウマ娘きっかけで競馬にハマった方は、この記事で血統にもハマってみてください。

↑内容的にはこれを補完する続編的な感じになってると思います。暇なら読んでもろて。

今回紹介するのは、種牡馬としてすごい成績を残した馬と、ウマ娘の某育成シナリオで三女神が言及したウマ娘の元ネタに限ります。その他はまたの機会に。

基礎知識

血統は深く学ぶと生物学になります。
難しいので簡単に解説しますね。

今から約6600万年前、地球は恐竜たちの王国でした。
しかしアメリカに巨大隕石が衝突、なんやかんやあって空気が冷え込み氷河期が訪れると、気温変化に対応できない大型の動物は死に絶え、小型動物の楽園になりました。

そんな風に、環境に適応できない種は絶滅していきます。

で、その後色々あって馬が生まれ、人間に飼われなんやかんやしてるうちにサラブレッドが生まれました。
それに関してはこれにちょこっと書いてます。

「環境に適応できない種は絶滅する」と書きましたが、これは競馬も同じです。
国ごとに運営が異なるため、芝やダートの手入れや種類も違ってきます。環境がまるっきり違います。
それに対応できないと勝てないため、馬が環境に適応していくのではなく、人間側が環境に合った血統や馬をあてがっていきます。さながら神様です。

なので、国ごとに「主流血統」が存在します。
父の血がだいたい似たような血統になりがちです。

日本ならディープインパクト(サンデーサイレンス系)やロードカナロア(キングマンボ系)
アメリカならイントゥミスチーフ(ストームキャット系)タピット(シアトルスルー系)
ヨーロッパならガリレオ(サドラーズウェルズ系)やドバウィ(ミスタープロスペクター系)
オセアニアならスニッツェル(ダンジグ系)

というふうに、流行りの種牡馬、流行りの血みたいなのがあります。
(母方の血統は牧場が育てていくものなので、同じ国内でもメジロとサクラと社台では全く違います。ファミリーラインや○号族まで話し出すとwikiの文量になるのでまたの機会に)

これを知ってると、例えばサンデーサイレンスの血が入ってたら日本馬っぽいな〜とか、父系がダンジグ系のよく知らない馬だったら香港かオーストラリアっぽいな〜とか、サドラーズウェルズ直系なら欧州の馬だな〜ってわかります。

大半の人が興味ねーと思ったでしょう。
本題入ります。

本題

早速紹介。独断と偏見による「名前をよく見かける順(≒すごい順)」で紹介していきます。
紹介する馬は全て20世紀〜21世紀の馬です。

さっき上でリンク貼った2個目の記事にも書いてますが、ほとんどの馬は父系(血統表の1番上。父の父の父の…)を遡るとEclipseに辿り着きます。唯一抜きん出て並ぶ者無し。

○○系というのはその馬の直系(父を辿ると○○)の馬たちのことです。まずはノーザンダンサー系を紹介していきます。

ノーザンダンサー系

世界の競馬の主流血統。ここを押さえれば世界競馬の半分は理解できる。はず。

ウマ娘血統図(ノーザンダンサー系)

以下に記したのがウマ娘の父方の血統図。ウマ娘周辺だけをまとめたので見やすいけど変な感じになってると思います。

こうして見ると全員家族みたいに見えますが、母方が全然違う馬もいるのでそうでもないです。

☆の馬を中心に紹介していきます。

※太字はウマ娘に登場する馬
☆はこの記事で紹介する馬
()付きの馬はウマ娘の各媒体で偽名で登場した馬

ファラリス ↑至ダーレーアラビアン

ファロス

ネアルコ

ニアークティック

★ノーザンダンサー
├ヴァイスリーガル
│└ゴールドシチー
├☆ニジンスキー
│├グリーンダンサー
││└ノーアテンション
││ └スーパークリーク
│├☆マルゼンスキー
││├サクラチヨノオー
││└レオダーバン(リオナタール)
│└ヤマニンスキー
│ └ヤエノムテキ
├ナイスダンサー
│└ナイスネイチャ
├☆ノーザンテースト→ダイナカール
│├☆アンバーシャダイ
││├カミノクレッセ(カニヤぺラシオン)
││└メジロライアンメジロドーベル
││ └メジロブライト
│├アスワン
││└メジロアルダン
│└マチカネタンホイザ
├ヴァイスリージェント
│└デピュティミニスター
│ └フレンチデピュティ
│  └☆クロフネ→カレンチャン
├リファール
│├リィフォー
││ └ニッポーテイオー(アキツテイオー)→ハルウララ
│├モガミ→メジロラモーヌ
││├シリウスシンボリ
││└レガシーワールド(レリックアース)
│├ライラリッジ
││└ツインターボ
│└☆ダンシングブレーヴ
│ ├コマンダーインチーフ
│ │└ラスカルスズカ
│ └キングヘイローカワカミプリンセス
├トップサイダー
│└デュラブ
│ └シンコウウインディ
├コリムスキー
│└メリーナイス(メリービューティー)
├トライマイベスト
│└ラストタイクーン
│ ├マルジュ
│ │└サトノクラウン
│ └ビッグストーン
│  └メイショウドトウ
├☆ダンジグ
││└デインヒル→ファインモーション
│└ビコーペガサス
├ヌレイエフ
│└シアトリカル→ヒシアマゾン
├ストームバード
│├☆ストームキャット
│└サマースコール
│ └カリズマティック
│  └ワンダーアキュート
└☆サドラーズウェルズ
 ├モンジュー
 └オペラハウス
  └テイエムオペラオー

ノーザンダンサー(1961)

生国/所属国カナダ / カナダ→アメリカ
ニアークティック(ネアルコ系)
産駒(ウマ娘?)ノーザンテースト
産駒(非ウマ娘)ニジンスキー、サドラーズウェルズ、ダンジグ、リファール、ヌレイエフ、ストームバード
主な勝ち鞍米クラシック二冠、クイーンズプレート(加ダービー)
表彰アメリカ、カナダ競馬殿堂入り

ウマ娘になった競走馬の親というより先祖です。
だいたいの競走馬の先祖。分かりやすく言うとゼウスみたいなもんです。(たぶん言い過ぎ)

見た目はちっちゃくて見栄えは良くなかったんですが、走らせてみたら18戦14勝、全戦3着以内で引退。

種牡馬にしてみたら名馬しか産まず、「ノーザンダンサーの血は同量の金と同じくらい価値がある」って言われてた事もあるとか。

以下の馬は全てノーザンダンサーの直系子孫です。

ニジンスキー(1967)

生国/所属国カナダ / アイルランド
ノーザンダンサー
主な産駒ウマ娘…マルゼンスキー
非ウマ娘…カーリアン、ラムタラ、ロイヤルアカデミー、ファーディナンド
主な直系子孫(日本)ウマ娘…スーパークリーク、ヤエノムテキ、サクラチヨノオー
非ウマ娘…ホクトベガ、エイシンプレストン、シンコウラブリイ、ビワハイジ、フサイチコンコルド、メイセイオペラ
主な直系子孫(海外)ブラックキャビア、デインドリーム、ブリッシュラック、ノーザリー、マリエンバード、ジェネラス、スワーヴダンサー、スラマニ、カラジ
主な勝ち鞍クラシック無敗三冠、KGVI&QES
表彰イギリス、カナダ競馬殿堂入り

ノーザンダンサーの子の中で最も偉大な馬なので、アポロンみたいなもんですね。
名前見てもしかして…と思われた方。正解です。マルゼンスキーの父です。(馬名はバレエダンサーの名前から取ったらしい)
父と異なり均整の取れたサラブレッドらしい馬体をしていたこの馬は、イギリスで4頭しかいない無敗三冠馬になり、13戦11勝2着2回と圧倒的な戦績で引退しました。伝説の名馬です。

ただ、この馬がセントレジャー(菊花賞の元ネタ)で勝った後、反動で体重減らして凱旋門賞で初敗北してから、三冠制覇に挑む馬がめちゃくちゃ減りました。悲しい。
クラシック三冠全制覇目指す強豪国とかもう日本とアメリカくらいしかありません。

この馬も種牡馬になったらすごくて、特に日本はニジンスキーがいなかったら大変なことになってました。↑の血統図に載ってる馬だけじゃなくて、日本の名馬は高確率でニジンスキーの血を引いてます。

それはだいたいこの馬の影響。

マルゼンスキー(1974)

生国/所属国日本(アメリカからの持込馬)
ニジンスキー
主な産駒ウマ娘…サクラチヨノオー
非ウマ娘…スズカコバン、レオダーバン、カリブソング
母父としての産駒スペシャルウィーク、ライスシャワー、メジロブライト、ウイニングチケット
主な勝ち鞍朝日杯
表彰日本競馬殿堂入り(顕彰馬)

冒頭で「ウマ娘になった馬はなるべく紹介避けるぞー」みたいなスタンスをとりましたが、マルゼンはすごいので紹介します。

父ニジンスキーの馬体をPhotoshopで加工したんかってくらい完成されたルックスで生まれたマルゼンは、正直日本で走るのが勿体ないくらい強く、脚部不安を抱えながらも無敗で引退しました。

当時の日本の制約でダービーが走れなかったり、散々な競走生活を送ったぶん、種牡馬として活躍しまくり…父としてはサクラチヨノオースズカコバン、母の父としてはスペシャルウィークライスシャワーメジロブライトウイニングチケットなどを輩出。
スペシャルウィークも種牡馬としてすんごい活躍をしたので、エフフォーリア&デアリングタクトはマルゼンスキーがいなかったら生まれてないことになります。

ただ、あまりにも活躍しすぎてライバルのヒシスピード含め現役時代に戦った馬がみんな種牡馬として評価されずに消えていきました。世知辛い。

ノーザンテースト(1971)

                           ねこです↑
生国/所属国カナダ / フランス
ノーザンダンサー
主な産駒ウマ娘…マチカネタンホイザ
非ウマ娘…ダイナガリバー、アンバーシャダイ、ギャロップダイナ、ダイナカール(エアグルーヴ母)、ダイナアクトレス
主な直系子孫ウマ娘…メジロライアン、メジロドーベル、メジロブライト、メジロアルダン
非ウマ娘…レインボーアンバー、カミノクレッセ
母父としての産駒ウマ娘…サクラバクシンオー、エアグルーヴ、ダイワスカーレット、トーセンジョーダン、イクノディクタス
非ウマ娘…サッカーボーイ、フラワーパーク、ファストフレンド、デュランダル、ダイワメジャー、カンパニー、アグネスゴールド
主な勝ち鞍フォレ賞(仏G1)

マチカネタンホイザの父メジロアルダンの祖父であり、バクシンオー、エアグルーヴ、ダスカ、ジョーダンほか多くのウマ娘化競走馬の先祖。
そして、秋川理事長の元ネタです。
(明言はされてないけどほぼ確定です)

こんな記事を見てくれてる方はなんとなく「社台」って言葉に聞き覚えがあるはず。日本の競馬界を牽引する一大グループなんですが、社台が力を付けはじめたのはノーザンテーストが成功したからなのです。

ノーザンダンサーは上で言った通り凄い馬で、ウマ娘で言うとスピードのステータスがUGクラスでした。
ノーザンの子も優秀な子が多く価値が暴騰していたため、資金力に乏しい日本では、ただでは国内にノーザンの血を広めることはできませんでした。

なので日本に持ってくることができたのは、競走馬としてデビューする前に社台グループが競り落としたノーザンテーストと、個人馬主の橋本さんが人生を賭けて無理やり(母を)競り落としたマルゼンスキーくらいでした。

テーストはダンサーに比べると産駒はパッとしませんでしたが、テーストを父に持つ牝馬が優秀な馬を生み出しまくったため、大成功。
国内の競走馬のスピードを母方の血から底上げし、日本競馬のレベル向上に貢献しました。

ウマ娘の秋川理事長が資金を厭わず即決で色々やっちゃう決断力や、たった1代で大成功を収めたり、やたらとマチタンを気にかけたりしてるところはここから来てるんでしょう。

アンバーシャダイ(1977)

生国/所属国日本
ノーザンテースト
主な産駒ウマ娘…メジロライアン
非ウマ娘…カミノクレッセ、レインボーアンバー
主な直系子孫ウマ娘…メジロライアン、メジロドーベル、メジロブライト、メジロアルダン
非ウマ娘…レインボーアンバー、カミノクレッセ
主な勝ち鞍天皇賞(春)、有馬記念

「シャダイ」冠名の通り、社台グループの馬です。ノーザンテースト産駒の活躍馬は8割型社台グループの馬です。

社台は80年代ごろまではシャダイとダイナという冠名を使ってましたが、90年代になってジェニュインやダンスインザダークみたいなかっこいい馬名を開拓しだします。

80年代の社台グループは「ステイヤーしか勝たん!」精神でスタミナ血統を重用していました。この馬もその流れで生まれ、天皇賞と有馬を制して当時の歴代最高賞金獲得馬になりました。
まさかそんな馬から宝塚記念勝ち馬と安田記念2着馬が生まれようとは。

日本で最も長続きしたノーザンダンサーのラインがここでした。およそ20年続きました。

ダンジグ(1977)

生国/所属国アメリカ
ノーザンダンサー
主な産駒ウマ娘…ビコーペガサス
非ウマ娘…デイジュール、ダンススマートリー、デインヒル、ラングフール、アグネスワールド
主な直系子孫ウマ娘…ファインモーション
非ウマ娘…シーザスターズ、バーイード、ゴルディコヴァ、サンライン、ピルサドスキー、シンダー、ゴールデンホーン、キングマン、パレスピア、ウィジャボード、チーフベアハート、アジュディミツオー、シュネルマイスター他多数
母父としての産駒ウマ娘…グラスワンダー、ニシノフラワー
非ウマ娘…フサイチペガサス、ワンダーアゲイン、ビリーヴ、シンボリインディ

お次はアメリカ。Danzigはドイツの地名でダンツィヒと読むのですが、アメリカで走ってたため英語読みでダンジグと呼ばれてました。ここではダンジグとしておきます。

ダンジグは父ノーザンダンサーに似て小柄で、マルゼンスキー同様脚に爆弾を抱えていました。
走らせたらめちゃくちゃ強かったんで手術したりトレーニングを工夫したんですが、獣医が「次走ったらこの馬死ぬど」と言ったので3戦無敗で引退。

種牡馬としてはウマ娘関連だとビコーペガサス、ヒシアケボノの兄アグネスワールドの父で、グラスワンダーニシノフラワーの母の父です。


産駒のデインヒルファインモーションをはじめ父以上にすごい馬を出しまくり、ヨーロッパはデインヒル系が流行りましたが、日本に種牡馬が輸入されてもスピードが足らずなんか微妙な感じになります。

日本で繋養されてる最有力のデインヒル系種牡馬ハービンジャーの産駒ブラストワンピースやペルシアンナイトも種牡馬入りはせず、あんまりいい待遇は受けてない感じです。

一方のオーストラリアはデインヒル無双になってます。もうデインヒルかデインヒル以外のノーザンダンサー系かの2択になってます。
香港競馬も馬産をやっておらずオーストラリアからめっちゃ馬買うので、その流れでデインヒル系が侵食してます。
海外の競馬を見る機会があったらぜひ注目してみてくださいね。

サドラーズウェルズ(1981)

生国/所属国アメリカ / アイルランド
ノーザンダンサー
主な産駒ウマ娘…モンジュー
非ウマ娘…ガリレオ、ハイシャパラル、イエーツ、インザウイングス、カーネギー、オペラハウス、カイフタラ他多数
主な直系子孫ウマ娘…テイエムオペラオー
非ウマ娘(海外)…フランケル、アルピニスタ、トレヴ、ゴールデンシックスティ、シングスピール、ハイランドリール、レイチェルアレクサンドラ、ソングバード、ロアリングライオン、ハリケーンラン、ソーユーシンク、キャメロット他多数
非ウマ娘(国内)…メイショウサムソン、ロゴタイプ、モズアスコット、ソウルスターリング
母父としての産駒ウマ娘…エルコンドルパサー
非ウマ娘…エネイブル、コンデュイット、ワークフォース、シーザリオ、フサイチコンコルド
主な勝ち鞍愛チャンピオンS、エクリプスS、愛2000ギニー

そんなダンジグ系と二大勢力になってるのがサドラーズウェルズ。テイエムオペラオーの祖父で、モンジューの父です。
オペラオー同様勝つ時は僅差だったのですが、引退してからがとんでもねえことになってます。

↑の主な産駒と直系子孫を適当に何頭か調べてみてください。だいたいG1を5勝以上してます。後継のG1馬が百頭単位でいるから厳選したらこうなりました。

当時の最強馬モンジューと最強種牡馬ガリレオを出し、モンジューの子ハリケーンランやガリレオの子フランケルが世界最強になってしまったせいで、欧州競馬見てるとサドラーズウェルズの血が入ってない馬がほとんどいません。

2000〜2022年までの凱旋門賞馬20頭のうち13頭がサドラーの血を持ってます。
2012〜22年の英ダービー馬10頭のうち8頭の父がサドラーの直系子孫です。

なので欧州競馬は「こいつら全員ウマ娘化したらおばあちゃん(おじいちゃん)が同一人物なんだなあ…」と思いながら楽しんでみましょう。気が狂います。

ダンシングブレーヴ(1983)

生国/所属国アメリカ / イギリス
リファール
主な産駒ウマ娘…キングヘイロー
非ウマ娘…テイエムオーシャン、キョウエイマーチ、コマンダーインチーフ、ホワイトマズル
主な直系子孫ウマ娘…カワカミプリンセス
非ウマ娘…ローレルゲレイロ、レギュラーメンバー、イングランディーレ、メーデイア
母父としての産駒ウマ娘…スイープトウショウ
非ウマ娘…メイショウサムソン、ビートホロウ、オアシスドリーム
主な勝ち鞍凱旋門賞、KGVI&QES、エクリプスS、2000ギニー
表彰イギリス競馬殿堂入り

ノーザンダンサーの孫世代で大種牡馬リファールの子。最強馬の一角であり、キングヘイローの父です。

「最強馬論争」っていうのがあります。
どの時代のどの馬が強いのか、環境も技術も何もかも違う馬たちを戦わせたらどれが強いのか。夢のある話ですが、2chみたいな掲示板でふっかけると不毛な争いが始まる議題です。

そんな論争の中でも、「1980年代最強馬はダンシングブレーヴ」という意見には誰も反論しません。それくらい強い馬でした。

↑の凱旋門賞は柵の設置位置の関係で内側の芝が綺麗な状態。外側はボロボロになっていました。
出走馬はG1を勝ちまくってたり、レコードホルダーも多数。当時の最強馬決定戦でした。
それを芝の荒れた外から一気にブチ抜いてレコード勝ちしたんで、最強としか言えない馬になりました。(ちなみに14着は欧州遠征してたシリウスシンボリでした)

21世紀最強馬はフランケルとフライトラインの2択とされてますが芝マイラーとダート馬です。芝2400mでダンシングブレーヴを超えるパフォーマンスを見せた馬は未だにいません。

キングの父はあまりにも偉大すぎました。育成シナリオでどんだけキングさんが勝っても親に認められないのはこういう背景があったりします。(母もアメリカでGI7勝、勝利5割弱)

ストームキャット(1983)

生国/所属国アメリカ
ストームバード(父ノーザンダンサー)
主な産駒日本…シーキングザダイヤ
海外…ジャイアンツコーズウェイ、タバスコキャット、ヘネシー
主な直系子孫日本…ジオグリフ、ミスターメロディ、ユニコーンライオン
海外…ビホルダー、ジャスティファイ、ライフイズグッド、ジオポンティ、ブリックスアンドモルタル、オーセンティック、ドレフォン、カラヴァッジオ、ブルーポイント
母父としての産駒日本…ロードカナロア、ファレノプシス、キズナ、ラヴズオンリーユー、エイシンヒカリ、リアルスティール、ダノンキングリー、メイショウボーラー、サトノアラジン
海外…フォークロア(コントレイル祖母)、スタディオブマン(父ディープインパクト)、スパイツタウン(モズスーパーフレア父)
主な勝ち鞍ヤングアメリカS(米GI)

この馬はウマ娘にはあまり関わりがなく、強いて挙げるならパールの子シーキングザダイヤが父ストキャなくらいです。
むしろ関係があるのはストキャの父のストームバードの方で、こっちはワンダーアキュートの曽祖父にあたります。

それでもバードではなくキャットを取り上げたのは、「これからウマ娘になりそうな馬の母父がことごとくストキャ」だからです。

競走馬には「ニックス」というのがあります。「この馬の血統とこの馬の血統を掛けると走る馬が生まれやすい」みたいな理論のことです。なお、科学的根拠はありません。

よく知られているのが父ステイゴールド、母父マックイーンの組み合わせですね。これはなんとなく聞いたことある人も多そう。ゴルシとかオルフェーヴルとかですね。

それと似たような感じでディープインパクトの血とストームキャットは相性が抜群に良く、母の父ストームキャットのディープ産駒はめっちゃ走るんです。
ラヴズオンリーユー、キズナ、ダノンキングリー、エイシンヒカリ、サトノアラジン。
どれか1頭でも聞いたことないですか?

どれもウマ娘になりそうな感じがするので抑えといて損は無いです。

ちなみに現役馬ディープボンドはマルゼンスキー、ダンシングブレーヴ、ストームキャットの血が入ってます。恐ろしいほどノーザンダンサー。

クロフネ(1998)

生国/所属国アメリカ / 日本
フレンチデピュティ(ヴァイスリージェント系)
主な産駒ウマ娘…カレンチャン
非ウマ娘…ソダシ、スリープレスナイト、ホワイトフーガ、アエロリット
母父としての産駒クロノジェネシス、ヴェラアズール、レイパパレ、スタニングローズ
主な勝ち鞍ジャパンカップダート、NHKマイル

日本に戻ります。

ウマ娘では平成(永世)三強、BNW、ローレルマベサンマヤノのスターブロッサム古馬三強、エルグラスペ98世代、オペアヤべトプロ99世代の構図がフォーカスされていますが、01世代はあんまり取り上げられてません。

アグネスタキオン、クロフネ、ジャングルポケット、マンハッタンカフェ。
この4頭が現役時代は4強で、引退してもそれぞれ名馬を生み続けました。

クロフネは上の動画の通り、日本のダート馬史上最強と言われてます。でも産駒は芝で強いですし、なかなか牡馬で強い馬が出てくれません。
ソダシやカレンチャンが有名な産駒ですね。

ネイティヴダンサー系

ノーザンダンサーと並んで世界の血統の大半を占める系統です。

ウマ娘血統図(ネイティヴダンサー系)

ウマ娘でまとめるとこじんまりとしてますが、アメリカ競馬はほぼこの系統で成り立ってるくらい大事な血統です。

欧州競馬でもオセアニアでもよく見かける、一番オールマイティな血統かもしれません。

ファラリス ↑至ダーレーアラビアン

シックル

アンブレイカブル

ポリネシアン

★ネイティヴダンサー
├レイズアネイティヴ
│├マジェスティックプリンス
││└マジェスティックライト→ニシノフラワー
│└☆ミスタープロスペクター
│ ├クラフティプロスペクター
│ │└アグネスデジタル
│ ├ウッドマン
│ │└ヒシアケボノ
│ ├フォーティナイナー
│ │└☆エンドスウィープ→スイープトウショウ
│ ├☆シーキングザゴールド→シーキングザパール
│ └☆キングマンボ
│  ├エルコンドルパサー
│  └キングスベスト
│  │└エイシンフラッシュ
│  └☆キングカメハメハ
│   ├ホッコータルマエ
│   └ドゥラメンテ(ブリュスクマン)
└ダンシングキャップ
 └オグリキャップ

ネイティヴダンサー(1950)

生国/所属国アメリカ
ポリネシアン(ファラリス系)
主な産駒レイズアネイティヴ
主な直系子孫(日本)ウマ娘…オグリキャップ、ニシノフラワー他多数
非ウマ娘…ミスタープロスペクター、シーバード、アファームド、アリダー、イージーゴア、マジェスティックプリンス、ランハッピー他多数
母父としての産駒ノーザンダンサー、ラフィアン
戦績22戦21勝
米国二冠、トラヴァーズS、メトロポリタンH
表彰アメリカ競馬殿堂入り

馬名を見て真っ先にサカナクションを思い出した方、友達になりましょう。

ミスタープロスペクター系としてまとめてもよかったんですけど、どうしてもこの馬を紹介したかった。

今まで紹介した昔の競走馬はウマ娘にそこまで関係ない馬でしたが、ネイティヴダンサー知ってるのと知らないのとではシンデレラグレイに対する理解が変わってきます

この馬が走っていたのはテレビ黎明期。
ブラウン管に映るモノクロの競馬場。
大勢の馬の中、一際目立つ白い馬がスタートからスッと好位につけ、いつの間にか先頭に立ち、1着でゴールを決める。

その分かりやすさと強さが人気を呼び、付いた異名は灰色の幻影グレイファントム
さて、ここで『ウマ娘 シンデレラグレイ』第73話を読んでみましょう

芦毛の怪物オグリキャップは零細血統ながら、大種牡馬ネイティブダンサーの血が隔世遺伝して驚異的な身体能力を手にしたというのが通説です。

そしてウマ娘オグリのキャラソンを聴いた後に、オグリの4代父の名前を上の血統図で確認してしましょう

確信犯でしょこれは。競馬に寄り添いすぎなんすよこのコンテンツ。

ミスタープロスペクター(1970)

生国/所属国アメリカ
レイズアネイティヴ
主な産駒ガルチ、キングマンボ、フォーティナイナー、シーキングザゴールド、フサイチペガサス他多数
主な直系子孫ウマ娘…ケイエスミラクル、ヒシアケボノ、シーキングザパール、エルコンドルパサー、アグネスデジタル、スイープトウショウ、エイシンフラッシュ、ホッコータルマエ
非ウマ娘(日本)…アドマイヤドン、アドマイヤムーン、ラインクラフト、オメガパフューム他多数
非ウマ娘(海外)…ウィンクス、ゼニヤッタ、アーバンシー、ドバイミレニアム、アメリカンファラオ、アロゲート、カーリン、ガンランナー、ザルカヴァ、サイレントウィットネス他多数
母父としての産駒日本…フリオーソ
海外…デイジュール、マインシャフト

ネイティヴダンサーの孫世代にあたります。

この馬は競走馬としては全然大したことないです。
GIIIすら勝ててないです。
でも、非凡だったのは1200mで何回かレコード勝ちしてるところ。1400になるとバテる。さらに短距離にステータスを振ってしまったサクラバクシンオーみたいな感じだったんでしょうか。

種牡馬になるとそのスピードの速さだけが上手いこと遺伝し、下記の競走馬たちが生まれました。

シーキングザゴールド(1985)

生国/所属国アメリカ
ミスタープロスペクター
主な産駒ウマ娘…シーキングザパール
非ウマ娘…ドバイミレニアム、ヘヴンリープライズ
主な直系子孫ドバウィ、ポストポンド、ガイヤース、ミシュリフ、ベンバトル、スペースブルース、モダンゲームズ他多数
母父としての産駒ゴルトブリッツ、シーキングザダイヤ
主な勝ち鞍スーパーダービー、ドワイヤーS(米GI)

父のミスプロが「採掘者」って意味の馬名なので、それになぞらえて金を探す感じになりました。
↑のレースは同じくミスプロ産駒フォーティナイナーとの一騎打ち。この馬名も調べるとちょっと面白いです。

ウマ娘たちにドラマがあるように、海外馬にもドラマがあります。

アラブの国王兼首相のシェイク・モハメド殿下は馬を愛する一家に育ち、「この国を競馬大国にしたい」と必死に活動し、1996年に1着賞金約10億円のドバイワールドカップを開催。以降凱旋門賞などに並ぶ世界的大レースとしての地位を確立させました。

殿下はオーナーブリーダーとしても活動しており、数多くの名馬を所持していましたが、イギリスに所有する牧場内のとあるシーキングザゴールド産駒のデビュー前の動きがあまりにも良く、「この馬なら2000年のドバイワールドカップも勝てる」と思い、ドバイミレニアムと名を付けたそうです。

デビューさせたら圧勝の連続。距離が長くて負けた英ダービー以外は無敗。芝ダート問わず走り続け、ドバイワールドカップの頃には勝つのは予定調和みたいな雰囲気。6馬身差レコード勝ちでした。

その後故障引退し、期待とビッグマネーを背負い種牡馬になったんですが、1年後に奇病を発症し天に召されてしまいます。

もちろん殿下にとっては最も思い入れのある馬で、後継馬不在だけは避けたかった中、残された1世代の中からドバウィがなんとかGIを2勝してくれました。
この馬も殿下のグループ所有馬だったため、そこからは執念で種牡馬として成功させようと頑張った結果、初年度世代でGI馬が9頭誕生。
大成功し、今ではドバイの馬はドバウィ系が主流。

殿下は日本で言う社台グループのような大グループ「ゴドルフィン」を立ち上げ本格的に馬産から競馬に携わるようになったため、今ではドバウィ系はヨーロッパでも地位を確立。

日本ではゴドルフィン関係なく岡田グループ(マイネルとかウインとかの一族)が本気でドバウィ系のベンバトルを種牡馬として成功させようとしているらしく、期待が高まっています。

そろそろタイトルホルダーとメロディーレーンの下のベンバトル産駒が産まれるはず。ウマ娘でいえばデアリングタクトも岡田一族の馬なので、引退したらベンバトルの子を授かる可能性は高そう。

エンドスウィープ(1991)

生国/所属国アメリカ
フォーティナイナー
主な産駒ウマ娘…スイープトウショウ
非ウマ娘…アドマイヤムーン、ラインクラフト、サウスヴィグラス、スウェプトオーヴァーボードほか
主な直系子孫オメガパフューム、ダンシングプリンス、レッドファルクス、ファインニードル

さっきの動画でシーキングザゴールドに勝ったフォーティナイナーの産駒です。
この馬も成績は大したことなかったけど子供が凄かった系で、早くに亡くなっちゃった系の馬です。最高成績はGIII1着。

日本に来てから亡くなるまでの3世代でスイープトウショウ、ラインクラフト、アドマイヤムーンというちょっと調べれば強いと分かるレベルの名馬を生みました。

アドマイヤムーンをゴドルフィンが買い取ったものの種牡馬になったら短距離馬と障害馬ばっか出たため、日本はアメリカで走ったスウィープ系の子孫をひたすら買い漁ってます。

キングマンボ(1990)

生国/所属国アメリカ / フランス
ミスタープロスペクター
主な産駒ウマ娘…エルコンドルパサー
非ウマ娘…キングカメハメハ、レモンドロップキッド、アルカセット、キングズベスト、ディヴァインプロポーションズ
主な直系子孫ウマ娘…エイシンフラッシュ、ホッコータルマエ
非ウマ娘…アーモンドアイ、ロードカナロア、ヴァーミリアン、アパパネ他多数
母父としての産駒日本…ビッグアーサー、スズカマンボ
海外…バーイード、キャメロット、アデイブ、デュークオブマーマレード、ミッデイ
主な勝ち鞍ムーラン・ド・ロンシャン賞、セントジェームスパレスS、仏2000ギニー(仏G1)

(上のレース3着ビッグストーンはメイショウドトウの父です)

父はミスプロ、母はGI10勝馬ミエスク
ミエスクはラヴズオンリーユーの曾祖母でもあり、同じくディープ産駒のスタディオブマン含め子孫にGI馬が多数存在する名繁殖牝馬。
そんな偉大なる母が産んだ子が種牡馬として成功しないわけがなく…

日本最強格エルコンドルパサー、ゼンノロブロイとハーツクライを退けてジャパンカップを制覇したアルカセット、孫世代からはエイシンフラッシュ、ナカヤマフェスタの夢を打ち砕いた凱旋門賞馬ワークフォースなどが誕生。

中でも凄かったのが↓の馬。

キングカメハメハ(2001)

生国/所属国日本(アメリカからの持込馬)
キングマンボ
主な産駒ウマ娘…ホッコータルマエ
非ウマ娘…ロードカナロア、アパパネ、ドゥラメンテ、チュウワウィザード、レイデオロ、ローズキングダム、ルーラーシップ他多数
主な直系子孫アーモンドアイ、タイトルホルダー、パンサラッサ、ダノンスマッシュ、スターズオンアース、キセキ、サートゥルナーリア他多数
母父としての産駒ウマ娘…デアリングタクト
非ウマ娘…ソダシ、ウシュバテソーロ、インディチャンプ、ブラストワンピース、ワグネリアン
主な勝ち鞍日本ダービー、NHKマイル

日本で1番成功したミスプロ系種牡馬です。

幻の最強馬。現状ウマ娘に出てこないキャラであることが惜しすぎる1頭です。

タニノギムレットはウマ娘の説明の通りマイルと中距離で頂点を掴もうとして挫折しましたが、キンカメは成功どころか歴史的大成功。
NHKマイル5馬身差圧勝。未だに歴代最高着差です。

産駒には事故って弾き飛ばされながら皐月賞を勝ったドゥラメンテ、日本馬が勝つのは無理だと言われてた香港スプリントをあっさり連覇したロードカナロア、孫世代は芝とダートでアジアの頂点に立った二刀流高速逃げ馬パンサラッサ、芝2400m世界レコードのアーモンドアイがいます。エグい。

【次ページ】日本競馬を変えた“あの馬”

コメント

  1. ゴドルフィンアラビアン系、カルストンライトオで遂に実装されましたね

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