【競馬】ダートで輝いた名馬列伝

皆さん、ダート競馬見てます?

2023年現在だと芝は牡馬はイクイノックスが強くて、牝馬はリバティアイランドと、あとソダシが綺麗…くらいは分かっても、ダートって言われるとピンと来ないのが正直なところだと思います。

でも、競馬は芝だけじゃありません。
ダートを知らないままで競馬を終えるのは、競馬の魅力を半分分かってないのと同じこと。
なので、解像度を上げるためにダート名馬列伝をまとめてみました。

芝はウマ娘で取り上げられた馬のレースを時系列で漁っていくと、「なるほど、この時代はこういう馬が強くてこういうレースがあったのか」くらいの学びは得られるのですが、ダートはそうはいきません。時代ごとに抑えとけばいい馬を漏れのないようてんこ盛りで書き連ねたので、参考までに休み休み読んで頂ければと思います。ウマ娘から競馬を知った方や競馬初心者のためにも分かりやすい小ネタを挟んでいるので、お気軽に読んでくださいね。

初心者の方は前置きは読み飛ばしてください。よろしくお願いします。

  1. 前置き 戦前〜戦後の競馬
  2. 1960〜90年代以前
    1. ヒカルタカイ
    2. ハイセイコー
    3. ロッキータイガー
    4. カウンテスアップ
    5. オグリキャップ
    6. イナリワン
    7. フェートノーザン
    8. チャンピオンスター
    9. ロジータ
    10. その他
  3. 90年代前期
    1. グレートホープ
    2. スイフトセイダイ
    3. ダイコウガルダン
    4. トウケイニセイ
    5. その他
  4. 90年代後期
    1. ライブリマウント
    2. ホクトベガ
    3. ライデンリーダー
    4. アブクマポーロ
    5. メイセイオペラ
    6. コンサートボーイ
    7. ファストフレンド
    8. その他
  5. 00年代前期
    1. ウイングアロー
    2. クロフネ
    3. トーシンブリザード
    4. トーホウエンペラー
    5. アグネスデジタル
    6. アドマイヤドン
    7. タイムパラドックス
    8. ゴールドアリュール
    9. サウスヴィグラス
    10. その他
  6. 00年代後期
    1. ブルーコンコルド
    2. アジュディミツオー
    3. フジノウェーブ
    4. カネヒキリ
    5. ヴァーミリアン
    6. フリオーソ
    7. サクセスブロッケン
    8. その他
  7. 10年代前期
    1. エスポワールシチー
    2. スマートファルコン
    3. ゴルトブリッツ
    4. トランセンド
    5. ワンダーアキュート
    6. その他
  8. 10年代中期
    1. ホッコータルマエ
    2. コパノリッキー
    3. サウンドトゥルー
    4. サンビスタ
    5. その他
  9. 10年代後期
    1. ラニ
    2. ゴールドドリーム
    3. ノンコノユメ
    4. ルヴァンスレーヴ
    5. クリソベリル
    6. オメガパフューム
    7. チュウワウィザード
    8. その他
  10. 20年代初頭
    1. カフェファラオ
    2. カジノフォンテン
    3. ミューチャリー
    4. マルシュロレーヌ
    5. テーオーケインズ
    6. その他
  11. これから
    1. ウシュバテソーロ
    2. メイショウハリオ
    3. クラウンプライド
    4. デルマソトガケ
    5. レモンポップ
    6. マンダリンヒーロー
    7. ミックファイア
    8. その他
  12. まとめ

前置き 戦前〜戦後の競馬

(※ただの余談なので読み飛ばしてOK)

日本競馬は地方・中央共に関東が牽引してきた背景があるので、地方競馬は今も昔も南関東競馬が最も栄えている。

当時の地方競馬は大阪や名古屋では障害競走、盛岡では繋駕速歩競走(こんなんを日本でもやってた)、島根などでは速歩なんかも開催されていた。(ばんえい競馬が法的に認められたのは戦後だが、起源は明治時代)


そもそも日本競馬が発展した(衰退しなかった)背景には、戦争がある。軍馬増強のため馬産が重要課題とされていたのだ。

サラブレッドは性質がピーキーすぎて戦争向きではないとされていたが、サラブレッドより走りは遅いがより頑健なアングロアラブ種に掛け合わせるためか、最後まで生産され続けた。

終戦後は地方・中央共に馬資源の枯渇に悩まされた。特に地方ではアングロアラブを連闘で使い倒すなどして出走頭数を確保していた過去がある。

南関東を中心に地方競馬でもサラブレッドは輸入されていたが、中央競馬場より地方の競馬場の方が基本的に規模が小さくコースも手狭であるため(特に南関東以外)、紆余曲折を経て園田(兵庫)はアラブ専業の競馬場に。それに追従してか近畿、中国地方の競馬場はほとんどがアラブ専門になった。

こういった背景もあって、サラブレッドの競馬は中央競馬と南関東競馬を中心に栄えていく。


戦時中こそ需要はあったが、単純なスピード値が違うためサラより格下とみなされたアラブ競馬は徐々に規模を縮小していき、中央では90年代に、地方では00年代に終わる。(なので現役騎手なら武豊、横山典弘などはアラブ馬騎乗経験があるし、園田から中央に来た岩田康誠は昔はほぼ毎日乗ってた)

しかし、JRAの顕彰馬(殿堂入り)の中にアングロアラブがいることや、初期の南関東競馬の四大レースとして掲げられていたレースが春の鞍(東京ダービー)、秋の鞍(東京大賞典)、春の特別(アラブダービー)、秋の特別(全日本アラブ大賞典)だったのも紛れもない事実。

今は亡きアラブ競馬に思いを馳せつつ、サラブレッド競馬の隆盛について触れていきたい。

(という事でここではダートで活躍したサラブレッドをまとめてます。アラブや輓馬はまたの機会に)

1960〜90年代以前

まだ地方と中央が隔絶されていた時代。
重賞にグレードも無かった。

この時代のサラブレッドのための大レースは1964年に成立した南関東三冠競走と東京大賞典。78年に新設された帝王賞も春の大一番的な立ち位置になる。

2024年からは羽田盃、東京ダービー、ジャパンダートクラシックが「ダート三冠」となるが、この時代の「南関東三冠」は羽田盃東京ダービー東京王冠賞(2001年廃止)。やはり日本のダート競馬は南関東と共にある。

この時代のトピック

・70年代前半…第1次競馬ブーム到来
・1986年…大井競馬場で日本初のナイター競馬が開催、帝王賞とオールカマーが地方/中央交流(指定交流競走)に
・80年代後半…第2次競馬ブーム到来
・1989年…ブリーダーズゴールドカップが指定交流競走として創設

【主な大レース(80年代後半)】
◆南関東
・帝王賞…指定交流競走(1986〜)
・東京大賞典
・川崎記念
・金盃
・東京記念
・南関東三冠(3歳)
・全日本3歳優駿(現2歳)…地方全国交流競走
◆岩手
・北日本マイルチャンピオンシップ南部杯…当時は道営、北関東(栃木、群馬)との交流競走だった
・東北サラブレッド大賞典…新潟、山形との交流競走
・ダービーグランプリ(3歳)…地方全国交流競走
◆道営
・ブリーダーズゴールドカップ…指定交流競走。当時は旭川で開催されていた
◆笠松
・全日本サラブレッドカップ…地方全国交流競走
◆中央
・札幌記念(GIII)…1989年まではダート開催
・フェブラリーハンデキャップ(GIII)…84年新設
・根岸S…同上
・ウインターS(GIII)…同上。指定交流競走。後の東海S

【活躍した血統】
80年代…ミルジョージ、スイフトスワロー、フェートメーカー

この時代でサラブレッド競馬が強かったのは南関東と岩手。たまに笠松(東海)も出てくる。西日本が強くなるのは今世紀に入ってから。

活躍馬を見ていこう。

ヒカルタカイ

表彰公営日本一(南関東版年度代表馬/1967)
血統父 リンボー(マンノウォー系/ゴドルフィンアラビアン系)
母父 ハクリョウ(ブランドフォード系)
所属大井→東京(中央)
戦績31戦15勝[15-10-3-3]
主な勝ち鞍地方:南関東三冠 全日本3歳優駿 黒潮盃
中央:天皇賞(春) 宝塚記念
産駒モブスター(報知オールスターカップ)

1960年代後半に活躍した。古の地方競馬は資料が多くないため強さを推し量る事は難しいが、最強馬の先駆けはこの馬だと断言出来る。

彼は南関東初代三冠馬で、中央に移籍すると天皇賞(春)を大差勝ち、宝塚記念をレコード勝ちしている。
ちなみになんと天皇賞のレース映像はニコニコ動画に上がってる。なんであるんだよ

ハイセイコー

表彰JRA顕彰馬
NAR特別表彰
血統父 チャイナロック(ロックフェラ系)
母父 カリム(ネアルコ系)
所属大井→東京
戦績22戦13勝[13-4-2-3]
主な勝ち鞍地方:青雲賞
中央:皐月賞 宝塚記念 高松宮杯 中山記念 NHK杯 スプリングS 弥生賞
産駒カツラノハイセイコ(日本ダービー)
ハクタイセイ(皐月賞)
サンドピアリス(エリザベス女王杯)
キングハイセイコー(南関東二冠)
アウトランセイコー(〃)
BMSマイネルマックス(朝日杯)
ヤマノセイコー(道営記念)
記念競走ハイセイコー記念(大井SI)
※BMS=母の父としての産駒

70年代前半に活躍した、第1次競馬ブームの火付け役。地方競馬の存在を世に知らしめた元祖アイドルホースである。

彼は南関東で無敗のまま中央に移籍し、皐月賞まで連戦連勝を重ねたが、タケホープに残りの二冠を取られてしまう。当時の中央は長距離こそ正義だったため、マイル〜中距離馬のハイセイコーには厳しい環境だった。

それでも多くの人から愛され、競馬を知らない一般層にもその存在が知れ渡った。彼にまつわる話は多いのでぜひ調べてみてほしい。

ウマ娘でも地味に存在が示唆されている。「ライトハロー 元ネタ」でググれば驚愕の事実が転がってるかも。

ロッキータイガー

血統父 ミルジョージ(ミルリーフ系)
母父 シーカー(プリンスローズ系)
所属船橋
戦績25戦10勝[10-6-5-4]
主な勝ち鞍帝王賞 東京記念 ダイオライト記念 金盃 東京王冠賞 報知グランプリC

船橋の英雄。歴史的文脈で語られる事も多い馬。

ジャパンCが創設された当時、地方馬にも1枠だけ出走枠が与えられていた。
東京記念にて名馬テツノカチドキとの激戦を制したロッキーは、ジャパンC本番で海外馬を押しのけシンボリルドルフの2着に食い下がる

これがきっかけで地方馬の中央挑戦の機運が高まり、平成三強の伝説へ続く。
翌年に帝王賞とオールカマーがそれぞれ地方/中央交流重賞として機能し始めたことも追い風となり、90年代の地方競馬の躍進につながる。

彼の激走が今の競馬をつくったと言っても過言ではない。

カウンテスアップ

血統父 フェートメーカー(ハイペリオン系)
母父 ドレスアップ(〃)
所属岩手→大井→笠松→大井
戦績41戦29勝[29-4-2-6]
主な勝ち鞍川崎記念3連覇 東京大賞典 金盃(大井) 報知オールスターC
名古屋大賞典 東海菊花賞
桐花賞 東北優駿 不来方賞(当時の岩手ダービー)

岩手出身。地元で大レースを勝ち続けたのち南関東に移籍。後の日本競馬最多勝騎手(現在7400勝でまだ更新中)の的場文男に導かれ、川崎記念を3連覇。東京大賞典勝ち馬テツノカチドキを相手に勝利した。
帝王賞ではロッキータイガーの後塵を拝したものの、後に東京大賞典でその年の南関東三冠馬ハナキオーを負かして最強に名乗りを上げた。

全国交流競走が少なかった(その地区の所属馬限定戦がほとんどだった)ため都度移籍を余儀なくされていた時代で、岩手、南関東、東海の3拠点で一線級と争い時代を作ったカウンテスアップは歴史的名馬と言っていいだろう。

オグリキャップ

表彰JRA顕彰馬
NAR特別表彰
血統父 ダンシングキャップ(ネイティヴダンサー系)
母父 シルバーシャーク(マンノウォー系)
母 ホワイトナルビー
半妹 オグリローマン
所属笠松→栗東
戦績32戦22勝[22-6-1-3]
主な勝ち鞍地方:ジュニアGP 中京盃 ジュニアクラウン
中央:有馬記念2勝 マイルCS 安田記念
記念競走オグリキャップ記念(笠松SPI)

当時は地方競馬の中でも馬と騎手の質がかなり良かった笠松。とはいえ田舎には変わりなかった。
そんな笠松で後のダイワスカーレットやキングカメハメハの主戦騎手、安藤勝己(アンカツ)を乗せ連戦連勝を重ねたオグリ。
3歳になり中央へ移籍し、そこからの活躍は説明するまでもない。彼がきっかけで第2次競馬ブームは始まった。

↑は笠松で古馬に混ざって圧勝した条件戦。2着馬は7歳、この時オグリキャップはまだ2歳である。

イナリワン

表彰JRA年度代表馬(1989)
NAR特別表彰
血統父 ミルジョージ(ミルリーフ系)
母父 ラークスパー(ネヴァーセイダイ系)
所属大井→美浦
戦績25戦12勝[12-3-2-8]
主な勝ち鞍地方:東京大賞典 東京王冠賞 東京湾カップ
中央:天皇賞(春) 宝塚記念 有馬記念
主な産駒ツキフクオー(東京王冠賞)
イナリコンコルド(大井記念)
シグナスヒーロー(AJCC2着)
ミナモトエリモ(高崎オークス)
セイントピアス(東北ジュニアGP)
タツミブレン(くろゆり賞)
ライジングタイド(中津大賞典)

同じく大井競馬から中央へ電撃移籍した良馬場の鬼。
当時の南関重賞は超長距離のものが多かった。そこで結果を出していたイナリにとって天皇賞(春)など余裕。移籍して初のGIで5馬身差レコード勝ち。
そこからは周知の通りの大活躍。年度代表馬にもなった。

フェートノーザン

血統父 フェートメーカー(ハイペリオン系)
母父 ドレスアップ(〃)
所属栗東→笠松
戦績29戦19勝[19-3-1-6]
主な勝ち鞍地方:帝王賞 全日本サラブレッドC 名古屋大賞典 東海GC連覇 ブリーダーズGC 東海菊花賞etc
中央:平安S(OP)

オグリの先輩。中央から移籍してきて、笠松時代のオグリの鞍上・安藤勝己を乗せ始めてから覚醒。
イナリワン相手に勝ったり、帝王賞を制覇している。
ウマ娘オグリを描いた漫画『シンデレラグレイ』にて↑のレースが再現され、謎のウマ娘フェイスノーモアとして登場した。

チャンピオンスター

血統父 スイフトスワロー(ノーザンダンサー系)
母父 ロードリージ(サーゲイロード系)
所属大井
戦績24戦11勝[11-3-1-9]
主な勝ち鞍帝王賞2勝 東京記念 大井記念 金盃 報知オールスターカップ 黒潮盃

中央勢を相手に、史上初の帝王賞2勝を達成した中距離王。屈腱炎と戦いながらの2勝だった。

鞍上は大井時代のハイセイコーや南関東三冠馬サンオーイに騎乗した東京ダービー4勝ジョッキー、高橋三郎騎手だったが、彼も落馬事故で足に大怪我を負っていた。手負いのコンビで挑んだ大一番だった。

オールカマーに2回出て2回とも大敗し、その後故障しているため、よほど芝が合ってなかったのだろう。

ロジータ

表彰NAR特別表彰
血統父 ミルジョージ(ミルリーフ系)
母父 マダング(サーゲイロード系)
所属川崎
戦績15戦10勝[10-2-1-2]
主な勝ち鞍南関東三冠 東京大賞典 川崎記念
浦和桜花賞 京浜盃 ニューイヤーC
産駒/子孫カネツフルーヴ(帝王賞/川崎記念)
イブキガバメント(鳴尾記念)
アクイレジア(JDD2着)
孫:レギュラーメンバー(JBCクラシック/川崎記念)
記念競走ロジータ記念(川崎SI)

ダートでは馬券外ゼロ。牝馬として唯一の南関東三冠。地方史上最高の名牝と言っても過言ではない。
わずか15戦で伝説になり、引退レースの川崎記念はロジータ以外の単勝が全て万馬券になった。そこで見せつけたのが8馬身差の圧勝劇。

4歳春に引退すると、母としても地方GI2勝カネツフルーヴを出すなど大活躍した。
そりゃ川崎もロジータ一色になる。

その他

◆60年代

オンスロート

60年代前半に活躍。中央と南関東で年度代表馬に輝いた名馬。

全日本2歳優駿(当時は3歳表記)を大差レコード勝ちするなど2歳時は無敵だったが、蹄の弱さが災いし春の鞍(東京ダービー)2着。秋に復調すると2600mだった秋の鞍(東京大賞典)を堂々逃げ切り。翌年に中央に移籍し、翌々年に天皇賞と有馬記念を制覇した。

◆70年代

ハツシバオー

父は芝ダート短距離長距離関係なく無双し、生涯で5度もレコード勝ちを記録した怪物タケシバオー。

その代表産駒となるハツシバオーは、東京ダービーを6馬身差で圧勝した南関東三冠馬。ダートでは落馬を除いて全戦3着以内と驚異的な成績。父譲りの柔軟性で1000m〜3000mのレースで勝利を収めている。

主戦の宮浦騎手はこの馬で評判を上げ、後にイナリワンの手綱も任されることになった。(ちなみに川田将雅騎手の伯父らしい)

◆80年代

ホスピタリティ

大井の名馬。羽田盃やセントライト記念を制している。
対日本馬なら芝ダート共に無敗。負けた相手はジャパンC2着馬🇨🇦フロストキングのみ。

無敗のまま中央に移籍し「ハイセイコーの再来」と期待されたが、持病の靭帯炎が悪化しGI出走は叶わず。

種牡馬入りすると自身が勝てなかった中央GIを制す産駒や地方ダービー馬も輩出し、地方競馬のリーディングサイアーとなったすごい馬。

サンオーイ

南関東三冠馬。その年の東京大賞典も制して四冠馬となり、翌年は中央に移籍し安田記念に挑んだが3着。その後は思うような結果を残せず引退した。

代表産駒はダービーグランプリ勝ち馬トミシノポルンガ。

グレートローマン

今は亡き公営新潟競馬の星。2歳秋から頭角を現し連勝続きで新潟二冠馬になるが、東北優駿で岩手代表カウンテスアップの2着になると、新潟三冠目を残して東海へ移籍。

東海時代は南関東からやってきたカウンテスアップにまたボコられたり、元中央オープン馬のマルゼンスターに先着を許したりしながらも、芝コース以外では全て連対(2着以内になること)で引退。種牡馬として重賞勝ち馬も出した。

トウケイホープ

南関東時代はムラっけのある逃げ馬で、3000mだった東京大賞典を逃げ切りなど活躍はしつつも、二桁着順も珍しくない馬だった。
しかし岩手に移籍すると怒涛の連勝で地区トップに君臨した。

種牡馬になり初年度の種付けを済ませた後に急死。残した産駒5頭の中から岩手最強馬を輩出。悔やまれる死だった。

キングハイセイコー

ハイセイコーの子として怪物二世と称されたこの馬は、10戦9勝という驚異的戦績で三冠に向かうと、あのロッキータイガーを突き放して東京ダービー制覇。

東京王冠賞はアクシデントが重なり三冠とはならなかったが、同期の日本ダービー馬カツラノハイセイコと共にハイセイコーの名声をさらに高めた。

マックスフリート

関東の女王がロジータなら、東海の女王はこの馬。安藤勝己を背に笠松と名古屋で大活躍。芦毛だったことも相まって「女オグリ」とも呼ばれた。アンカツはオグリ、フェートノーザンと並んでこの馬を高く評価している。

ロジータとマックスフリートは対戦経験が無いが、産駒が帝王賞で顔を合わせた事がある。結果はロジータ産駒カネツフルーヴが1着、マックスフリート産駒ミラクルオペラが2着。産駒も一流馬だった。

90年代前期

わずかではあるが地方と中央が交流し始め、地方内では他地区との交流が活発化した時代。
名馬と名馬の叩き合いが頻発。「地方競馬黄金時代」と称える人すらいる。

この時代のトピック

◆1990年
・地方競馬全国表彰『NARグランプリ』創設
・グランドチャンピオン2000(JBCクラシックの前身)創設
・川崎記念が地方全国交流競走へ
◆1994年
・フェブラリーHがフェブラリーSになってGII昇格
・平安S、マーチS(GIII)新設

【活躍した血統】
ミルジョージ、グランドオペラ、ホスピタリティ

グレートホープ

第3回 南部杯◆H02(1990/10/07)
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血統父 ノーザリー(ノーザンダンサー系)
母父 トピオ(ファイントップ系)
所属岩手
戦績54戦24勝[24-6-10-14]
主な勝ち鞍南部杯 東北サラブレッド大賞典連覇 桐花賞3勝 みちのく大賞典連覇 北上川大賞典3連覇

南部杯など重賞を13勝。鞍上は後の4000勝ジョッキー菅原勲。
岩手競馬全盛期にスイフトセイダイとしのぎを削り続け、いわゆる「SG時代」を作った名馬。

スイフトセイダイ

第19回 みちのく大賞典◆H03(1991/05/12)
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血統父 スイフトスワロー(ノーザンダンサー系)
母父 ブレイクニー(トウルビヨン系)
所属岩手/大井
戦績51戦27勝[27-11-5-8]
主な勝ち鞍ダービーグランプリ みちのく大賞典連覇 シアンモア記念連覇 不来方賞 東北サラブレッド大賞典 東北サラブレッド3歳チャンピオン

父がスイフトスワロー、母母父がネヴァーセイダイなのでこの名前。80〜90年代特有の雑命名方法。

重賞は9勝だが、東京大賞典2年連続2着(そのうち1回はロジータとの対戦)、グランドチャンピオン2000でも2着と、岩手代表として南関東で大暴れしていた。「岩手の怪物」とも。
岩手所属馬として初めてダービーグランプリを制覇している。

ダイコウガルダン

表彰NAR年度代表馬(1990-91)
血統父 イースタンフリート(ナスルーラ系)
母父 パーソナリティ(ヘイルトゥリーズン系)
所属栃木→上山→大井→美浦→大井
戦績56戦22勝[22-9-6-19]
主な勝ち鞍東京大賞典 グランドチャンピオン2000 川崎記念 東京記念 大井記念 南部杯 北関東ダービー

北関東(当時は栃木とかにも競馬場があった)や南関東を行ったり来たりしながら南部杯、東京大賞典、グランドチャンピオン2000、川崎記念などを制覇した。
2年連続地方年度代表馬。

トウケイニセイ

第7回 南部杯◆H06(1994/09/25)
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表彰NAR特別表彰
血統父 トウケイホープ(ナスルーラ系)
母父 リフォーム(フェアウェイ系)
半兄 トウケイフリート
所属岩手
戦績43戦39勝[39-2-1-0]
主な勝ち鞍南部杯連覇 東北サラブレッド大賞典3連覇 桐花賞3連覇 北上川大賞典連覇 シアンモア記念連覇
記念競走トウケイニセイ記念(岩手M2)

43戦39勝。父はトウケイホープ。またの名を「岩手の魔王」。誰もが認める岩手最強馬。

語らなくとも戦績で凄さが伝わる稀有な地方馬。脚部不安もあって北日本から出ることなく走り続けた。41戦連続連対は不滅の日本記録。

その他

1986年から帝王賞は中央馬にも解放された。92年にはナリタハヤブサラシアンゴールドマンジュデンカブトの3頭が出走し、前2頭が1着同着になる珍事件も起こった。

他に活躍した中央馬は新馬戦で2着に3.3秒差を付けて勝利した後のフェブラリーH勝ち馬、メイショウホムラなど。(この記録は22年にヤマニンウルスに更新された)

ツキノイチバン

大井所属。幻の最強馬。

デビュー前の故障により左前脚の関節の骨液(潤滑液)が無くなってしまい、走るたび衝撃が関節にダイレクトに来る身体になってしまった。

そんな状態のためレース中は一度も鞭を入れられることはなく、レース後は懸命な治療が施されていた。なのに無敗のまま連戦連勝。重賞でダービー馬と二冠馬を持ったまま負かすほど圧倒的な能力を有していた。

しかし脚部不安は悪化。12戦目のグランドチャンピオン2000で故障し、予後不良となった。

モリユウプリンス

トウケイニセイが岩手最強馬なのは周知の事実だが、彼に唯一2度先着した馬がモリユウプリンスだ。

ニセイが脚部不安でクラシックに出てこられなかったこともあり、今の岩手三冠にあたる大レースを全て制覇。晩年のスイフトセイダイとも戦い3戦2勝。これからはプリンスの時代かと思われたところでニセイが重賞戦線に殴り込んできてしまった。

1着ニセイ2着プリンスで決まった重賞が6回あったらしいし、ニセイさえいなければ勝率50%、重賞15勝の怪物になれていた。


他に活躍した地方馬は、オグリの妹として笠松から中央に殴り込み、武豊を乗せ桜花賞を制覇したオグリローマンや、不慮の事故で亡くなってしまった栃木三冠馬カネユタカオーなど。

90年代後期

95年から交流重賞が解放され始め、97年からGIレースが増加。過渡期の重賞戦線。

中央馬の蹂躙と地方馬の逆襲のドラマがある時代。

この時代のトピック

◆1995年
交流元年…地方/中央馬の両方が出られるレースが多数解放/創設され、地方所属のまま中央に殴り込めるようになった。逆もまた然り。
・南関東グレード開始…南関独自のグレード制が開始。帝王賞や東京大賞典、川崎記念などに加え、東京2歳優駿牝馬、ダイオライト記念なども南関東G1に指定された。後に色々あってSI〜SIIIグレードに変わる。
・中京競馬場の地方競馬開催が休止…以前は芝コースでも地方競馬が行われていた。以降は中央一本化
◆1997年
ダートグレード競走開始…簡単に言えば地方/中央の指定交流競走に全てグレードが付いた。交流GI〜GIIIの誕生。
・フェブラリーSがGI昇格。東海SがGII昇格
◆1999年
・兵庫県競馬がサラブレッドによる競走を再開
・ジャパンダートダービー創設

【レース体系】
◆ダートグレード競走化したレース 1995〜
・東京大賞典(GI)
・東京盃(GII)
・川崎記念(GII)
・エンプレス杯(GII)
・ダイオライト記念(GII)
・群馬記念(GIII)
・マイルチャンピオンシップ南部杯(GI)
・オグリキャップ記念(GII)
・名古屋大賞典(GIII)
・開設記念(GIII。後の佐賀記念)
・フェブラリーS(GII)
◇1996〜
・(旧)3歳ダート三冠…ユニコーンS(東京/GIII)、スーパーダートダービー(大井/GII)、ダービーグランプリ(盛岡/GI)
※ジャパンダートダービーの創設により二冠目が変更、後に形骸化した
・かしわ記念(GIII)
・浦和記念(GII)
・クラスターC(GIII)
・グランシャリオC(旭川/GIII)
・名古屋優駿(東海ダービー)(GIII)
・東海菊花賞(GII)
・武蔵野S(GIII)
・アンタレスS(GIII)
・シリウスS(GIII)
・プロキオンS(GIII)
・シーサイドS(GIII。後のエルムS)
◇1997〜
・全日本3歳優駿(GII)
・TCK女王盃(GIII)
・マリーンC(GIII)
・クイーン賞(GIII)
・さきたま杯(GIII)
・マーキュリーC(GIII)
・北海道スプリントC(GIII)
・北海道3歳優駿(GIII)
・全日本サラブレッドC(GIII)
・白山大賞典(GIII)
・黒船賞(GIII)
・ガーネットS(GIII。カペラSの前身)
◇1998年〜
・NTV盃(GIII。後のGII日本テレビ盃)
・スパーキングレディーC(GIII)
・エーデルワイス賞(GIII)
・さくらんぼ記念(上山/GIII)
◇1999年〜
・ジャパンダートダービー(大井/GI)…新設競走。東京王冠賞に変わって南関東三冠の最後の一冠となる
・兵庫ジュニアグランプリ(GIII)
・かきつばた記念(GIII)
・サラブレッドチャレンジC(金沢/GIII)

【活躍した血統】
ジェイドロバリー、グリーンマウント、グランドオペラ、ナグルスキー、ワカオライデン

ライブリマウント

表彰NAR特別表彰
血統父 グリーンマウント(リファール系)
母父 ファーザーズイメージ(ハイペリオン系)
所属栗東
戦績31戦10勝[10-4-2-15]
主な勝ち鞍DG:帝王賞 南部杯 ブリーダーズGC
中央:フェブラリーS 東海ウインターS 平安S
産駒ミツアキタービン(ダイオライト記念)
ホクザンフィールド(兵庫大賞典)
ティアマット(岐阜金賞)
ミドリノオトメ(高知優駿)
※DG=ダートグレード競走。ここでは便宜上地方DG競走のみを指す

交流元年に口火を切って暴れ回った中央代表。

石橋守騎手(後のメイショウサムソン主戦)を背に1995年は連戦連勝。南部杯ではトウケイニセイがキャリア唯一の3着敗戦を許し、水沢競馬場は静まり返ったという。

交流元年はこの馬を中心にサラ系指定交流全てで中央馬が勝利したため、地方競馬界に激震が走った。

ホクトベガ

表彰NAR特別表彰
血統父 ナグルスキー(ニジンスキー系)
母父 フィリップオブスペイン(ハイペリオン系)
所属美浦
戦績42戦16勝[16-5-4-17]
主な勝ち鞍DG:川崎記念連覇 エンプレス杯連覇 帝王賞 南部杯 ダイオライト記念 浦和記念 群馬記念
中央:エリザベス女王杯 フラワーC フェブラリーS 札幌記念
記念競走スパーキングレディーC(ホクトベガメモリアル)(川崎JpnIII)

ライブリマウントと共に交流黎明期を荒らし回った怪物。ロジータを差し置いてダート最強牝馬とすら言う人もいる大名馬。この馬のヤバさは「ダート重賞で負けた事がない」の一言で説明できる。

ベガが牝馬二冠を達成し、三冠が期待されていたが本馬がベガを倒し「ベガはベガでもホクトベガです!」と実況される。
その後芝で不調に陥り、なんとなくエンプレス杯に出したら18馬身差で圧勝した。
で、なんやかんやで(ダートでは)10連勝したのだが…

ダートGI最高峰のレース・ドバイワールドカップに招待され、不調を押しながら出走した結果、不運な事故が重なり骨折。星になってしまった。横山典弘騎手のポツン騎乗はこの事故がきっかけの一つでもある。

ライデンリーダー

表彰NAR特別表彰
血統父 ワカオライデン(ボールドルーラー系)
母父 ネプテューヌス(テディ系)
所属笠松
戦績24戦13勝[13-1-2-8]
主な勝ち鞍地方:東海チャンピオンシップ ジュニアグランプリ ゴールドウイング賞 中京盃 サラ・プリンセス特別
中央:報知杯4歳牝馬特別(GII)
記念競走ライデンリーダー記念(笠松SPI)

中央馬が地方馬に絶望を与えた裏で、中央に衝撃を与えた地方馬もいた。

ライデンは笠松で無敗のまま連勝を重ね中央に殴り込み、安藤勝己を背に現フィリーズレビューをレコードで制覇、牝馬三冠を皆勤した。

中央馬との激しい戦いがきっかけで鞍上のアンカツはやる気に火がつき、その後の中央移籍、キングカメハメハなどでの活躍、地方騎手の中央移籍ブームにつながる。

アブクマポーロ

表彰NAR年度代表馬(1997-98)
血統父 クリスタルグリッターズ(ブラッシンググルーム系)
母父 ペール(トウルビヨン系)
所属大井→船橋
戦績32戦23勝[23-3-3-3]
主な勝ち鞍DG:川崎記念連覇 帝王賞 東京大賞典 ダイオライト記念連覇 NTV盃 かしわ記念
中央:東海ウインターS
地方:グランドチャンピオン2000連覇 大井記念 マイルグランプリ サンタアニタT

地方最強馬と未だに語られる、シンザンのような存在。
32戦23勝を南関東で挙げるすごさがここまで読んだ方なら分かるはず。

JRAのダートGIIを制した地方馬も、ダートグレードを複数回制した地方馬も、ダートGIを複数回制した地方馬も、GI川崎記念を持ったまま楽勝したのも恐らくこの馬が初。

ライブリマウント、ホクトベガが引退しスター不在となったダート路線をメイセイオペラと共に席巻した。

メイセイオペラ

表彰NAR特別表彰
血統父 グランドオペラ(ニジンスキー系)
母父 タクラマカン(テディ系)
所属岩手
戦績35戦23勝[23-2-2-8]
主な勝ち鞍DG:帝王賞 南部杯 マーキュリーC
中央:フェブラリーS
地方:東北ダービー 不来方賞 桐花賞 北上川大賞典連覇 みちのく大賞典連覇 シアンモア記念
記念競走マーキュリーカップ(メイセイオペラ記念)(盛岡JpnIII)

そんなアブクマ相手に南部杯にて地元代表として勝利をもぎ取った水沢の英雄。当時の地方競馬は彼らの独壇場だった。

1999年。頂点に立つアブクマポーロは東海ウインターS制覇のあと、フェブラリーSではなく、連覇のかかる川崎記念に挑んだ。その様子がさっきの動画。

対してメイセイオペラが挑んだのが、川崎記念の3日前のフェブラリーS。手薄なメンバーとはいえ、2馬身突き放しての完勝だった。

中央交流解放から四半世紀経つが、地方所属馬で中央GIを勝てた馬はこの馬以外に存在しない

コンサートボーイ

血統父 カコイーシーズ(レイズアネイティヴ系)
母父 ハンターコム(ネアルコ系)
所属北海道→川崎→大井
戦績39戦11勝[11-9-8-11]
主な勝ち鞍DG:帝王賞
地方:マイルグランプリ連覇 東京記念 金盃 報知グランプリC
産駒ザオリンポスマン(吉野ヶ里記念)

地方馬として初めて交流GIを制覇した馬

南関東三冠レースを全て2着で終えるほどの善戦マンだった彼だが、後の日本競馬最多勝ジョッキー・的場文男の手に導かれ帝王賞を制覇するに至った。

後に最強の座に君臨するアブクマポーロ、中央代表バトルラインら3頭の後続を9馬身離した熾烈なデッドヒートは、歴史に残る名勝負とされている。

ファストフレンド

表彰NAR特別表彰
血統父 アイネスフウジン(エルバジェ系)
母父 ノーザンテースト(ノーザンダンサー系)
所属美浦
戦績38戦15勝[15-4-7-12]
主な勝ち鞍GI:帝王賞 東京大賞典
GII:エンプレス杯連覇 東海S 東海菊花賞
GIII:マリーンC スパーキングレディーC クイーン賞
産駒フォーティファイド(大井記念)

アイネスフウジンの娘。
迷実況「ファストフレンドは届かにゃいっ!!」のせいでネタにされがちだが、帝王賞を先行押し切り、東京大賞典を差し切り、エンプレス杯も連覇している名牝中の名牝。

その他

シンコウウインディ

第1回GIフェブラリーS覇者。よく他馬を噛みに行く。鞍上はルドルフの岡部さん。今の所この時代の競走馬で唯一ウマ娘化している。

引退後はダーレースタリオンで当て馬の仕事をしている。たぶん今活躍してるパイロ産駒の生まれた背景にはウインディの陰の努力がある。

キョウトシチー

シチー冠の中では聞き馴染みが薄いかもしれないが、「GI未勝利馬獲得賞金ランキング」ではディープボンドに次ぐNo.2。(とは言っても翌年からGIの東京大賞典勝ってる)
サッカーボーイ産駒。つまりトプロと同じ父。

芝の牝馬での活躍が多かった松永幹夫騎手の活躍の場を広げた牡の相棒。

トーヨーシアトル

ナイスネイチャ主戦の松永昌博騎手を背に本格化し平安Sをシンコウウインディと1着同着。その後は鳴かず飛ばずだったが同年の年の瀬に急に復調し、キョウトシチーとの鞍上松永対決を制し東海菊花賞、東京大賞典を制覇。

東京大賞典では人気絶頂のアブクマポーロを3馬身以上突き放してゴールした。


その他の中央馬としてはGIII4勝の素質馬バトルライン、一瞬で本格化し急逝した南部杯勝ち馬ニホンピロジュピタ、フクキタルと同期の(GII・東海)菊花賞馬マチカネワラウカドなどが有名。

ブライアンズロマン

名前の通りブライアンズタイム産駒。栃木県競馬で常勝無敗の連勝を続け、上山の交流GIIIさくらんぼ記念を制覇した「栃木の怪物」。

通算43勝はサラブレッドとしては当時の日本記録だった。


他の主な地方の活躍馬はアマゾンオペラ、サプライズパワーなど。

00年代前期

徐々にダート路線が整備され、中央馬に風が吹き始めた時代。数多くの地方競馬場が閉場したことも大きな要因となった。

この時代のトピック

◆2000年
・国際招待競走「ジャパンカップダート」創設(後のチャンピオンズC)
◆2001年
・第1回JBC開催
・トーシンブリザードが史上初の南関東無敗三冠達成
・中津競馬場廃止
◆2002年
・東京王冠賞廃止
・新潟公営競馬廃止。三条競馬場は閉場、新潟競馬場は中央専門の競馬場となる
・日本テレビ盃、かしわ記念がGII昇格
◆2003年
・足利競馬場、上山競馬場廃止
・笠松競馬の安藤勝己騎手がJRAに移籍
・ハルウララブーム到来
・全日本2歳優駿がGI昇格
◆2004年
・高崎競馬場廃止
・兵庫CSがGII昇格
◆2005年
・宇都宮競馬廃止…北関東競馬完全廃止となった
・高崎競馬をモデルにしたNHK朝ドラ「ファイト」放送開始
・かしわ記念がGI昇格

【ダートグレード競走化したレース】
◇2000〜
・関東オークス(GIII)
・兵庫チャンピオンシップ(GIII)
・朱鷺大賞典(GIII)
◇2001〜
・JBCクラシック(GI)
・JBCスプリント(GI)
・名古屋グランプリ(GII)
・兵庫ゴールドトロフィー(GIII)
・サマーチャンピオン(GIII)
・とちぎマロニエカップ(GIII)

【廃止されたダートグレード競走】
朱鷺大賞典、とちぎマロニエカップ、さくらんぼ記念、グランシャリオカップ、サラブレッドチャレンジカップ、全日本サラブレッドカップ、名古屋優駿、オグリキャップ記念
※このうち全日本サラブレッドカップは笠松グランプリ、名古屋優駿は東海ダービーへと名前を変更し、オグリキャップ記念と共に地方馬限定競走となった

【活躍した血統】
アジュディケーティング、ブライアンズタイム、アフリート、カコイーシーズ

ウイングアロー

表彰JRA賞最優秀ダートホース(1998,2000)
血統父 アサティス(ノーザンダンサー系)
母父 ミスターシービー(テスコボーイ系)
所属栗東
戦績30戦11勝[11-7-5-7]
主な勝ち鞍GI:中央春秋ダートGI連覇(フェブラリーS、JCD)
GII:ブリーダーズGC連覇 スーパーダートダービー
GIII:ユニコーンS 名古屋優駿 グランシャリオC
産駒ウマノジョー(大井記念)
ロングウェーブ(戸塚記念)
サイレントエクセル(ひまわり賞)

最強98世代のダート王者担当。中央で行われる2つのダートGIを同一年に連覇した。でも地方のGIではあまり成績が奮わなかった。

↑のフェブラリーSでは血迷ったキングヘイローも出走し敗北しているが、直後に芝GIで他馬をまとめて撫で斬っている。

クロフネ

表彰JRA賞最優秀ダートホース(2001)
血統父 フレンチデピュティ(ノーザンダンサー系)
母父 クラシックゴーゴー(フェアウェイ系)
所属栗東
戦績10戦6勝[6-1-2-1]
主な勝ち鞍ダート:ジャパンカップダート 武蔵野S
芝:NHKマイルカップ 毎日杯
産駒カレンチャン(春秋スプリント)
アップトゥデイト(春秋障害GI連覇)
ソダシ(VM)
ホエールキャプチャ(〃)
ママコチャ(スプリンターズS)
アエロリット(NHKマイルカップ)
ホワイトフーガ(JBCレディスクラシック連覇)
ユキチャン(関東オークス)
BMSクロノジェネシス(春秋グランプリ3連覇)
ノームコア(香港カップ)
レイパパレ(大阪杯)
ヴェラアズール(ジャパンカップ)
スタニングローズ(秋華賞)
イロゴトシ(中山グランドジャンプ)
スルーセブンシーズ(凱旋門賞4着)

GI2勝。名種牡馬かつ圧倒的名競走馬。
芝でアグネスタキオンらと争っていたが、ひょんなことからダートに出走し覚醒した。

日本ダート界最強馬論争を繰り広げた時に、真っ先に名が上がる馬。次元が違いすぎる。
比較対象は国内馬ではなく米国最強馬セクレタリアトなどになってくるほどスピード、持ちタイムが違う。

どれくらい次元が違うかというと、↑のレースで大きく引き離された2着が前年の同レース覇者ウイングアローだ。恐怖すら感じる強さ。

トーシンブリザード

表彰NARサラブレッド系3歳最優秀馬(2001)
血統父 デュラブ(ノーザンダンサー系)
母父 ブレイヴェストローマン(ネヴァーベンド系)
所属船橋
戦績30戦9勝[9-3-5-13]
主な勝ち鞍DG:ジャパンダートダービー かしわ記念(GII) 全日本2歳優駿(GII)
地方:東京ダービー 羽田盃 京浜盃

船橋の英雄。無敗で連勝を続け、ジャパンダートダービーでは中央の馬がいながら単勝1.0倍という圧倒的人気で迎えられ、快勝。南関東無敗三冠馬となった。

その後は骨折し全盛期の力を取り戻すことは出来なかったが、かしわ記念を制覇するなど底力は見せつけた。東京王冠賞最後の勝者であり、最初で最後の南関東四冠馬。その強さは地方競馬史に色濃く刻まれている。

この馬が最初で最後の南関東無敗三冠馬だと思われていた。つい最近までは。

トーホウエンペラー

表彰NAR年度代表馬(2001-02)
血統父 ブライアンズタイム(ロベルト系)
母父 ノーリュート(リュティエ系)
所属岩手
戦績33戦20勝[20-5-2-6]
主な勝ち鞍DG:東京大賞典 南部杯 名古屋大賞典 朱鷺大賞典
地方:桐花賞 青藍賞連覇 シアンモア記念
産駒クレイアートビュン(マイルグランプリ)
レイズミーアップ(中島記念)
ブラックスキャット(新春ペガサスC)etc
記録地方競馬リーディングサイアー(2012,15-21)

その名の通り東北の帝王として00年代の岩手競馬の頂点に君臨した馬。

王者不在の東京大賞典を制覇しGI馬になると、岩手の代表として南部杯で中央勢を迎え撃ち、史上稀に見る地元馬ワンツーフィニッシュを飾った。

ちなみに毛色は珍しい青毛(全身真っ黒)だった。青毛のダートグレード勝ち地方馬はこの馬だけ。

アグネスデジタル

表彰JRA賞最優秀4歳以上牡馬(2001)
血統父 クラフティプロスペクター(ミスタープロスペクター系)
母父 チーフズクラウン(ダンジグ系)
所属栗東
戦績32戦12勝[12-5-4-11]
主な勝ち鞍ダート:フェブラリーS 南部杯 全日本3歳優駿(GII) ユニコーンS 名古屋優駿 日本テレビ盃
芝:香港カップ 天皇賞(秋) マイルCS 安田記念
産駒カゼノコ(JDD)
ヤマニンキングリー(札幌記念)
アスカノロマン(東海S)
トーセンガーネット(南関東牝馬二冠)
BMSディアドムス(全日本2歳優駿)
サウンドキアラ(阪神牝馬S)
シャマル(東京スプリント)
エイシンニシパ(重賞15勝)
アザワク(グランシャリオ門別スプリント3連覇)

GI/JpnI6勝。ダート馬と言っていいのか分からないが、南部杯とフェブラリーSを制しているスーパーオールラウンダー。

この馬が天皇賞に出る事になったからクロフネが賞金面と外国産馬出走枠の関係で弾き出され、仕方なく武蔵野Sに出て日本レコードを叩き出した。そうはならんやろ普通。

アドマイヤドン

表彰NAR特別表彰
血統父 ティンバーカントリー(ミスタープロスペクター系)
母父 トニービン(ゼダーン系)
母 ベガ
半兄 アドマイヤベガ
所属栗東
戦績25戦10勝[10-3-2-10]
主な勝ち鞍GI:JBCクラシック3連覇 フェブラリーS 帝王賞 南部杯 朝日杯FS
GIII:エルムS
産駒アルバート(ステイヤーズS3連覇)
アドマイヤデウス(日経賞)

GI/JpnI7勝(当時最多)。
アドマイヤベガの弟で、朝日杯に勝ち三冠を皆勤し菊花賞出た後、JBCに出て7馬身差圧勝した癖の強い馬。その後もJBCクラシックを三連覇した。晩年は種牡馬として韓国で繋養されていた。

(ちなみに蛍光灯に変身できる特殊能力を持っている。詳しくは「アドマイヤドン 蛍光灯」で検索)

タイムパラドックス

表彰NAR特別表彰
血統父 ブライアンズタイム(ロベルト系)
母父 アルザオ(リファール系)
所属栗東
戦績50戦16勝[16-7-8-19]
主な勝ち鞍GI:JCダート JBCクラシック連覇 帝王賞 川崎記念
GII:ブリーダーズGC
GIII:平安S アンタレスS 白山大賞典
産駒ソルテ(さきたま杯)
トウケイタイガー(かきつばた記念)

GI/JpnI5勝。アドマイヤドンと同じ厩舎。武豊を乗せてダート中距離路線を統一した。

この馬はとにかく晩成で、初めての重賞制覇が6歳。(その頃には同期のタキオン、ジャンポケ、クロフネ、マンカフェは全て引退しており、なんならこの年にダイワスカーレットが生まれていた)

そこから数年に渡り全盛期は続き、日本初の8歳馬によるGI制覇を達成した

引退後は血縁関係ないのにそっくりなスズカフェニックスというGI馬とずっと仲良く暮らしていた。

ゴールドアリュール

表彰NAR特別表彰
血統父 サンデーサイレンス(ヘイルトゥリーズン系)
母父 ヌレイエフ(ノーザンダンサー系)
所属栗東
戦績16戦8勝[8-1-1-6]
主な勝ち鞍地方:東京大賞典 JDD ダービーグランプリ
中央:フェブラリーS
産駒エスポワールシチー(かしわ記念3勝)
コパノリッキー(〃)
スマートファルコン(東京大賞典連覇)
ゴールドドリーム(中央春秋ダートGI連覇)
クリソベリル(チャンピオンズカップ)
クリソライト(JDD)
ナランフレグ(高松宮記念)
サルサディオーネ(日本テレビ盃)
タガノゴールド(園田金盃)
BMSオメガパフューム(東京大賞典4連覇)
ハービンマオ(関東オークス)
記録地方競馬リーディングサイアー(2010-11,14)

GI/JpnI4勝。ダートでは9戦7勝。日本ダービーをタニノギムレットの5着と惜敗した後、武豊を背にジャパンダートダービーとダービーGPを連勝。

以降も無敵の強さだったが故障して種牡馬入りすると大成功を収める。今ではスマートファルコンやコパノリッキー、エスポワールシチー、クリソベリルなど、数え切れないほどのGI馬の父になったキングメイカー。高松宮記念勝ち馬ナランフレグの父でもある。

サウスヴィグラス

表彰NAR特別表彰
血統父 エンドスウィープ(フォーティナイナー系)
母父 スタードナスクラ(ナスルーラ系)
所属美浦
戦績33戦16勝[16-8-2-7]
主な勝ち鞍地方:JBCスプリント 北海道スプリントC連覇 黒船賞 かきつばた記念 クラスターC
中央:根岸S連覇
産駒ヒガシウィルウィン(ジャパンダートダービー)
サブノジュニア(JBCスプリント)
コーリンベリー(〃)
ラブミーチャン(全日本2歳優駿)
テイエムサウスダン(兵庫ジュニアGP)
ケラススヴィア(南関東牝馬二冠)
キングプライド(重賞17勝)
キラットダイヤ(早池峰スーパースプリント3連覇)
BMSサントノーレ(京浜盃)
ヒカリオーソ(東京ダービー)
記録地方競馬リーディングサイアー(2012,15-21)

地方競馬史に残る伝説の種牡馬。

デビューしてから数年はダート短距離で善戦止まり。しかしこの馬も6歳になって本格化。

勝ち癖がついて根岸S制覇後に出たGIIIは無敗。骨折などの頓挫もあったがGIIIに限定すると7連勝し、東京盃で2着のあと本気仕上げのJBCスプリントでハナ差1着。大団円で種牡馬入り。


種牡馬としては初年度から大人気。安価すぎる種付け料(初年度50万〜全盛期でも150万)の割に産駒がめっちゃ走った。初年度は地方GIII勝ち馬、2年目は中央GIII勝ち馬、3年目は地方GI勝ち馬…といった具合で活躍馬が続出。2010年には200頭以上に種付けしたが、特に勝率が落ちることもなかった。

むしろ産駒が増えたので10年代は彼が種牡馬リーディングの頂点。地方の年間産駒勝利数は1位の馬でも200後半行けたら良い方だったのだが、彼は14〜20年まで年間産駒勝利数400勝オーバーという驚異的な成績を叩き出した。

なお、これは地方のみの記録なので中央も合わせると年間500近い勝ち鞍を量産していたことになる。


23年8月現在、彼の産駒が地方と中央で積み上げた勝利数は5400勝弱。もちろん国内の歴代種牡馬でぶっちぎりの1位だ。2位クロフネ約4700勝、3位キングカメハメハ約4500勝、4位ゴールドアリュール約4150勝、5位ブライアンズタイム約4000勝と比較しても圧倒的。

中央競馬がサンデーサイレンス→ディープインパクト全盛期だった頃、地方競馬はずっとサウスヴィグラスが支えていたのだ。

その他

◆中央

ブロードアピール

時はYouTube黎明期。最も多く再生されていた競馬の動画は、トウカイテイオーの有馬記念でも、その他GIレースでもなく、ブロードアピールの根岸Sとディープインパクトの若駒Sだった。

無断転載のため今は元動画の大半が消されているが、全て合計したら1000万再生は下らなかっただろう。(ちなみに今のJRA公式レース動画で1番再生されてるのはイクイノックスのドバイシーマで124万。なんで?)

競馬を知らない人まで沼に引きずり込んだ強烈な追い込みと神実況。その裏には面白い過去があった。

ブロードアピールは後にディープインパクトやキングカメハメハ、ソダシで有名になる金子オーナーが活動初期に持ってた馬。

メジロドーベルやタイキシャトルらと同期だが、実際にデビューしたのはなんと4歳秋。デビュー以降は順調に芝で連勝を続け、5歳春にはオープン入りし、6歳春には強烈な追込みで重賞を制覇したものの、以降は足踏みが続き更に上を目指すのは厳しくなっていた。

そんな時に出たレースが↑の根岸S。武豊の弟、武幸四郎に導かれ強烈な追込みで差し切り勝ちを収めたのだった。

余談だが、このレースの後武幸四郎は調教師に叱られている。というのも、追込みは馬にかかる負荷が半端ないからだ。(テイエムオペラオーも皐月賞の追込の後反動が出たため、以降は戦法ごと封印している)それに加え、ダートと短距離では追込みの成功率が極端に低い。ダート短距離ともなれば尚更。しかしこの馬は後方一気でしか持ち味を出せない変な馬だったので、鞍上が変わってもひたすら後ろから追い上げていた。

こんなピーキーな戦い方しててダートでは馬券内率100%。しかもサウスヴィグラスを2度倒している。にわかには信じがたい。

その後8歳牝馬による中央重賞制覇の大偉業を成し遂げ、ドバイGIで5着と好走し引退した彼女は、孫世代でダービー馬ワグネリアンを出し、亡き今も影響力を保ち続けている。

なお

こいつも子孫の1頭である。今後の活躍に期待しよう。

スパイキュール

ここまでで紹介した馬で例えるなら「中央版ツキノイチバン」とでも言うべきか。ダートでは無敗のサンデーサイレンス産駒で、オープン戦を5馬身差圧勝のあと根岸Sを予定していたが、骨折であえなく引退となった。

種牡馬として地方重賞最多勝馬やエンプレス杯勝ち馬を出したが、近親にトーセンジョーダン、カンパニー、タスティエーラがいる馬としては物足りない。重賞で好成績を残せていたらまた違っただろうか。


その他中央馬ではクロフネに続き芝ダート二刀流をキメたイーグルカフェ、地方重賞を共に巡業したノボトゥルー&ノボジャックのノボノボコンビ、その名の通り地方GIにはだいたい顔出してたレギュラーメンバーなどがいる。

◆地方

ベラミロード

北関東最後の女傑とも呼ばれた名牝。NARグランプリ年度代表馬にして、最後の栃木三冠馬。

3歳時にもユニコーンS2着と非凡な成績を残していたが、4歳になり東京盃でDG再挑戦をすると、斤量の利があるとはいえ5馬身差圧勝。

翌年からJBCスプリントが始まる南関東において、東京盃は当時の短距離の最高峰。彼女はそれをあっさりと勝ち切ったのだ。しかもタイムはレコードタイ記録。未だに更新されていない。

翌年も当時は2000mだったTCK女王盃を逃げ粘り優勝。北関東代表として南関東で記憶に残る走りをみせた。

オースミダイナー

ルールを変える馬は、そのほとんどが名馬である。オースミダイナーもその中の1頭だった。

脚部不安を抱えながら中央で5勝したが、2年の長期休養の後、道営競馬で復帰。休み休み使いながら勝ちを重ね、なんと8歳で重賞初制覇

当時の道営競馬では9歳シーズンで引退の規定があったのだが、関係者やファンの要望が届き定年制が廃止。これ幸いと波に乗ったオースミダイナーは、8歳から5年連続で重賞制覇を成し遂げてしまう。しかも12歳で交流GIII北海道スプリントCを制覇ダートグレード最高齢勝利記録

2001年、13歳のエトワール賞が最後の重賞制覇。1000〜2100m、述べ10の重賞を制した。

かなり前にちらっと触れたメイショウホムラや二冠馬トウカイテイオーらが同期なので、そのロングランっぷりがお分かり頂けるだろう。

ロードバクシン

00年代からは兵庫もサラブレッド競馬を本格的に導入。他地区に追い付くべくDG競走の開設や馬資源の確保に勤しんでいた。その中で生まれた逸材が、サクラバクシンオー産駒ロードバクシンだった。

後に中央に移籍する小牧太を鞍上に、兵庫ジュニアGPこそ4着に敗れたが、対地元馬なら負け無しの連勝で園田ダービー制覇。同距離のGIII兵庫CSも中央勢相手に制し、菊水賞を勝ち、史上唯一の兵庫三冠を達成した。

その後も兵庫の重賞を勝ち続け、重賞12勝で現役引退…したのだが、種牡馬としての繁殖能力がなく、復帰。以降は悲しい結果になったが、今は養老牧場で余生を過ごしている。

この馬の馬主はロジータとイナリワンの父、ミルジョージを日本に輸入した実業家で、地方に度々素質馬を入厩させていた。あのロードホースクラブの前身の経営にも携わっており、今では彼のご子息が代表となっている。

ロード冠最強馬として短距離で活躍し、「サクラバクシンオーを超えた」とも言われたロードカナロアが、古馬時代のロードバクシンの主戦とも言える岩田康誠と共に戦ったのは、きっと偶然ではないだろう。

コスモバルク

純粋な地方馬ではないが、「マイネル」の岡田総帥が地方を盛り上げるために北海道競馬からデビューさせた素質馬であり「地方の星」。

地方で導入された認定厩舎制度(要するに外厩)を使って地方に所属しながら中央のレースを走り続けた。

皐月賞2着、JC2着と惜しい競馬が続いたが、最終的にGIを制覇したのは異国の地、シンガポール。道営の五十嵐騎手を背に国際GIを制覇した。もちろんこれが史上唯一の地方馬の海外GI勝利となっている。

ハルウララ

全国各地の地方競馬場に不景気の波が押し寄せた00年代前半。その波に呑まれかけていたのが高知競馬だった。色々なしがらみもあって2003年に「あと1回でも単年度赤字を計上したら廃止」と通告され、かなり厳しい状況にあった。

そんな状況の中、実況の橋口アナが60連敗しているハルウララという馬に注目し、20近い連勝を積み立てていたイブキライズアップという馬と抱き合わせで売り出すと、高知新聞に記事が掲載された。また、高知競馬職員も藁にもすがる思いでハルウララの広報資料をマスコミに送りまくった結果…

なんと毎日新聞に記事が掲載され、その記事きっかけでフジテレビの朝の情報番組とくダネで大きく取り上げられたのだ。

その後もマスコミにより知名度は拡大、いつしか「リストラ時代の対抗馬」「負け組の星」として、ある種ハイセイコーと同じような広がり方で市民権を得ていった。そして、ハルウララの単勝馬券が「当たらない(交通安全)お守り」とされたり、連敗が注目されるという今じゃ考えられないような形で人気になった。

これには武豊も疑問を呈していたが、黒船賞でノボトゥルーに騎乗するついでにウララに乗ったら、1万人を超える観客の声援に胸を動かされ「こういうスターがいてもいいんだ」と思ったとか。

ウララ引退の後は高知競馬ブームも冷め、再び超緊縮財政の中で生存戦略を練ることになる。そして奇跡は起こった…(10年代前期につづく)

00年代後期

この時代でダート競馬が大きく変わった。

サンデーサイレンス、ブライアンズタイム系の産駒が猛威をふるう。

本格的に中央主権&二〜三強体制の時代へ。
世はまさにダート戦国時代

そんな中で中央の強豪たちに抵抗したのは、南関東の名馬たちだった。

この時代のトピック

◆2006年
・道営所属のコスモバルクがシンガポール航空インターナショナルCを優勝。地方所属馬による初の海外G1勝利
・チャームアスリープが史上初の南関東牝馬三冠達成
・関東オークスがGII昇格
◆2007年
・中央競馬の国際化に伴い地方競馬の独自グレードに“GI〜GIII”を使えなくなったため、“JpnI〜JpnIII”に変更。南関東も“SI〜SIII”に変更し、統一グレードとの併記を撤廃した。
・兵庫ジュニアGPがJpnII昇格
◆2008年
・旭川競馬場廃止
◆2009年
・東京スプリント(大井/JpnIII)新設
・レパードS(新潟/GIII)新設
・ヴァーミリアンが日本馬史上初のGI/JpnI8勝達成

【廃止されたダートグレード競走】
・ダービーグランプリ(交流GI)…数年後に地方馬限定競走として復活

【活躍した血統】
ブライアンズタイム、サンデーサイレンス

ブルーコンコルド

表彰NAR特別表彰
血統父 フサイチコンコルド(ニジンスキー系)
母父 ブライアンズタイム(ロベルト系)
所属栗東
戦績50戦15勝[15-9-1-25]
主な勝ち鞍GI/JpnI:南部杯3連覇 JBCスプリント(マイル)連覇 東京大賞典 かしわ記念
GII:京王杯2歳S(芝)
GIII:プロキオンS シリウスS 黒船賞

GI/JpnI7勝。今はYGGと名を変えたクラブ法人、ブルーマネジメントの所有馬。
若い頃はアドマイヤドンらに、晩年はヴァーミリアンらに圧倒されたが、短距離での強さを活かしてJBCスプリントやかしわ記念、南部杯などで活躍した。

10億円近く稼いで種牡馬になれなかったのはきっとこの馬だけ。当時のダート短距離路線の不人気さが窺い知れよう。

アジュディミツオー

表彰NAR特別表彰
血統父 アジュディケーティング(ダンジグ系)
母父 ジャッジアンジェルーチ(ボールドルーラー系)
所属船橋
戦績27戦10勝[10-5-2-10]
主な勝ち鞍DG:東京大賞典連覇 帝王賞 川崎記念 かしわ記念
地方:東京ダービー マイルグランプリ 東京湾C

GI/JpnI5勝。船橋の英雄。
中央の強豪だらけの中で孤軍奮闘した名馬。帝王賞でカネヒキリ(後述)相手にレコード勝ちしている。

当時あった南関東の古馬GIを完全制覇し、アブクマポーロでも成し得なかったダートGI5勝を達成した。これは中央馬を合わせてもアドマイヤドンに続き史上2頭目。地方馬として初めてドバイワールドCに出走もしている(大健闘の6着)。

主戦はゴルシでお馴染み内田博幸。この時はまだ大井の騎手だった。

フジノウェーブ

表彰NAR特別表彰
血統父 ブラックタイアフェアー(ミスタープロスペクター系)
母父 ストップザミュージック(ヘイルトゥリーズン系)
所属笠松→大井
戦績59戦23勝[23-7-5-24]
主な勝ち鞍交流重賞:JBCスプリント 東京盃
地方重賞:東京スプリング盃4連覇 東京シティ盃連覇 マイルグランプリ
記念競走フジノウェーブ記念(大井SIII)

地方馬として初めてJBCを制覇した馬

3歳までは普通の馬だったが、4歳春から1年間に渡って10連勝。その後さきたま杯と帝王賞で連敗するも、馬インフルエンザの関係でぶっつけ本番となったJBCスプリントで見事に勝利した。

以降も東京スプリング盃を4連覇するなど活躍し引退。不慮の事故で亡くなり、東京スプリング盃はフジノウェーブ記念と改称され、彼の主戦だった御神本訓史が22年に制覇した。

カネヒキリ

表彰JRA賞最優秀ダートホース(2005,08)
血統父 フジキセキ(サンデーサイレンス系)
母父 デピュティミニスター(ノーザンダンサー系)
所属栗東
戦績31戦15勝[15-10-3-3]
主な勝ち鞍GI/JpnI:ジャパンカップダート2勝 フェブラリーS 東京大賞典 川崎記念 JDD ダービーGP
GIII/JpnIII:ユニコーンS マーキュリーC
産駒ミツバ(川崎記念)
テーオーエナジー(兵庫CS)
スーパーステション(ダービーグランプリ)

GI/JpnI7勝。フジキセキ産駒最高傑作ともされる。
現役は6年間だが実稼働は3年半。常に故障と闘っていたが、ヴァーミリアンにだけは負けなかった。

全盛期はディープインパクトと同時期かつ鞍上が武豊で馬主も同じだったため「砂のディープインパクト」と呼ばれ、ディープ引退後はまだ純正フランス人だったルメール騎手の相棒になった。

ひたすら花をむしゃむしゃ食みまくることでお馴染みのGI勝ち誘導馬ミツバくんの父。

ヴァーミリアン

表彰NAR特別表彰
血統父 エルコンドルパサー(キングマンボ系)
母父 サンデーサイレンス(ヘイルトゥリーズン系)
半兄 サカラート
半弟 ソリタリーキング
所属栗東
戦績34戦15勝[15-5-1-13]
主な勝ち鞍GI/JpnI:JBCクラシック3連覇 川崎記念2勝 ジャパンカップダート フェブラリーS 東京大賞典 帝王賞
GII/JpnII:ダイオライト記念 浦和記念 名古屋グランプリ
GIII:ラジオたんぱ杯2歳S
産駒リュウノユキナ(東京スプリント2勝)

GI/JpnI9勝。ダイワスカーレットの親戚でエルコンドルパサーの子。
ダート馬ながらルドルフの「GI7勝の壁」を初めて超えた馬。この馬もまたJBCクラシックを三連覇している。

カネヒキリ同様、鞍上は基本的に武豊で時々ルメールだった。武豊全盛期。

フリオーソ

表彰NAR年度代表馬(2007,08,10,11)
血統父 ブライアンズタイム(ロベルト系)
母父 ミスタープロスペクター(ネイティヴダンサー系)
所属船橋
戦績39戦11勝[11-14-2-12]
主な勝ち鞍GI/JpnI:帝王賞2勝 川崎記念 かしわ記念 ジャパンダートダービー 全日本2歳優駿
JpnII:ダイオライト記念連覇 日本テレビ盃
産駒ヒカリオーソ(東京ダービー)
フリビオン(西日本ダービー)
記念競走フリオーソレジェンドカップ(南関東SIII)

GI/JpnI6勝。船橋の英雄。鞍上はまだ南関東所属だった戸崎圭太。
常にカネヒキリ、ヴァーミリアン、スマートファルコン、エスポワールシチーらに苦しめられていたが、大きく成績を崩すことなく常に上位争いに加わり続けた。その結果がGI2着11回。不憫。GI17連対は不滅の大記録である。

おかげで生涯獲得賞金は8億4544万6000円。アブクマポーロをわずかに抜いて地方所属馬の最高記録となった。

これだけの戦績は馬主がゴドルフィン(ドバイやヨーロッパを本拠地とする超巨大競馬グループ)という金銭面での強みと、外厩のミッドウェイファームを使って調整していた事も要因の一つだろう。外厩面はコスモバルクの活躍のおかげで拡大したので、様々な要因が積み重なった結果、南関東の雄になれた。

南関東総大将として長年中央馬と戦い続けた功績を評し、2013年から「フリオーソレジェンドカップ」という準重賞(中央でいうOP戦)が開催されていたが、23年に重賞に昇格した。めでたい。

サクセスブロッケン

血統父 シンボリクリスエス(ロベルト系)
母父 サンデーサイレンス(ヘイルトゥリーズン系)
所属栗東
戦績19戦7勝[7-2-3-7]
主な勝ち鞍フェブラリーS 東京大賞典 ジャパンダートダービー

同期のファルコンをも圧倒する強さを持っていたが、故障により早期引退。種牡馬にはなれず誘導馬になった。なぜか公式Facebookが関西弁だったので濃いキャラ付けになっている。
この馬を深く知ろうとすると某ネットミームのせいで「!」6個を見るだけでサクセスブロッケンを想起してしまう病にかかる。

その他

シーキングザダイヤ

パールの子。GI/JpnIで2着9回。なのに勝てず。
種牡馬として南米に輸出され、ダービー馬を輩出したりと大活躍。パート1国(レベル高い国)チリのリーディングサイアーに2度輝いている。同じくブラジルで神がかりの成績を残しているタキオンの同期アグネスゴールドと2頭で日本の血脈を世界に拡げた。

ユートピア

GI/JpnI4勝。名前的に牝馬っぽいが♂。
金子さんの所有馬だったがドバイのマイルGIIゴドルフィンマイルに勝利し、海外にトレードされた。

カジノドライヴ

親戚にアメリカダートGI馬が大勢いるので期待されながら渡米したが、残念ながらGII勝ち止まり。いい結果は残せなかった。それでも種牡馬入りするとカジノフォンテンとメイショウカズサの父になった。

アロンダイト

2006年ジャパンカップダート。本命はシーキングザダイヤか、ブルーコンコルドかで割れているところを重賞初挑戦の馬が颯爽と差し切った。未勝利から5連勝でGI馬に。魔剣の名に相応しい勝利だったが、その後は骨折などもあって未勝利で引退。

乗馬になったが、1つ上の姉がGI馬を3頭輩出した大化け物だったため、この馬も種牡馬になれたら時代を作っていたかもしれない。

ボンネビルレコード

地方でデビューし地方で引退するが、全盛期は中央所属で鞍上は大井の帝王というややこしい遍歴。

大井時代はあと少しGIに手が届かなかった所を、中央の施設やトレーニングメニューで強化し、南関東の絶対的エース、的場文男が乗ることでGIを2つ手にした。引退後は大井の誘導馬になった。


その他有名な地方馬には史上初の南関東三冠牝馬に輝いたチャームアスリープなどがいる。

10年代前期

カネヒキリ&ヴァーミリアンからナチュラルに世代交代したため中央の勢いは変わらず。フリオーソは板挟みに遭っていた。

震災の影響もあり地方競馬は存続の危機に危ぶまれる地区も多数。ますます南関東とそれ以外の構図が色濃くなった。

血統的にはゴールドアリュール全盛期。アリュールかキンカメ系の中央馬が頂点の時代がしばらく続く。

この時代のトピック

◆2010年
・みやこS(京都/GIII)新設
・関東オークスがGII昇格
・ヴァーミリアンが自身の持つGI/JpnI最多勝記録を9に更新
◆2011年
・ヴィクトワールピサがオールウェザー開催のドバイワールドカップを制覇
・JBCレディスクラシック、レディスプレリュード、オーバルスプリント(第1回〜2回は格付け無し)新設
・さきたま杯がJpnII昇格
・東京大賞典が国際GI化
・荒尾競馬場が廃止
◆2013年
・JBCレディスクラシック、レディスプレリュード、オーバルスプリントがそれぞれJpnI、JpnII、JpnIIIに格付け
・福山競馬場が廃止

【活躍した血統】
ゴールドアリュール、シンボリクリスエス、クロフネ、サウスヴィグラス

エスポワールシチー

表彰JRA賞最優秀ダートホース(2009,10)
血統父 ゴールドアリュール(サンデーサイレンス系)
母父 ブライアンズタイム(ロベルト系)
所属栗東
戦績40戦17勝[17-10-3-10]
主な勝ち鞍GI/JpnI:かしわ記念3連覇 南部杯3連覇
ジャパンCダート フェブラリーS JBCスプリント
GIII/JpnIII:マーチS みやこS 名古屋大賞典
産駒イグナイター(JBCスプリント)
ヴァケーション(全日本2歳優駿)
ペイシャエス(名古屋グランプリ)
ケイアイドリー(北海道スプリントC)
スマイルウィ(京成盃グランドマイラーズ)
ショウガタップリ(西日本ダービー)

GI/JpnI9勝。
ダートGI5連勝という化け物じみた快進撃で一躍ダートのヒーローになった馬。
鞍上の佐藤哲三騎手は彼を「エスポくん」と呼び愛でていた。

勝利数は多いながらも距離適性は1400-1800までのマイラーであった。

同期にサクセスブロッケン!!!!!!とスマートファルコンがいる。

スマートファルコン

表彰NARダートグレード競走特別賞(2010,11)
血統父 ゴールドアリュール(サンデーサイレンス系)
母父 ミシシッピアン(ハイペリオン系)
所属栗東
戦績34戦23勝[23-4-1-6]
主な勝ち鞍GI/JpnI:東京大賞典連覇 JBCクラシック連覇 帝王賞 川崎記念
JpnII:浦和記念2勝 ブリーダーズGC ダイオライト記念 日本テレビ盃
JpnIII:さきたま杯連覇 かきつばた記念連覇 名古屋大賞典 兵庫ゴールドT 佐賀記念 白山大賞典
産駒オーヴェルニュ(東海S)
シャマル(東京スプリント)
ティーズダンク(戸塚記念)

GI/JpnI6勝。
晩年は大井だと強すぎてドン引くレベルだった。
08〜10年あたりはカネヒキリ、ヴァーミリアン、エスポが地方GIを荒らし、ファルコンがGII〜GIIIを荒らし続けたとんでもない時代だった。
地方ドサ回り行脚の甲斐あって重賞19勝と当時の日本最多勝記録を樹立。

坂の無いコースでの爆速逃げは誰も止められなかった。未だに大井2000mのレコードはこの馬が保持している。

ゴルトブリッツ

血統父 スペシャルウィーク(サンデーサイレンス系)
母父 シーキングザゴールド(ミスタープロスペクター系)
所属美浦→門別→栗東
戦績19戦10勝[10-1-2-6]
主な勝ち鞍地方:帝王賞 マーキュリーC
中央:アンタレスS

父方も母方もディープインパクトにかなり近い親戚。
スペシャルウィーク産駒としては珍しくダートで強い馬で、挫折を経ながらも帝王賞であのエスポを突き放して勝利し、世代交代を予感させたが亡くなった。

生きていれば世代最強は間違いなかったし、スペシャルウィークの血はもっと受け継がれていたはず。
彼のぶんもクラウンプライドに期待するしかない。

トランセンド

表彰JRA賞最優秀ダートホース(2011)
血統父 ワイルドラッシュ(ニアークティック系)
母父 トニービン(ゼダーン系)
所属栗東
戦績24戦10勝[10-5-1-8]
主な勝ち鞍GI/JpnI:ジャパンCダート連覇 フェブラリーS 南部杯
GIII:みやこS レパードS
産駒ジェミニキング(阪神スプリングジャンプ)
ゴールドホイヤー(羽田盃)
トランセンデンス(〃)

GI/JpnI4勝。中央ダート専門家。
地方競馬場では苦戦したが、東京やドバイなどの直線の長い大箱ではかなりいい成績を残した。ドバイでのヴィクトワールピサとの激走は感動もの。

ワンダーアキュート

血統父 カリズマティック(ストームバード系)
母父 プレザントタップ(リボー系)
半兄 ワンダースピード
所属栗東
戦績48戦13勝[13-10-8-17]
主な勝ち鞍JpnI:帝王賞 JBCクラシック かしわ記念
GII/JpnII:東海S 日本テレビ盃
GIII:武蔵野S シリウスS
産駒アキュートガール(新春賞)

GI/JpnI3勝。大井で無敵の強さを誇っていたファルコン相手にハナ差まで迫り、ファルコンらが引退した後はタルマエらニュースターに苦しめられ続けた。
その度に和田竜二に闘魂注入され続け幾星霜。

9歳での平地GI級競走制覇は最高齢記録
ウマ娘でもおばあちゃんキャラである。

何気に大井、川崎、船橋とそれぞれ違うコースでJpnIを制覇している万能型。ズブいけど。

その他

◆中央

ミラクルレジェンド

フジキセキ産駒。芝を諦めダートに挑んで3連勝でJDDに挑むも4着。その後は重賞を勝ちつつ翌年の第1回JBCレディスクラシックに向けて準備。

前哨戦のレディスプレリュードでは圧倒的1番人気だったかしわ記念2着経験持ち関東オークス勝ち馬ラヴェリータをもろともせず、本番もラヴェリータとワンツーフィニッシュを決めた。

翌年も連覇で飾って重賞8勝で引退。対牝馬戦においては無敵の強さだった。惜しむらくはレディスクラシックとが創設直後でJpnI格付けじゃなかったこと。でも実質GI馬だ。

ニホンピロアワーズ

この馬にまつわるドラマはニコニコ大百科に書いてあるのでそちらをどうぞ。

その他中央馬は川田将雅を鞍上にJBCスプリントを連覇した素質馬スーニや、エスポらの上位争いにいつも参入していたテスタマッタ、キングヘイロー産駒の女王メーデイアやダート転向で結果を出した日本ダービー3着馬ベルシャザールなど多数。

◆地方

ラブミーチャン

サウスヴィグラス産駒。風水とコパノリッキーでおなじみDr.コパさんの所有馬。こんな名前になったのはアストンマーチャンの馬主と交友関係があるのでそれにあやかった面も多少あるらしい。

当時の地方競馬はフリオーソ一強状態だったが、デビューから無敗5連勝でJpnIを制覇し、NAR年度代表馬の座を2歳馬として初めて手にした。

笠松所属なのでライデンリーダーをなぞってフィリーズレビューに殴り込んだが…そう上手くはいかなかった。その後はコツコツと重賞を積み重ね、DG5勝、重賞16勝で骨折引退。引退の直後に主戦の濱口騎手が心筋梗塞で死去するという、なんとも不運な最後となってしまった。

オオエライジン

かつてはアラブ系の最高峰とされていた兵庫。兵庫三冠馬ロードバクシン、佐賀記念勝ち馬チャンストウライと、兵庫生え抜きの活躍馬はちらほら出てきてはいたが、地方の最高峰、南関東で活躍出来るほどのサラブレッドは育っていなかった。その壁をぶち壊したのがキングヘイロー産駒、オオエライジンだった。

黎明期の中央競馬最強馬クリフジの血を引くライジンは、まさにクリフジのような連勝劇で無敗の兵庫ダービー馬になった。その後も大井、笠松、川崎で地方重賞を制覇し、南関東でも結果を残した。残るはダートグレード制覇だけだったライジンだが、帝王賞で骨折、予後不良となってしまった。

グランシュヴァリエ

ウララブームの後、高知競馬の人気はひたすらに落ち込んでいた。
地方馬が高知に飛ばされるのはさながら島流し。地方の中でレベル分けするなら高知は断トツ最下級。そりゃ高知優駿(ダービー)の1着賞金が27万なんだから当然だ。それ程に高知の資金は底をついていた。

2010年、そんな高知に中央で3勝を挙げた馬が移籍してきたのだ。今なら普通にある話だが、当時としては破格のトレードだった。

その馬は屈腱炎で中央残留の望みを絶たれた馬。名はグランシュヴァリエ。偉大な騎士の名の通り、高知の守護者として戦い切った彼の転機は、転厩先の手厚いケアから始まった。

元より故障や脚部不安の馬を扱う事の多かった雑賀厩舎のスタッフは懸命に患部のケアに励みながら、なんと初戦は川崎の重賞に出た。しかも2着だった。屈腱炎を抱えながらこの力走は目を見張るものがある。

その後もオグリキャップ記念で東海地区の大将ヒシウォーシイと戦ったり、帝王賞でフリオーソの激走を見届けたりしながら迎えたJpnI、MCS南部杯。単勝1.0倍のエスポワールシチーが2着に敗れた後ろで、単勝636.3倍の彼が3着に入った。ワイド万馬券が出た。

そんな感じで各地の重賞に出る→たまに高知に帰って勝つを繰り返して売上と知名度UPに貢献したグラン。ネット馬券も普及し、高知の売上は徐々に回復。引退する2015年には高知の新馬戦も復活し、自身も無事種牡馬入りもすることができた。

残された僅かな産駒から、高知優駿勝ち馬リワードアヴァロンが出た。彼が勝った年の高知優駿1着賞金は、700万だった。

2013年、福山競馬場が廃止になった。高知にグランシュヴァリエがいなかったら、あるいは福山競馬場にグランシュヴァリエのような馬がいたら、また違った未来があったかもしれない。何はともあれ、ハルウララとグランシュヴァリエのおかげで、高知競馬は今日も続いている。


他には色々と闇が深いエレーヌ、重賞13勝愛知の名馬ヒシウォーシイ、06年から13年までコンスタントに重賞を勝ち続けた笠松のマルヨフェニックスなどがいる。

10年代中期

エスポとファルコンとフリオーソが引退。
そして下2頭の寡占時代がはじまる。

この時代のトピック

◆2014年
・ブリーダーズGCがJpnIIから牝馬限定JpnIIIへ

【活躍した血統】
ゴールドアリュール、キングカメハメハ、サウスヴィグラス、クロフネ、キングヘイロー

ホッコータルマエ

表彰JRA賞最優秀ダートホース(2014)
血統父 キングカメハメハ(キングマンボ系)
母父 チェロキーラン(ブラッシンググルーム系)
所属栗東
戦績39戦17勝[17-5-7-10]
主な勝ち鞍GI:東京大賞典連覇 チャンピオンズC
JpnI:川崎記念3連覇 帝王賞連覇 JBCクラシック かしわ記念
GIII:アンタレスS レパードS
JpnIII:名古屋大賞典 佐賀記念
産駒ブリッツファング(兵庫CS)
レディバグ(スパーキングレディーC)
ゴライコウ(JBC2歳優駿)
ヒーローコール(戸塚記念)
ウルトラノホシ(ネクストスター佐賀)

GI/JpnI10勝。エスポ引退間際に颯爽と現れ世代交代、GIというGIを総ナメにしたイケメンホース。幸英明の相棒。とまこまい観光大使。属性過多。
ヴァーミリアンとエスポのGI9勝の壁を打ち破った、安定感のある先行馬。川崎コースでは敵無し。
調教師はヤエノムテキやカツラギエースの主戦騎手で、カワカミプリンセスも管理した西浦勝一先生。

(当時は園田から中央へ移籍してきた岩田康誠らの影響で馬の背中で跳ねるトントン騎乗がトレンドになっていたが、とあるレースでタルマエが最後の直線大失速した事により下火になったとかなってないとか)

種牡馬としてもかなり優秀で、これからGI馬が複数生まれてもおかしくない。

コパノリッキー

表彰JRA賞最優秀ダートホース(2015)
血統父 ゴールドアリュール(サンデーサイレンス系)
母父 ティンバーカントリー(ミスタープロスペクター系)
所属栗東
戦績33戦16勝[16-3-3-11]
主な勝ち鞍GI:フェブラリーS連覇 東京大賞典
JpnI:かしわ記念3連覇 JBCクラシック連覇 南部杯連覇 帝王賞
GII:東海S
JpnII:兵庫チャンピオンシップ
産駒セブンカラーズ(東海ダービー)
エコロクラージュ(楠賞)

GI/JpnI11勝。GI級競走日本最多勝記録保持者
風水で有名なコパさんが馬主。
タルマエと常に争い続け、海外に挑戦しなかったぶんこちらがより多くGIを勝ったという印象。両者は実力が拮抗していた上に強かったため、他馬の付け入る隙がなかった。

兵庫CS勝利の後骨折し、復帰後は2戦惨敗。ギリギリで滑り込んだフェブラリーSでは、なんとまさかの最低人気でGI勝利。そこからGIで善戦を続け、翌年は1番人気で連覇するというかなりロックなことをやってのけている。

種牡馬としてはタルマエより苦戦している印象。ここから巻き返せるかどうか。

サウンドトゥルー

表彰JRA賞最優秀ダートホース(2016)
血統父 フレンチデピュティ(ノーザンダンサー系)
母父 フジキセキ(サンデーサイレンス系)
半弟 アナザートゥルース
所属美浦→船橋
戦績68戦13勝[13-11-19-25]
主な勝ち鞍DG:チャンピオンズC 東京大賞典 JBCクラシック 日本テレビ盃
地方:東京記念 金盃連覇

GI/JpnI3勝。
新時代のワンダーアキュート枠。大野騎手の乾坤一擲の騎乗で度々穴を開けていた。
タイトルホルダーと同じ馬主さんの馬。

せん馬(去勢されてるから種牡馬入りできない)のため長くに渡り現役を続けていた。12年デビューで18年秋に地方に転厩、21年冬に骨折、引退した。ちょうどウマ娘がリリースされて数週間という頃だった。ゴルシと同期と考えるとめちゃくちゃ長く活躍している。

ちなみに日本で最も賞金を稼いだせん馬らしい。7億6000万はなかなか稼げない。

↑はGI初制覇の瞬間だが勝ちっぷりよりも和ン田ーアキュート竜二の迫真鞭ぺちぺちに目が行く。

サンビスタ

血統父 スズカマンボ(サンデーサイレンス系)
母父 ミシル(ミスタープロスペクター系)
所属栗東
戦績28戦11勝[11-4-6-7]
主な勝ち鞍GI/JpnI:チャンピオンズカップ JBCレディスクラシック
JpnII:レディスプレリュード
JpnIII:TCK女王盃 ブリーダーズGC マリーンC
産駒ジレトール(現役)

GI/JpnI2勝。当時のダート牝馬最強格。展開が向いたとはいえ、全盛期のタルマエやリッキーらを相手に牝馬として初のチャンピオンズカップ勝利の大快挙となった。

その他

◆中央

ホワイトフーガ

JBCレディスで圧倒的1番人気のサンビスタを5馬身ぶっちぎり、翌年も連覇した女王。関東オークス大差勝ちなど信じられない記録をいくつか持っている。

インカンテーション

シニスターミニスター産駒黎明期の代表格。シーキングザダイヤ枠。いい所までいくけどGIでは勝てなかった。種牡馬として調子がいいためそのうち強い産駒も見かけるようになるかも。

その他は565kgの馬体で東京大賞典を制覇したアポロケンタッキー(デカい)などが有名。

10年代後期

11年のドバイワールドカップ日本馬ワンツーの効果もあり、ドバイワールドカップデーへの日本馬参戦が本格化(ただし2015年から再びダート開催に戻ったため日本馬は苦戦を強いられる)。ラニやマスターフェンサーらの米国三冠遠征もあって、より海外が近くなる。

ネット馬券の普及により、地方競馬は息を吹き返す。賞金水準が上がり、中央から転入してくる馬や、地方で早期入厩する馬が増加。中央勢と戦える地方の強豪の絶対数がじわじわとV字回復し始める。

中でも門別デビューの馬の質が向上。11年に特大規模の屋内坂路を建設、段階的に2歳重賞の数も増やし、新馬戦も多頭数で行われる事により、門別で経験を積んだ2歳馬が3歳以降全国で活躍する傾向がより強くなる。

血統面ではシニスターミニスター、パイロ、サウスヴィグラス、ヘニーヒューズらの産駒が地方で大活躍。中央とはまた違った発展を遂げる。

この時代のトピック

◆2016年
・ホッコータルマエが日本馬史上初のGI/JpnI10勝を達成
◆2017年
・コパノリッキーが史上初のGI/JpnI11勝を達成
◆2018年
・JBCが中央の京都競馬場で開催
・大井の的場文男騎手が日本競馬史上最多勝となる7152勝を達成
◆2019年
・武豊がダートグレードGI/JpnIを完全制覇

【活躍した血統】
ゴールドアリュール、パイロ、シニスターミニスター、サウスヴィグラス、ヘニーヒューズ、キングカメハメハ、クロフネ、エンパイアメーカー

ラニ

血統父 タピット(エーピーインディ系)
母父 サンデーサイレンス(ヘイルトゥリーズン系)
母 ヘヴンリーロマンス
半兄 アウォーディー
半姉 アムールブリエ
所属栗東
戦績17戦3勝[3-1-2-11]
主な勝ち鞍G2:UAEダービー
産駒リメイク(🇸🇦リアドダートスプリント)
フークピグマリオン(ネクストスター中日本)

みんな大好き砂のゴルシ。(気性とズブい所が似てるだけで血縁関係は特にない)
とにかく気性が荒かったが能力は高く、UAEダービーに勝利し武豊を乗せ米国ダート三冠に挑んだ。
その評判(気性的な意味で)はアメリカでも相当なもので、現地の競馬ファンはラニとゴジラを戦わせてるコラ画像とかを作って遊んでいた。詳しくは「ラニ コラ」で検索。

もちろん能力的な意味でも高い評価を受けていたが、米ベルモントS3着の後は結果を残せず引退。

種牡馬としては重賞勝ち馬リメイクを出しており期待が持てる。目指せGI制覇。

ゴールドドリーム

表彰JRA賞最優秀ダートホース(2017)
血統父 ゴールドアリュール(サンデーサイレンス系)
母父 フレンチデピュティ(ノーザンダンサー系)
所属栗東
戦績27戦9勝[9-8-3-7]
主な勝ち鞍地方:かしわ記念連覇 帝王賞
中央:春秋ダートGI連覇(2017) ユニコーンS
産駒初年度産駒は24年デビュー

GI/JpnI5勝。
これもフリオーソ枠。後述する怪物2頭のせいで2着続きの生涯だったが、それ相手にクビ差まで迫ったりと能力は一級品だった。運さえあればGIあと5勝はできてたくらい強い馬。

剛腕外国人が乗った時の強烈な差し脚が持ち味。

ノンコノユメ

血統父 トワイニング(ミスタープロスペクター系)
母父 アグネスタキオン(サンデーサイレンス系)
所属美浦→大井
戦績46戦9勝[9-10-5-22]
主な勝ち鞍GI/JpnI:フェブラリーS JDD
GIII:武蔵野S 根岸S ユニコーンS
地方:サンタアニタトロフィー

GI/JpnI2勝。
名前のインパクトもあって愛されキャラ。中央でデビューしてGI馬になり、南関東に移籍してから重賞で好成績を残し続けた。雨が降って馬場が湿ると強く、21年帝王賞でも2着に突っ込んできた。当時9歳。(そう思うとワンダーアキュートすごい)
せん馬なので引退後は牧場でのんびり過ごしてるらしい。

ルヴァンスレーヴ

表彰JRA賞最優秀ダートホース(2018)
血統父 シンボリクリスエス(ロベルト系)
母父 ネオユニヴァース(サンデーサイレンス系)
所属美浦
戦績10戦7勝[7-1-0-2]
主な勝ち鞍GI/JpnI:チャンピオンズC 南部杯 JDD 全日本2歳優駿
GIII:ユニコーンS
産駒初年度産駒は24年デビュー

GI/JpnI4勝。チュウワウィザードの親戚。M.デムーロの相棒。
怪物その1。南部杯をただ1頭中団からまくって他馬をちぎり捨てた馬。
能力だけで言えば米国やドバイGIも争覇圏だったが、故障で引退。超大人気種牡馬になっており、毎年200頭前後と種付けしている。3歳ダート三冠黎明期の中核を担うであろう種牡馬。

クリソベリル

表彰JRA賞最優秀ダートホース(2019)
血統父 ゴールドアリュール(サンデーサイレンス系)
母父 エルコンドルパサー(キングマンボ系)
半兄 クリソライト
半姉 マリアライト
所属栗東
戦績11戦8勝[8-0-0-3]
主な勝ち鞍GI/JpnI:チャンピオンズC 帝王賞 JBCクラシック ジャパンダートダービー
JpnII:日本テレビ盃 兵庫CS
産駒初年度産駒は25年デビュー

GI/JpnI4勝。宝塚記念勝ち馬マリアライトの弟。
怪物その2。国内で無敗8連勝で最強に名乗りを上げた。今の所ダート馬として唯一国内無敗のまま古馬GIを制覇した馬。(これ相手にクビ差のゴールドドリームすごい)
故障して復帰して喉鳴りを発症して引退という悔しい最後だったが、夢は産駒に託された。

オメガパフューム

表彰NAR特別表彰
血統父 スウェプトオーヴァーボード(エンドスウィープ系)
母父 ゴールドアリュール(サンデーサイレンス系)
所属栗東
戦績26戦11勝[11-7-4-4]
主な勝ち鞍GI/JpnI:東京大賞典4連覇 帝王賞
GIII:平安S シリウスS アンタレスS
産駒初年度産駒は26年デビュー

GI/JpnI5勝。M.デムーロの相棒その2。東京大賞典の写真撮影の時にたまたま遊びに来てた弟のC.デムーロが乱入してきて志尊淳とかと並んで決めポーズしてたのは記憶に新しい。

馬の方は大井でしかGI勝ってない大井専門家。でも毎年コースが変わるJBCでも4年連続2着なのでよく分からない。
東京大しょんてん東京大賞典四連覇という前人未到の快挙を成し遂げた馬。ダート国際GI四連覇は世界初

過去4年の映像を見返すとオメガがどんどん白くなっていくし、デムーロさんの⊂二二二( ^ω^)二⊃ブーンも控えめになっていく。

チュウワウィザード

表彰JRA賞最優秀ダートホース(2020)
血統父 キングカメハメハ(キングマンボ系)
母父 デュランダル(サンデーサイレンス系)
所属栗東
戦績26戦11勝[11-6-6-3]
主な勝ち鞍GI/JpnI:チャンピオンズC 川崎記念連覇 JBCクラシック
JpnII:ダイオライト記念 名古屋グランプリ
GIII:平安S
産駒初年度産駒は26年デビュー

GI/JpnI4勝。強いは強いのだがどこか詰めが甘くて2着になってしまう事が多い馬。
その代わりどんだけ相手が強くても必ず3着以内に食い込めるという強みもあった。ドバイワールドカップを2年連続で3着以内に入った日本馬はこの馬だけ。

この馬に川田将雅が跨ったドバイワールドカップ’22で最後方追い込み3着の経験を積めたからこそ、後のウシュバテソーロの勝利がある。

↑ここまで顔面砂まみれになっても全力で走り切る真面目な馬だった。(個人的に一番好きなダート馬である)

帝王賞で次世代の王者メイショウハリオとの死闘を繰り広げたあと引退。馬券外が生涯3回しかない安定感のある馬だった。夢は産駒に託される。

その他

◆中央

ケイティブレイブ

GI/JpnI3勝。父が高松宮記念勝ち馬なのに中距離で強かった。
先行馬として活躍していたがGIには届かず、帝王賞で出遅れからの差し切り勝ちを見せた所から本格化。以降はリッキーやゴールドドリームらと激戦を繰り広げた。転厩した晩年は大敗続きだったが、JBCで5着に入るなど底力は見せつけていた。

インティ

武豊を乗せて連戦連勝、ほぼ無敗でフェブラリーSを制覇。以降は何があったか一勝も出来なかったが、コンビで走り続けておりファンも多かった。
馬主さんがメジロ牧場の場長(アニメウマ娘のメジロ家の主治医の元ネタの人とされる)であることはあんまり知られてない。

アルクトス

ダート1600m日本レコード保持者。道悪開催の盛岡で強く、南部杯を連覇している。
鞍上の田辺はリッキーと合わせて南部杯4勝ジョッキーになった。
ちなみに馬主さん的にはウマ娘化大歓迎らしく、そういう面でも話題になった馬である。

種牡馬としては貴重なアグネスタキオン直系子孫。活躍が期待されている。

エピカリス

ゴールドアリュール産駒。ルメールを背に圧勝を繰り返して北海道2歳優駿を後のJDD勝ち馬ヒガシウィルウィン相手に2.4秒差を付け大差勝ち。全日本2歳優駿を回避しケンタッキーダービーを目標にヒヤシンスSを完勝、UAEダービーに挑むが、後にドバイワールドカップを連覇するサンダースノーを相手にハナ差で負けてしまう。その後ベルモントSを目標に調整されたが、蹄を痛めて出走取消。全盛期は終わった。

種牡馬としてはなんと初年度からJpnII勝ち馬サントノーレを輩出。今後が楽しみすぎる一頭。


後はラニの兄でJBC勝ち馬のアウォーディー、プチアグネスデジタルローテで二刀流になったモズアスコット、菊花賞2着なのにダート転向して東京大賞典でも2着になったクリンチャー、朝日杯2着なのにダート転向してフェブラリーSでも2着になったエアスピネルなどがいる。

◆地方

キタサンミカヅキ

中央では34戦目でなんとかオープン戦勝利、その後は鳴かず飛ばずだったが、船橋に移籍後は東京盃を勝利。JpnIを目指せる器に。地方のダートとの相性が良く、大井1200mでの戦績が抜群の安定感だったのだが、全盛期のJBCが京都開催だったのが運の尽き。アフター5スター賞(SIII)を3連覇で終えて種牡馬入り。

鞍上の森泰斗はTwitterで引退したミカヅキに向けた手紙のような長文をツイートするほど特別な想いを抱いていた。産駒の活躍を期待したい。

カツゲキキトキト

00年代前期の項で紹介したスパイキュールの産駒。勝っても負けても月1ペースで出走させてた事もあってか、笠松出身の馬としてはマルヨフェニックス以来の1億円ホースとなり、あれよあれよという間にスマートファルコンの重賞勝利数に追い付き、追い越した。重賞20勝は当時の日本競馬史上最多記録

未だに走り続けており、そろそろ100戦目。長い旅路である。(サトノダイヤモンドと同期と聞くと歴長いな〜と思うが、マカヒキと同期と聞くと「まだいけるな」と思ってしまうのはなぜだろうか)

ヒカルアヤノヒメ

キトキトの記録が霞むほどの名馬がもう一頭東海にいる。決して飛び抜けた成績を残したわけではないが、驚くべきはその年齢。この馬も現役馬で、なんとダイワスカーレットと同期である。大種牡馬モーリスの後継争いが繰り広げられている中央競馬だが、彼女はモーリスの父のスクリーンヒーローと同世代。なのにまだ走ってる。恐怖すら感じる。

調べると馬主さんは愛を持って管理されていることがわかるし、22年には一日警察馬(なんだそれ)にも就任している。23年に亡くなったが、今なおずっと名古屋の名誉アイドルホースである。

ララベル

地方馬として初めてJBCレディスクラシックを制覇した馬
大井生え抜きの馬で、デビューから常に高い期待を受け連戦連勝。牡馬に混じって東京ダービーでも4着と好成績を残し、4歳時にはJBCに挑もうとしたものの脚部不安を生じ競走除外。繁殖的な事も考えるとラストチャンスとなった翌年のJBC。最後の直線で地方GI全制覇のかかる武豊の騎乗馬に不利を与える斜行をしてしまい、降着こそ無かったが後味の悪い勝利となってしまった。

とはいえ現行ルールでは「降着がない=不利が無くても着順は変わってなかったとみなされた」という事だし、JBCレディス10余年の歴史で3着以内に入れた地方馬が4頭しかおらず、2着以内となるとこの馬とサンデーR所有馬クラーベセクレタしかいない。最後の直線を抜群の手応えで回ってきて先頭に馬体を併せ叩き合いに持っていっただけで評価に値すると思う。

(とか言ってるがララベルも社台グループの吉田氏の所有馬で社台F生産。クラーベはNF天栄、ララベルは山元トレセンで中央馬と一緒に放牧という名の強化トレーニングができたのが好走の要因だろう。いつか非社台系のダートGI女王が生まれることを期待している)

20年代初頭

ネット馬券の普及に伴いじわじわと沸騰してきた競馬人気に拍車をかけたのが、幸か不幸かコロナだった。巣ごもり需要やウマ娘効果の影響で売上が爆増した日本競馬。売上が上がれば賞金も上がり、セリで回る金や生産馬の質も急上昇する。

かつての芝路線がそうだったように、日本のダート競馬は海外には遠く及ばなかった。中央馬トゥザヴィクトリーが01年に魅せた世界最高峰ダートGI・ドバイワールドカップでの2着が、まるでエルコンドルパサーの凱旋門賞のように大きな壁と立ちはだかっていた。

しかし、その壁は斜め上から唐突にぶっ壊される。全てはブリーダーズカップの革命から始まった。

この時代のトピック

◆2020年
・北海道2歳優駿がJBC2歳優駿に変更
・姫路競馬場での競馬開催が再開される
◆2021年
・ミューチャリーが地方馬として初めてJBCクラシックを制覇
・マルシュロレーヌが日本調教馬初の国外ダートGI制覇
・オメガパフュームが世界初の国際ダートGI競走4連覇を達成

【活躍した血統】
パイロ、シニスターミニスター、ヘニーヒューズ、サウスヴィグラス、ロードカナロア、オルフェーヴル、エスポワールシチー、キズナ

カフェファラオ

表彰JRA賞最優秀ダートホース(2022)
血統父 アメリカンファラオ(ミスタープロスペクター系)
母父 モアザンレディ(サザンヘイロー系)
所属美浦
戦績17戦7勝[7-0-1-9]
主な勝ち鞍GI/JpnI:フェブラリーS連覇 南部杯
GIII:シリウスS ユニコーンS
産駒初年度産駒は27年デビュー

ワンターンのダートマイルでだけ鬼のように強い馬。しかしかなり乗り難しい馬のため、リーディング上位騎手が乗っても掲示板外にかっ飛ぶこともしばしば。

マイルでとんでもないパフォーマンスを連発していたので、距離延長のJDDで単勝1.1倍を抱え馬券外にぶっ飛んでしまった黒歴史があるものの、フェブラリーSでレコード勝ちしたり、安田記念でもいい走りをみせていた(失速はしたが)。

カジノフォンテン

表彰NARダートグレード競走特別賞(2021)
血統父 カジノドライヴ(エーピーインディ系)
母父 ベストタイアップ(ノーザンテースト系)
所属船橋
戦績34戦12勝[12-3-2-17]※24年3月現在
主な勝ち鞍DG:川崎記念 かしわ記念
地方:京成盃グランドマイラーズ連覇 勝島王冠

船橋の英雄。中央所属米GII勝ち馬カジノドライヴと船橋所属エンプレス杯勝ち馬ジーナフォンテンの間に生まれたのでこの名前。
全盛期はGI級レースでも自ら動いて勝ちにいける強い馬だった。オメガの東京大賞典三連覇の年にカジノがクビ差まで迫り、無名の地方馬に詰め寄られたオメガの衰えが危惧されたが、年明け以降の種明かしで単にカジノが本格化しただけだと判明した。

人気馬総崩れ帝王賞’21のあと調子を崩したが、最近少し復活してきた。

ミューチャリー

表彰NARグランプリ年度代表馬(2021)
血統父 パイロ(エーピーインディ系)
母父 ブライアンズタイム(ロベルト系)
所属船橋
戦績29戦8勝[8-3-2-16]
主な勝ち鞍DG:JBCクラシック
地方:大井記念 マイルグランプリ 羽田盃 鎌倉記念

地方馬初のJBCクラシック勝ち馬。船橋の英雄。

厩舎が阪神タイガースファンなのでメンコも阪神カラー。矢野監督騎手を乗せたことはなかったが、厩舎は矢野だった。南関東では御神本騎手の手綱で羽田盃を制覇。ダービーは取りこぼしたがJDDも意地で3着に持ってきた。

JBCが金沢開催だったため、御神本騎手と並んで地方競馬で1、2を争う名手と呼ばれる現地の騎手、吉原寛人を鞍上に抜擢したところ、完璧なレースメイキングで見事に勝利した。

船橋競馬場の工事の影響か調子を崩したまま引退してしまった。腰が弱いため種牡馬にはならず船橋競馬場の誘導馬に。父パイロの後継者はメイショウハリオに委ねられた。

マルシュロレーヌ

表彰NAR特別表彰
血統父 オルフェーヴル(サンデーサイレンス系)
母父 フレンチデピュティ(ノーザンダンサー系)
所属栗東
戦績22戦9勝[9-2-2-9]
主な勝ち鞍GI:ブリーダーズカップ・ディスタフ
JpnII:エンプレス杯 レディスプレリュード
JpnIII:TCK女王盃 ブリーダーズGC
産駒初年度産駒は25年デビュー予定(父ドレフォン)

アメリカはクラシックが全てダートで行われるほどのダート大国だ。ケンタッキーダービーは“スポーツの中で最も偉大な2分間”とも称されるほど人気のレースとなっている。

だが、その内情はドーピング大国。年々規制こそ厳しくなっているが、三冠馬ジャスティファイにすらドーピングの痕跡があり、第1回サウジカップ勝ち馬もドーピング問題で失格になるなど、その影響は他国にも及んでいた。その対策として、21年にアメリカ国内で「ラシックス」という利尿剤(血圧を下げる効果もある)を全面的に禁止した。

そのタイミングを見逃さなかったのが調教師・矢作芳人。ラシックスフリー元年の21年、世界有数のレースカーニバル、ブリーダーズカップ(日本のJBCのオマージュ元。以下BC)に馬を遠征させた。ここからが本馬の解説になる。


マルシュロレーヌは牝馬限定ダートGI世界最高峰レース、BCディスタフ勝ち馬であり、三冠馬オルフェーヴルの娘。日本馬として初めて国外のダートGIを制覇した馬である。
今まで数多の名馬を取り上げて来たが、日本競馬への貢献度だけで言ったらこの馬が過去最高。
三冠馬の娘がダート大国でジャイアントキリングしたという事実だけで強い。

矢作師曰く「21年のBCが(日本に近い)西海岸のデルマーでの開催で、金沢開催のJBCレディス(1500m)が距離的に合わなさそうだったからBCディスタフ(1800m)への挑戦を決意した」らしい。運命の巡り合わせだ。ちなみにBCディスタフの前走は門別のブリーダーズゴールドカップ。もちろんこのレース名もBCから来ている。

エンプレス杯を勝つなど実績は出していたが、国際競走ではほとんど結果を出していなかったため、現地ではほとんど注目されていなかった。国内ダート競馬のレベル向上をたった1頭で証明した。

実生活ではラヴズオンリーユーと非常に仲が良く、アメリカ遠征時は2頭と現地のポニーとでキャッキャしてたら2頭ともBC勝っちゃった。マルシュと離れて香港遠征をしたラヴズは寂しがり一時期体調が下向いたらしい。ズッ友じゃん…

テーオーケインズ

表彰JRA賞最優秀ダートホース(2021)
血統父 シニスターミニスター(エーピーインディ系)
母父 マンハッタンカフェ(サンデーサイレンス系)
所属栗東
戦績25戦10勝[10-3-4-8]
主な勝ち鞍GI/JpnI:チャンピオンズC 帝王賞 JBCクラシック
GIII:平安S アンタレスS

GI/JpnI3勝。
ペースがぶっ壊れた影響でオメガ、チュウワもろとも沈んだ帝王賞’21で勝利し頭角を現した。上手くハマると↑のようなレースができるが、出遅れ癖やレース展開に左右されやすく調整も難しい馬なため、成績にムラがある。それでもキャリア後半は善戦を重ね、堅実に賞金を稼ぎ続けていた。

その他

◆中央

レッドルゼル

成績にムラがあるが、上手くハマると日本競馬史上最も強いダート短距離馬。

川田将雅を鞍上に、後方からの強烈な追い込みを持ち味としているため、ドバイや大井など直線の長い競馬場で好走。ダート短距離最高峰GI、ドバイゴールデンシャヒーンで2年連続2着となった。

他には21年全日本2歳勝ち馬ドライスタウト、右回りで超強いJDD勝ち馬ノットゥルノ、かしわ記念勝ち馬ショウナンナデシコなど。
海外レースやGIで後続を引き離すがゴールギリギリ手前で差されて2着が多かった国際派・マテラスカイもこの時代。

◆地方

サルサディオーネ

東京プリンセス賞勝ち馬サルサクイーンの産駒。父はゴールドアリュール。
この馬も中央から移籍してきた馬で、中央時代も度々GIIIで2着など好走はしていたが、本格化は20年に大井に移籍してから。後にヘルシェイク矢野となる矢野貴之騎手に導かれ、エンプレス杯ではマルシュロレーヌと後続を6馬身引き離す激闘を繰り広げ2着、日本テレビ盃ではJDD勝ち馬を退け1着、さきたま杯も逃げ切り1着と、牝馬と思えない破格の成績を残した。

JBCとエンプレス杯こそ勝てなかったが、地方所属の牝馬がJpnIIを2勝することも、ダートグレードを5勝することも、どちらもラブミーチャン以来の快挙だった。歴史的名牝といっていいだろう。

サブノジュニア

父サウスヴィグラス、母父カコイーシーズ。どちらも地方競馬リーディングサイアーで、母も祖母も藤沢牧場生産で大井で走っていた、王道の地方血統。

サルサディオーネと同じ厩舎でデビューし、もちろん主戦は矢野騎手。レースで気を抜くところがあり、中々勝ち切れない雌伏の日々を過ごしたが、鞍上がサルサで快進撃をはじめたあたりでこの馬も本格化。
地元大井で開催されたJBCスプリント’20で、「速い戦車に乗っているような重厚感」と鞍上が語った自慢の差し脚を解放。高松宮記念勝ち馬モズスーパーフレア、ドバイゴールデンシャヒーン2着マテラスカイを突き放して勝利した。
JBCスプリントを初めて勝った地方馬、フジノウェーブの調教をつけていた矢野騎手。10年以上の時を経て、自身も同じ舞台で勝てた事は大きな自信に繋がっただろう。

21年に引退し、貴重なサウスヴィグラスの後継種牡馬としてスタッドイン。また矢野騎手と共に大舞台で輝いてほしい。

ジンギ

南関東を中心に地方競馬が回っていく一方で、西日本は大きく遅れをとっていた。名古屋以西の競馬場はどこかメインストリームには進出できないような感じ。オオエライジンを喪った兵庫はスターを求めていた。中央から転入してきてかきつばた記念を制覇したトウケイタイガーのような馬はいたが、その天下も長くは続かず。10年代後半の兵庫は中央のオープンクラスから転入してきたタガノゴールド、門別から移籍してきたエイシンニシパらに兵庫生え抜きのマイタイザンが食らいつく構図になっていた。

その流れを断ち切ったのがジンギだった。父ロードカナロア、母父ディープインパクトという良血ながら兵庫でデビューし、2歳で重賞初制覇。わずか4歳で兵庫の春の大一番、兵庫大賞典でタガノゴールドの2着につけると、5歳時には重賞を7馬身差圧勝できるほどの逸材に。ダートグレードでは名古屋大賞典3着が精一杯だったが、兵庫の競走馬として最多賞金獲得ホースだったケイエスヨシゼンの賞金を超え、兵庫のサラブレッドとして初の獲得賞金2億円ホースになった。

コロナ禍の兵庫はジンギと同じ厩舎のエイシンニシパの2頭の二強時代。ジンギは2年連続で兵庫年度代表馬となり、絶対王者と呼ばれた。ニシパの方も兵庫馬初の重賞15勝(日本馬重賞勝利数歴代7位タイ)を達成。ジンギは兵庫大賞典では中央オープンクラスから転入してきたシェダルを競り落とし地方馬の底力をアピールしたが、コロナが明けると転厩してきた道営三冠馬ラッキードリームとウシュバテソーロ(後述)の2着に入ったヒストリーメイカーに敗北、世代交代となった。

敗北に変わりはないが、以前なら戦うはずもなかったレベルの素質馬に負かされたジンギ。これはむしろいい馬が西日本に回ってくる時代になったという意味で喜ばしい事だろう。

ハクサンアマゾネス

ここまで色々な地方馬を紹介してきたが、ここにきてようやく金沢競馬に触れる。そりゃまあ白山大賞典2着のジャングルスマイルや笠松のマルヨフェニックスを8馬身突き放したナムラダイキチのように強い馬は存在したが、金沢競馬自体の人気が低く、あまり注目されていなかった部分もあった。

そんな金沢を牽引し、地方競馬ライトファンにもその名を知らしめた名牝がハクサンアマゾネスだ。

2020年にデビューし、無敗のダービー馬(牝馬です)になりながら重賞5勝で1年を終えると、翌年は南関東に遠征したりしつつも重賞6勝。以降は金沢でコツコツ勝利を積み上げ、春の大一番、百万石賞では後続に大差を付け3連覇。23年は兵庫、名古屋、高知の名牝が集う兵庫サマークイーン賞で他馬を圧倒し、重賞18勝目を挙げた。もちろん金沢競馬最多勝記録。その後も勝ち星を重ね、23年末には日本馬としての重賞最多勝(21勝)を樹立。名実ともに金沢最強の名牝となった。

標的になりやすい脚質のためハイレベルなメンバーが集まると苦しいが、VS地方馬なら屈指の逸材。まだまだ衰えを見せていないため、無事ならまだ記録を伸ばせるだろう。


その他地方馬は故・左海騎手の忘れ形見となった東京ダービー馬アランバローズ、22年に兵庫に移籍しジンギをフルボッコにしその後は園田の大将となった道営三冠馬ラッキードリーム、岩手のスーパースプリント女王キラットダイヤなど。

これから

日本のダート競馬はここ数年で明確に変わった。

世界最高賞金額を誇るレース、サウジカップでは日本馬が大挙し、芝で活躍していたパンサラッサがまさかの逃げ切り。適性さえ見極めれば海外GIでも日本馬が輝ける舞台は整った。

そして時代は動きだす。

この時代のトピック

◆2023年
・パンサラッサが日本馬初のサウジカップ制覇
・ウシュバテソーロが日本馬初のダート開催ドバイワールドカップを制覇
・ミックファイアが史上2頭目の南関東無敗三冠を達成
・メイショウハリオが史上初の帝王賞連覇達成
・ダービーグランプリが本年をもって廃止
◆2024年
・新3歳ダート三冠競走施行
・さきたま杯JpnI昇格
・TCK女王盃が兵庫女王盃へ変更
・兵庫CSが1400mに短縮
◆2028年
Jpn格付けを段階的に廃止、33年までに全ダートグレード競走を国際化へ

【3歳ダート三冠】
・羽田盃(大井1800m)
・東京ダービー(大井2000m)
・ジャパンダートクラシック(大井2000m)
【新設されるダートグレード競走】
・ブルーバードC(船橋1800m/JpnIII)
・雲取賞(大井1800m/JpnIII)
・京浜盃(大井1700m/JpnII)
・不来方賞(盛岡2000m/JpnII)

【活躍しそうな血統】
ルヴァンスレーヴ、マインドユアビスケッツ、オルフェーヴル、キズナ、キタサンブラック、クリソベリル、エスポワールシチー、ホッコータルマエ、ドゥラメンテ

ウシュバテソーロ

血統父 オルフェーヴル(サンデーサイレンス系)
母父 キングカメハメハ(キングマンボ系)
所属美浦
戦績34戦11勝[11-3-5-15]※23年3月現在
主な勝ち鞍GI/JpnI:ドバイワールドカップ 東京大賞典 川崎記念

日本のダート馬として初めて「世界最強」の座に登り詰めた馬であり、怠惰なる王者。

マルシュロレーヌの活躍により、「芝で活躍し切れなかったオルフェーヴル産駒がダート替わりで結果を出す」流れが増えていた。ラーゴムは浦和記念2着、ギルデッドミラーは幻のGI馬と呼ばれるほど本格化した。

その流れでこの馬もダートを走らせてみたところ、3勝クラスで足踏みしていたのが嘘みたいに連勝し、ダート転向から僅か8ヶ月で東京大賞典を制覇するに至った。翌年も本調子のテーオーケインズにコーナリングで差をつけ完勝、鞍上が横山和生から川田将雅に変わったドバイワールドカップでは、チュウワウィザード仕込みの後方待機からの大外一気が炸裂。日本馬初のダート開催ドバイWC制覇。春のダート王を決める戦いで、文字通り世界最強の座を手にした…

のだが、そこはやっぱりオルフェーヴル産駒。この馬もきっちりネタにされている。
というのも、追い切りでのやる気が無さすぎるのだ。レースでは上がり最速で爆速で駆け抜けて行くのだが、レース1週間前の追い切りなどではまるでやる気が無く、1勝クラスの古馬と併せてグイグイ押してんのに置いてけぼりにされている。

(↑の一番奥の馬がウシュバ。とても4日後に上がり最速でGI勝つ馬とは思えないひっどい追い切りである)

その昔、五冠馬シンザンも「銭がかかってる時じゃないと走らん」と調教師に言われるほど追い切りで手を抜いていたらしいが、この馬もその類なのだろう。

これからも世界最強の追い切り芸人として、日本競馬を牽引していくことだろう。

メイショウハリオ

血統父 パイロ(エーピーインディ系)
母父 マンハッタンカフェ(サンデーサイレンス系)
所属栗東
戦績24戦9勝[9-2-4-9]※24年3月現在
主な勝ち鞍地方:帝王賞連覇 かしわ記念
中央:マーチS みやこS

ウシュバ不在のレースで猛烈な勝ち方を魅せ、2023年のダート馬二大巨頭となっていた馬。ウシュバが突然のダート転向で結果を出したように、この馬も地方の馬場を走れるようになって本格化した。

中央のダートは地方や海外と違い砂が深く、特殊な馬場となっている。そのため、地方でのみ顕著な活躍を挙げる血統が結構存在する。キングヘイロー産駒などがそう。パイロもその例外ではなく、中央ではGIII止まりの馬でも地方JpnIなら好走できたりする。

ハリオはただでさえ中央GIIIを2勝していたので、地方初挑戦となった帝王賞では水を得た魚のように大激走。テーオーケインズ、オメガパフューム、チュウワウィザードという時代を創った三強を相手に辛勝。新時代の訪れを予感させた。それ以降はほとんど地方で戦っていたが、23年にはフェブラリーSで出遅れからの追い込みで3着。中央でも十分やれることを示し、ウシュバが世界を獲った裏で帝王賞に挑み、史上初の帝王賞連覇を達成した。

……その矢先、大井競馬場の馬場改修により砂質が変わってしまったため、追込がかなり不利に。らしくない敗北が続き、サウジ遠征を脚部不安で取消。復活が期待されている。

クラウンプライド

血統父 リーチザクラウン(サンデーサイレンス系)
母父 キングカメハメハ(キングマンボ系)
所属栗東
戦績14戦4勝[4-4-0-6]※24年3月現在
主な勝ち鞍UAEダービー(G2)

スペシャルウィーク直系の血を繋ぐ最後の砦。

日本馬としてはラニ以来となるUAEダービー制覇のあとは、日本テレビ盃、JBC、チャンピオンズCで3戦連続2着。サウジC、ドバイWCは5着、帝王賞で2着。

絶対的に強いのになぜか勝ち切れないところがある。父が亡くなったため、早いとこ何勝かして種牡馬の道を進んでほしいが、ライバルが強くそうもいかないのが現実。陣営の路線選択の手腕が問われる。

デルマソトガケ

血統父 マインドユアビスケッツ(デピュティミニスター系)
母父 ネオユニヴァース(サンデーサイレンス系)
所属栗東
戦績12戦4勝[4-1-2-5]※24年3月現在
主な勝ち鞍全日本2歳優駿
UAEダービー

新種牡馬マインドユアビスケッツの産駒。いつでもどこでも全力で走り切るのが持ち味。

日本馬が上位を独占したUAEダービーを勝ち切ると、ケンタッキーダービーで6着、なんとBCクラシックで2着と大大大健闘。

国際GIを勝てずに終わるような馬ではないので、今後どこかで一花咲かすことを期待している。

レモンポップ

表彰JRA賞最優秀ダートホース(2023)
血統父 レモンドロップキッド(キングマンボ系)
母父 ジャイアンツコーズウェイ(ストームキャット系)
所属美浦
戦績15戦10勝[10-3-0-2]※24年3月現在
主な勝ち鞍GI/JpnI:中央ダートGI連覇 南部杯
GIII:根岸S

一目でわかるケツのデカさとバキバキ具合が愛されている、ダートの貴公子。

国内11戦連続連対、かつGI勝利という、ダイワスカーレットに迫る大記録を積み重ねた後、惜しくも海外で大敗。

しかしその後は国内で快進撃を続け、ゴールドドリーム以来の中央春秋ダートGI連覇。そして南部杯では、グレード制が始まって以降では史上初の古馬GI/JpnI競走大差勝ちを記録。2秒離された2着馬が次走でJBCスプリント勝っちゃってるんだから笑うしかない。

以降も国外はてんでダメだが、国内では天下無双。いずれは海外でも力を見せてほしいものだ。

マンダリンヒーロー

血統父 シャンハイボビー(ストームバード系)
母父 フジキセキ(サンデーサイレンス系)
所属大井
戦績12戦4勝[4-6-0-2]※24年3月現在
主な勝ち鞍ハイセイコー記念

23年南関クラシックには、2頭のヒーローがいた。

三冠の大本命はホッコータルマエ産駒ヒーローコール。地方馬限定戦ではほぼ負け無し、中央馬相手の伏竜Sでも1kg重い斤量を背負って後の兵庫CS勝ち馬ミトノオーの3着。断然の人気だった。

雲取賞でヒーローコールに敗北したマンダリンヒーローは、活路を見出すため米国遠征を決意。カナダて大活躍している日本人騎手の木村さんが鞍上となり、サンタアニタダービーに出走。挑戦を称える声は多かったが、本気で勝ちにいけると考える人は少なかった。

しかし、鞍上の最高のエスコートにより2着。脚色だけで言えば1着馬とほぼ互角。地方所属馬として史上初の海外のダートGI連対を果たした。歴史的快挙だった。

ミックファイア

表彰NAR特別表彰
血統父 シニスターミニスター(エーピーインディ系)
母父 ブライアンズタイム(ロベルト系)
所属大井
戦績9戦7勝[7-0-0-2]※24年3月現在
主な勝ち鞍南関東無敗三冠

ヒーローコールで間違いないとされた南関クラシックを、信じられない速さで駆け抜け、あっという間に歴史に名を刻んだ名馬。

2歳時は骨膜炎と戦いつつ、まともな調教も詰めないまま3連勝。蹄が割れ、羽田盃トライアルに間に合わなくなったため、一か八かぶっつけ本番で出走登録したところ、運良く通過。レースは道中2番手から抜け出し上がり最速で完勝。東京ダービーでもほぼ同じ内容で完勝した。重馬場だった事も大きいが、勝ちタイム、上がり3Fともに前年の東京大賞典より速かった。異次元の走りだった。

中央馬との初顔合わせとなるジャパンダートダービー。翌年からはジャパンダートクラシックと名を変えるため、最後の開催となった。彼はその開催に相応しい走りを見せ、鋭い差し脚でミトノオーを差し切った。

オグリキャップがもたらした第2次競馬ブーム。その全盛期に中央競馬で鳴り響いた万雷のナカノコール。1990年、アイネスフウジンの日本ダービー。そこから33年。地方競馬でもその瞬間が訪れた。
史上2頭目で最後の南関東無敗三冠馬と、それを導いた鞍上、御神本訓史を称え、万雷のミカモトコールが大井競馬場に響いたのだった。

その他

中央馬ではチャンピオンズC勝ち馬ジュンライトボルト、牝馬限定戦では無双が続くグランブリッジ、ダート短距離で快進撃を続けるラニ産駒リメイク594kgでJRA重賞最大馬体重勝利記録を更新したドンフランキー(デカい)などが有名。

◆地方

スピーディキック

門別デビューで2歳からJpnIIIエーデルワイス賞制覇、その後も南関牝馬二冠、関東オークス3着、地方重賞3連勝とやりたい放題。フェブラリーSでも6着と好成績を収めており、サルサディオーネのいない南関東を盛り上げるべく、今後の活躍が期待される浦和の女王。

イグナイター

ジンギやラッキードリームが兵庫を盛り上げる裏で、この馬は全国をドサ回りしながら兵庫代表として戦っていた。中央と大井を経て園田に辿り着いた彼は、3歳で重賞初制覇を果たすと、4歳でJpnIIIを連勝。南部杯でも地方馬再先着の4着。5歳時は大井のJBCを見据え鞍上を兵庫の名手田中学から大井の新星笹川翼に変更。これが功を奏し、JpnIIさきたま杯を制覇。

なんとその勢いのまま、JpnI・JBCスプリントをリメイクを倒し制覇。兵庫所属馬として、ロードバクシンですら成し得なかった初のJpnI制覇の夢を叶えた。

その後も斜行こそあったもののドバイでGI5着。素晴らしい戦績を残し続けている。

シルトプレ

ラッキードリームに続いて二年連続道営三冠馬誕生も期待されたが、あいにくの不良馬場により三冠目を獲り逃してしまった悲しき二冠馬。しかしその後はダービーグランプリ1着、中央に挑みエルムSで5着など、非凡な成績を残している。

ヒーローコール

先述の通り、クラシック大本命ながらミックファイアに6馬身ちぎられてしまった幻の二冠馬。とはいえ未だにマンダリンヒーローには負け無しで、黒潮盃ではマンダリンより2kg重い斤量を背負い勝利している。この馬も海外に挑めば面白くなるかもしれない。

ショウガタップリ

無敗11連勝(うち重賞6勝)というえげつない記録を打ち立てた金沢の名牝。大井に挑戦した黒潮盃では6着と敗れたが、枠と展開次第では南関東でも戦える能力を示した。牝馬限定戦なら今後もスピーディキック以外に敵はいないだろう。

ちなみに馬名は生姜じゃなくて賞がたっぷり、らしい。

ユメノホノオ

高知生え抜き史上最強馬。7連勝から挑んだダービーでディープインパクトみたいなレースをしているが、ここで子供扱いした2着馬ポリゴンウェイヴはマンダリンヒーローのクビ差2着まで迫った経験がある。高知三冠を獲った後のローテーション次第ではぶつかる事になると思われるので、楽しみに見守ろう。

ミニアチュール

門別デビューで2歳の冬に岩手に移籍して以降無敗。牝馬なのに牡馬三冠目指しつつオークスも勝っちゃってる規格外の名牝。あとはショウガタップリや中央の牝馬と対決してどこまでやれるか。

ベルピット

三年連続道営二冠馬誕生。ラッキードリーム以来の三冠馬になる可能性が高いが、レース中は掛かったりよそ見したりで競馬になっていない。気性が落ち着いた時にどんな走りを見せるのか注目だ。


その他地方馬では浦和の重賞でサルサディオーネを負かし、さきたま杯でイグナイターと叩き合ったスマイルウィ、連対率100%で牡馬相手に快進撃を続ける兵庫の女傑スマイルミーシャなど。

まとめ

以上が名馬たちの時代の概説です。
ここまで読んでいただけて感謝。
気が遠くなるほど長かったでしょ。4週間かけて書きました。

(ちなみにサムネはNARのダートグレード競走のサイトを丸パクリしました。訴えられたら負けそう)

ダートの名馬をまとめてるサイトって中々なかったので、この記事がお役に立ったなら幸いです。

ウマ娘的な楽しみ方で言うと、娘化した馬を知るには同期や縦の繋がり、ライバルの凄さも理解した方がより熱くなれます。ぜひこれを活用していただいて、一緒にダートにハマりましょう。

今後ともよろしくお願いします。
それでは〜。

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